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崖っぷち兄妹のダンジョン攻略記  作者: 生姜寧也
3章:兄妹激闘編

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第84話:木登り兄さん

 金扉を通って3層に戻り、ドアを閉める。一瞬消え、また現れた金扉。これでリセットされたハズだ。ようやく人心地つける。


「耳が未だにキーンとしてます」


「え? あ、ああ、耳ね」


 俺の方もまだ、聴力が戻っていないようだ。断片的に聞こえた「耳」という単語から、セリフを推測した。


 カバンからポーションのビンを引っ張り出す。4分の1ほど飲んでから、


「あー、あー、あー」


 自分の声でテストすると、クリアに聞こえた。本当、万能薬だな。菜那ちゃんの分の、新しいビンを出そうとしたが、彼女は俺が地面に置いた飲みかけを取り、口をつけて傾けた。

 ……まあ、間接キスとか、そういうアレじゃないけどね。兄妹だし。


「あー、あー、あー」

 

 俺と同じことやってる。一つ頷いてみせる。彼女も治ったみたいだ。


「……とんでもなかったですね」


「うん。あそこにいる間は聴力は使えないと考えた方が良さそうだね」


 厄介なことだ。多分、木を燃やすにしても、あれだけ多いと、燃やす端から、飛び移られてしまうだろう。山火事のように、木々が全て延焼してくれるなら使える戦法だが。


「木を燃やし尽くすにも、その間にモグラ? かな? あの地中のモンスターにやられてしまいそうです」


 菜那ちゃんの懸念も尤もだ。


「速きモコ道っていうらしいよ」


 俺は運良くヒットした鑑定の内容をシェアする。聞き終わった菜那ちゃんは呆れたような顔をした。


「意味不明なモンスターばかりですね。イロモノというか」


「うん。クソダンジョンもいいとこだよね」


 少なくとも初心者が最初に潜るダンジョンとしては、不適格も不適格だ。なんの因果で、俺たちはこんなハズレに当たっちまったんだろうなあ。


「今日はもう戻りましょうか」


「そうだね。おデュラはんを撃破できただけ、御の字だった」


 ドスまで持ち出されながら、一度で倒しきったのはデカイ。刃物を使ってくると分かったうえで仕切り直しになってしまってたら、次に挑む時、多大な覚悟を要したと思うから。勢いでいけてラッキーだったよ。


「お腹、減りましたしね」


 腕時計を確認。もう6時過ぎか。


「帰って飯にしようか」


「はい。今日は豚の生姜焼きですよ」


 おお。聞いただけで、また腹が減るメニューだ。

 米俵とダンジョン鋼、群馬ドルの入った巾着を手分けして持ち、俺たちは、金扉の前に立つ。


「行き先を選んでください。現在、農園ダンジョン4層、出口が選べます」


「出口で」


 金扉がキラッと光る。ドアノブを捻り、庭の死にダンジョンへと脱出した。









 夕飯はガッツリ2杯もおかわりをしてしまった。そこまで長く戦ったワケでもないが、精神疲労が大きかったんだろうな。今更ながら、本当によく真剣相手に勝てたよ。おじもち様々だ。


「美味しかった。ありがとう、菜那ちゃん」


 お礼を言うと、嬉しそうに笑ってくれる。その笑顔は、4歳の頃の面影を感じさせて、やっぱり同一人物なんだなあ、と思った。


「……もう一回、今度は農園に行こうか?」


 菜那ちゃんも納得顔で頷いてくれる。

 

「ダンジョン鋼で何が作れるか、気になりますよね」


「うん。武器や盾になるかも知れない」


 正直、銃弾も真剣も防げてしまう、おじもちとかいう優秀装備(激臭)があるから、盾より武器の方が欲しいかも。まあ臭くない盾も、あっても困らないけど。


 というワケで。俺たちは再び、死にダンジョンへ。そしてそのまま農園へと下りた。早速、交雑表を開いてみる。


「ダンジョン鋼×クルミの木=???」


 刃物じゃなくて盾っぽいな、これは。持ち手側が木製のラウンドシールドのイメージだ。他にもダンジョン鋼との交雑は何種類かあるが、掛け合わせる方が「???」になっている。まだ手に入れられてないアイテムってことか。


「なんか、普通に盾が出来そうな感じですね。どうしましょうか?」


「うーん。正直、焦って作る必要はなさそうだよね」


「はい。おじもち袋が優秀ですからね。それより、空いていない組み合わせの方が気になりますよね」


「3つ掛けとかもあるからね。強力なのが出来そう」


 その交雑が出来そうになった時にダンジョン鋼を消費してしまっている方が痛い。ダンジョン鋼は確かギルドにも売ってないハズだし。ここは温存が賢いか。


「しかし参りましたね。あのセミや、速きモコ道を倒すのに使えそうな交雑を期待してたんですが」


 そうなんだよね。最悪でもダンジョン素材の耳栓のようなものを作れれば、鼓膜がやられるほどの大音響にも耐えられると思うんだけど。


「取り敢えず、今日はもう遅いし、休もうか」


「はい」


 そういう事でまとまり、家に戻る。流石に今日は同じ部屋で寝るのもおかしいので、各自の部屋で休んだ。菜那ちゃんが少し残念そうな顔をしたように見えたのは……俺の自意識過剰じゃないと思う。


 そして。翌朝のことだった。農園の植物に水を遣りに下りたところで、


「遂に、なったなあ」


 特上薬草、そしてダンジョン鋼の銃、二つが収穫できるまでに育っていた。

 特上薬草はともかく、枝の先に銃器が実っている様子は、普通にカオスだ。というか、遠目には見えないワイヤーか何かで引っ掛けてるようにしか見えないよね。


 特上薬草も一応は鑑定してみるが、内容は前に見たものと同じだった。天然と養殖なので、何か違いがあるかと思ったけど。

 

 そしていよいよ、銃の方を収穫。以前も使った脚立を持ってきて、幹に立て掛けて登る。枝に移り、ユサユサ揺らすと、すぐに落ちた。下で待っていた菜那ちゃんがナイスキャッチ。

 俺も脚立を下りて、鑑定。




 ====================

 

 〈ダンジョン銃・中サイズ〉


 ダンジョン鋼と木材で作られた銃。威力が高く、大抵のダンジョンの20層くらいまでは普通にメイン武器となりうるポテンシャルを持つ。弾は魔素を込めるか、ダンジョン鋼の実弾を用意するかの二択。

 成長速度:速い

 時価:500万円~


 ====================




 ということで、念願の銃を手に入れた。

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