プロローグ
TCGの背景ストーリーを意識して書いた作品です。
星たちの瞬く夜、宗教的な曲線で描かれた建築に囲まれたこの空中庭園。その建築にも決して劣る大きさではない、具体的に言えば15mは軽く超そうなロボットが、手のオブジェにかけられた揺れ続ける天秤をじっと眺めている。天秤の上に乗せられた概念が濃縮したような幾何学模様を含むエレメントが、重くなったり軽くなったりを繰り返す。それを見て巨大ロボは、不安そうに体を震わせた。
「枢機卿どの、枢機卿どの。何をしておられるのでしょうか?」
ふと、庭園に人と変わらぬほどの小さな機械人形の影が入って来た。目を象ったライトは優しい丸みを帯びた卵型で、腕や脚もまたすべすべな曲線で構成されている。頭はまるでボブヘアを表したかのような丸みのあるパーツが、彼女のうなじがあるはずの部位を優しく包んでいた。
「おお、ジャンヌか。うむ、私はこの世の流れを見ていたのだ。この天秤の動き、星の流れ、凶兆が、凶兆が見える……」
巨大なる枢機卿は優しげな母のような声でありながらも、今はひどく狼狽していた。そして、その腕を組み合わせ跪くと、その天秤に祈りを捧げる。
「今の我らには祈ることしかできぬ。ああ、我らが感覚識の聖霊機構よ、我らファンタスクの国に、禍のなきよう……」
部屋に入ってきた機械生命、ジャンヌも共に祈りを捧げる。その祈りを受けた天秤を支える手の後ろには、さらに巨大で枢機卿すら足元にも及ばぬ山の如く、かつ全身が翼の天使の如く人の形を離れた機械が、ただじっとそこに存在していた……。
枢機卿「今日のカード紹介。今回のカードはこれである」
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ファイア・スーパー・ドラゴン
チェイサー
火属性 種族・ドラゴン
コスト4 攻撃力4 守備力3 速さ0
――
枢機卿「しばらくはトリフルールやその周辺国家と関係のないカードを選出させてもらおう。これは、いわゆる能力なし(バニラ)カードというやつだ……。こういったチェイサーをチェイスゾーンに出していき、攻撃を行い、ライフを削っていくのだな……」
ジャンヌ「具体的には20削れば勝利、ですよね枢機卿どの」
枢機卿「他に気になる点はあるか、ジャンヌよ……」
ジャンヌ「速さ、とは聞いたことがない概念です。少なくともどう使うか私には検討もつきません」
枢機卿「それは、あのファンタスクたちがおいおい解説してくれるだろう……。次回をお楽しみに、な」