表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
崖っぷち兄妹のダンジョン攻略記  作者: 生姜寧也
3章:兄妹激闘編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/98

第68話:手作り盾兄さん

 一応おじもちの耐久テストとして、ゴルフクラブで思いっきりしばいてみた。ドラコンのつもりでガチガチのゴルフスイング。

 結果としては……インパクトの瞬間に殻が割れ、中身がヘッドに付着し、全く飛ばなかった。正直、いきなり重さが増したせいで、肩が外れるかと思った。


「いてて」


 俺の全力など、銃弾の威力には遠く及ばないんだろうけど、それでも相当な耐久力が期待できる。痛む肩に鞭打って、クラブのヘッドを今度は地面に叩きつける。それでも、おじもちは外れない。ブニョンと衝撃を吸収し、反発さえしてくる。


「うん、すごいな、これ」


「耐久力もそうですけど……ニオイもすごい。どこかで嗅いだような」


「多分、加齢臭じゃないかな」


「ああ、そうかも。電車とかでたまに匂う、アレですね」


 菜那ちゃんは電車なんて滅多に乗らないけど、それでも知らないおじさんの首筋から漂うあのニオイはやはり記憶に残るものなんだな。

 ただそこに、ちょっと違う悪臭も混じっていて、そっちは唾が乾いた時のような感じだ。まあいずれにせよ、クサいことには変わりはないんだけど。


 取り敢えず、ヘッドにへばりついたおじもちに土をかけまくる。表面が瞬く間に焦げ茶色になった。これならヘッドとの吸着面にも細かな土が入り込んだハズだが……


「足で踏んづけてみる。菜那ちゃんはクラブの方を引っ張って」


「大丈夫ですかね? 靴」


「これだけ土でコーティングしてたら、新しい物に吸着するほどの力はない、と思うけど……最悪は靴を新調かな」


 言いながら試しに爪先で軽く蹴ってみる。やはり靴には付着しなかった。オッケー。作戦通り、俺が踏んづけ、菜那ちゃんが引っ張る。2分ほど激闘を繰り広げ、ようやく外れた。

 2人とも息を整える間をおいて。


「これ……戦闘中に触ってしまったら、かなりマズイですね」


「……」


 取扱注意どころの話じゃない気がする。やっぱり素直にダンジョン鋼の盾を買うのが正解か。


「まあ取り敢えず、おじもち袋を作ってみましょう。くれぐれも慎重に」


 菜那ちゃんの言葉に頷きを返して、俺は先程買ってきた土嚢袋の口を広げる。そこに菜那ちゃんがゴルフクラブ2本で上手く転がしてきたおじもちを入れた。殻は思ったより硬くないから、慎重に。


 出来るだけ小さめの物を選び、底に4つ。その上に更に4つ、合計8個も入れた。縦横どちらも二重になるのが心強い。

 

 あとは重量さえ問題なければというところ。

 紐を引っ張り、袋の口を締めた後、ぐっと持ち上げてみた。


「どうですか?」


「軽い。すごい軽い」


 体感としては、2キロなさそう。金属の盾よりは絶対軽い。


「良かったです。私でも持てそうですね」


 ということで、もう1セット作った。菜那ちゃんがそのショボい袋を抱えているのを客観的に見て……これに命を預けるのかと、今更ながら不安が押し寄せる。やっぱ見た目って大事だもんな。盾っぽさの欠片も無い、割れたら激臭ゴミが中で散らばる土嚢袋とか、我ながら正気かよって。


「……ワンダリング・ガンが沢山残っていたら、流石にこれで特攻はやめよう」


「……そうですね」


 きっと菜那ちゃんも、クサいもちを入れた、きたねえズダ袋を抱えている兄の姿を見て、急に不安になったんだろうな。












 大穴を下り、廊下を歩いて、大門に挨拶。勝手口を開けてもらって、1層から順に進んで行く。相変わらずリポップは無し。もうこうなるとリポップというシステム自体、このダンジョンには存在しないのかも知れない。


 そして2層の金扉の前にやってきた。

 ここで確か1敗してるんだよね。今度は慎重に行かないと。


『行き先を選んでください。現在、農園ダンジョンの3階層、出口、の2つが選べます』


 ナビがお決まりの文言。


「3層で」


 短く答えると、扉のまとう金の光が一度瞬いた。ドア枠に肩をつけ、片手を伸ばしノブを掴む。上体、特に頭が自然と引ける。冷や汗も出てきた。これ多分、前回は頭を撃たれたんだろうな。体が覚えてるというヤツか。


「兄さん……」


「……いくよ」


 ノブを捻り、一気に開いた。すぐさま菜那ちゃんが、ドア枠を舐めるように火球を飛ばしまくる。レベルアップ恩恵をフル活用して、一度に複数の球を放出してる。


 やがて炎は枠を全て包みこむ。向こう側にワンダリング・ガンが貼りついて潜んでいたとしても、これで燃え尽きただろう。鑑定情報だと、動きは鈍いらしいし、逃げきれないハズ。


「……」


「……」


 しかし、ガッツリ燃えてるハズなのに、木が燃えるニオイは一切しない。枠も燃え落ちることなく、全く健在。


「多分、これもオブジェクトなんでしょうね」


 いわゆる、戦略上の必要性を汲んで燃えているという状態か。

 

 やがて炎の勢いが不自然に弱まり、消えていく。その後には炎に呑まれる前と何一つ変わらず燦然と輝く金のドア枠。改めてダンジョンオブジェクトの物理法則シカトっぷりは目をみはるものがあるけど、今は構ってる場合でもない。


「……フロア鑑定してみるね」


 スキルを使ってみる。




 ====================

 

 <農園ダンジョン3階層>


 残存モンスター

 ワンダリング・ガン:1体

 ???:1体


 残存宝箱:1個

 残存素材:0個


 ====================

 



 これは……なるほど。残り1体のガンはこの近辺には居ない以上、3層の金扉までの道中に潜んでいるということだろう。そして、これまでの傾向から言って、他のモンスターを全部倒せば、ボスみたいなヤツ(多分この???)が出てくるんだろうけど……


 菜那ちゃんとも、鑑定結果をシェアする。


「となると……残り1体のガンを倒してしまうと、ボスが出てくるワケですか……」


 まあ必然、そうなる。ただ俺たちの当座の目標はここの4層攻略だ。となれば、どうやってもここは通過しないといけない。なら体力がある今日(俺も午前に軽くオワコンに潜っただけだからな)のうちに、ガンを1体倒して、ボスの姿を拝んで、あわよくば倒して……なんて青写真は浮かぶけど。


「うーん」


 取り敢えず作戦を練ってみようか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ