表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

短めのおはなし

婚約を破棄する……って、えぇ!?そちらの女性はどなたですか?仲良くしていらしたピンク髪の女性ではなく……?

設定ゆるゆるの世界観です。

それでも許せる方、ご覧いただけると嬉しいです。

「ガラティー。お前との婚約を破棄して、ここにいるルシアと婚約することに決めたぞ!」




 卒業パーティーでの婚約破棄は、我が国でも最近の流行りです。


 流行りには真っ先に乗りたいタイプの我が国の王太子、シルヴィア王太子殿下。彼が婚約破棄をしないわけがない、とは思っていたが……。横にいる女性は、誰だ?と、会場の全員が首を傾げております。



「ルシア様……ですか? お初にお目にかかりますわ……?」



 名を呼ばれたガラティー様。……国内最大派閥で宰相の父を持つ、ウェスティン公爵家のご息女のガラティー様。

 彼女が一歩、前に歩み出て、王太子に問いかけられます。


 さすがガラティー様。今日も麗しい。こんな茶番ですら、絵画のように見せてしまう秀逸さです。







 そんな中、会場の全員がチラチラと視線を向ける先には、ピンク髪の愛らしい少女、ベタンナ嬢ことローリー男爵家のご養女です。ベタンナ嬢は、見たこともないくらいに口をポカンと開けて、手に持っていたティーカップを床に落とした……しかし、そのことすら気づいていないご様子です。




「ガラティー。お前はルシアを侮辱するつもりか!?」


「いえ……」




 ガラティー様がルシア嬢を知らないことが、なぜ侮辱になるのでしょうか? 王太子の頭の中身の方が心配です。


 王太子のあまりの言葉に、そっと俯かれたガラティー様。駆け寄って差し上げたいです。しかし、腐っても王太子。失礼に当たることはできません。そんな自分の立場が歯痒いです。……ガラティー様につけられた王家の護衛騎士だけは、ガラティー様に何か言葉をかけています。羨ましい……私とその立場を変わってくださらないかしら?






 会場中の困惑がピークに達したところで、ベタンナ嬢が叫ばれました。


「シル! 誰よ! その(ぶす)!」


 ベタンナ嬢の叫びを聞いて、全員が首肯しました。



『一体どこから現れたんだ、その自称新婚約者は。そして、確かに美しくはない』と。






「すまない、ベタンナ。しかし、ルシアほど心の美しい女性を他に知らないのだ。王妃に相応しい女性なのだ」







 ツッコミどころが多すぎて、会場は静かな混乱の渦に巻き込まれております。






 王太子を公の場で愛称で呼べるのは、婚約者と家族のみだろう、というベタンナ嬢へのツッコミは、私が心の中でしておきましょう。




 そして、言い方は悪いが、ベタンナ嬢よりも、多くの人が好まない容姿をしているルシア嬢。不健康なほどふくよかです。

 なぜそんなルシア嬢が、王太子の浮気相手として有名なベタンナ嬢に打ち勝っているのかという困惑が浮かんでいます。

 いや、王太子は本当に女の趣味が悪いです。完璧なガラティー様に劣等感を抱いて、反抗したいのは想像しておりましたが……。

 婚約者のいる相手と恋に落ち、さらにこんな場所に婚約破棄するために同席する平民って時点で、確実に性格は最悪でしょう。

 まだベタンナ嬢の方が、素直で扱いやすくて可愛らしい……。




 最後に、そもそも、ルシア嬢は貴族ではないのではないか、という疑問です。

 今まで、お見かけしたことがないですし、ところどころ所作が……というか、ベタベタと王太子を触っている触り方が……なんというか……品がないのです。





「……お伺いしたいことはたくさんございます。まず、王太子殿下は、そちらの女性ではなく、ベタンナ・ローリー男爵令嬢と親密になさっていた記憶がございますが……?」




 こんな混乱を極めた場においても、冷静に、周囲の疑問を一つずつ片付けようとする、ガラティー様。

 ガラティー様への会場中の好感度が上がる中、横柄な態度で王太子は答えられます。

 ガラティー様より優れているのは家柄くらいなんだから、己の力量くらい分かれよ、クソ王太子……ごほんごほん。失礼致しましたわ。





「あぁ。ベタンナとは仲良くしていたが、ルシアと出会って、真実の愛に目覚めたんだ。ルシアのように慎ましい女性は、他にいない。ベタンナやガラティーのように、派手な女性ではないのだ。心も美しく、奥ゆかしく、穏やかなルシアこそ、この国の王妃に相応しい!」




 冷え切った空気を醸し出す会場を尻目に、意気揚々と演説を続ける王太子。

 王太子が()()()()()()()と公言したことで、ベタンナ嬢はろくな婚姻が結べなくなったことなど、彼にとってはどうでもいいことなのでしょう。

 我が国では、婚約者同士であったとしても一定の距離が必要となります。婚前交渉がなかったとしても、致命的な発言です。



 王太子に慎ましいと言われたルシア嬢。よくよく見ると身につけているアクセサリーやドレスは高級品です。今までの行動も鑑みて、彼女は本当に慎ましい……のでしょうか? 王太子が国費を使って贈ったものなのでしょうか?

 こんな公衆の面前で、婚約破棄したばかりの男性とあんなにはしたない触れ合いができる女性が慎ましい……王太子のマナーはどうなっているのでしょうか?

 気になってルシア嬢を見つめていると、ガラティー様が、問いかけられます。




「王太子の婚約者になるには、貴族であることが求められるかと思います。しかし、私の記憶にはルシア様というお名前はございませんが……」



 この国だけでなく、他国までも貴族の名前を完璧に記憶なさっているガラティー様。彼女の記憶にないということは、すなわちルシア嬢は、貴族ではないという意味です。疑問が一つ解消されたものの、会場のざわつきは一層広がりました。





「貴族貴族と……ガラティー。お前の選民意識には、嫌気がさす。確かに、ルシアは貴族ではないが、ベタンナのようにどこかの家の養女になればいいだけではないか」




 選民意識って……その頂点に立つお前が何を言っているんだ、という叫びたくなりました。

 我が国における貴族の血の重要性については、一般常識でしょうに。



 そんな中、名前を出されたベタンナ嬢が、顔を真っ赤にして声を上げられます。

 確かに、浮気相手として、ルシア嬢に負けたとは思いたくないでしょう。私でも嫌です。

 ……そのせいか、現時点でなぜかベタンナ嬢への同情票が大量に入っているようです。

 うんうんと頷く者の姿も見えます。

 しかし、よく考えろ、王太子。ベタンナ嬢も()()()であり、王妃になる資格には、足りないということを……。まさか……知らないわけないですよね? まさか、ね。





「シル! その女が平民だっていうなら、どこで出会ったのよ! 私が平民だった時、そんな女、見たことないわよ! しかも、下町にいくときは、いつも私と一緒だったじゃない!」


「……ベタンナは入れない場所で出会ったのだ。ベタンナというか一般の女性は、だな。ルシアは()()()()()であったから、ベタンナが見かけたことはないだろう」





 会場中にざわめきが広がり、私も言葉を失いました。籠の中の鳥……つまり、遊女!? 籠の中の鳥というのは、遊女の隠語のはずです。

 いや、そんなまさか、という会場の声をベタンナ嬢が代表して発してくれます。ありがたいです。



「遊女ってこと!? 穢らわしい! 他の男にも股を開いている、シルはそんな女でいいの!?」




「ベタンナ! ルシアは穢らわしくないんだ! 仕方なかったんだよ! 彼女は、幼い頃に親に捨てられて、」



 王太子の語りは続いておりますが、元遊女の王妃。前代未聞です。何のために王太子の婚約者に処女性が求められるのか、理解していないようです。そして、ルシア嬢の身の上話を続ける中、何人かの貴族男性の顔色が悪くなっています。……もしかして、ルシア嬢は売れっ子……?

 私がそのように周囲を観察しているところ、流石にガラティー様が質問なさいます。



「ルシア様は、元々遊郭で働いていらしたということでしょうか? その場合、接客の有無を問わず、王妃となるのは難しいのでは……」



 お優しいガラティー様。接客の有無を問わず、とルシア嬢の処女性を否定されません。





「無礼だぞ! ガラティー。ルシアは、かの有名な『鳥籠』の看板となるほどの遊女だ。……そうだ。ハーバー公爵子息。ルシアとの夜を買うために、通いつめていただろう? すまないな、ルシアは僕を選んだんだ!」



 自慢げに顧客を暴露する王太子。王太子のフォローの全てが悪手になっていることに、気づいていらっしゃらないのでしょうか?

 まぁ気づくことのできる頭があれば、ガラティー様を裏切ろうなんて思いませんよね。ガラティー様は、素晴らしい方ですもの。




 名前を挙げられた、ハーバー公爵の顔は真っ赤に染まり、令息の首根っこを掴んでおられます。公爵夫人は今にも倒れそうで、令息の婚約者家族は……あぁ、婚約破棄に動き出すようですね。書類を準備されています。ハーバー公爵令息の婚約は、国の派閥の安定のために結ばれたものだったはずです。王太子のせいで、国は大荒れですね。






 そもそも、王太子が自慢げに言った『鳥籠』って、平民向けの遊郭ではなくて? 私、以前、平民の友人に聞いたことがあります。

 普通の貴族の方々は、もちろん知らないところのはずです。皆様、『鳥籠ってどこ?』とお話しされています……一部、顔色の悪い面々を除いて。






「みなさま。私のような女性がシル様の婚約者など、ご不安かと思います。しかし、私は『鳥籠』でも、皆様にご満足いただいていた素晴らしい技術がございます。少し浮気者のシル様を夢中にさせておくことができますわ!」




 王太子の後ろからそっと出てきて、自信満々に演説をしているルシア嬢。めちゃくちゃな内容なのにも関わらず、なぜか納得させられる落ち着いた美しい声……ってこれ、魅了の効果ついてませんか!?


 会場中の人がぼーっと聞き入る中、私は慌ててガラティー様に視線を向けます。


 周囲の様子を見て、私と目を合わせたガラティー様。こくり、と頷かれました。


 周囲から見られないよう、魅了の妨害魔法を展開します。


 この国では、異端とされる魔法研究。実は、私たちは秘密組織、魔法研究会の仲間なのです。







「ルシア。無理しなくてもよい。僕が全て話すから」



「いいえ。私が自分でお話しすることで、シルの婚約者として皆様に認めてもらいたいのです」





 感動的なシーンに見えますが、魅了が妨害された今、周囲の視線は冷たいものです。

 愛称も呼び捨てになっています。2人の世界、ですね。

 しかし、魅了の効果が妨害されても、王太子の対応が変わらないというのは……魔法ではなく、愛なのでしょう。





「シル! ひどい! 私を側妃にするから、ガラティーさんとは愛し合わないって言ったのに、他の女を作るなんて! しかも、そんなブス!」




 ……自分のことを棚に上げて何を言っているんだ、こいつ。ではなく、ご不満なご様子のベタンナ嬢。

 普段は上手に隠していたはずの口の悪さが際立っておられます。

 しかし、王太子以外には、目もくれず、王太子を献身的に愛していたように見受けられる、愛らしいベタンナ嬢。一部にもファンがいたらしいです。各家のおじさまたちの目が同情的です。




「すまない。ベタンナ。本当にすまないと思っている……そうだ! ルシアさえ良ければ、ベタンナを側妃にするのはどうだろうか? ルシア。君も僕以外の客を接客してて、僕を待たせたことがあるんだ。いいだろう?」



 思わず絶句するベタンナ嬢。これはクソ王太子すぎて、空気が凍っております。

 こくりと頷き、ルシア嬢は返答されます。




「仕方ありません。あ! どうしてもと言うのなら、ガラティー様もシルの妾になってもいいんですよ?」


「それはいい! めんどくさい公務はガラティーが全てやればいいのだから! 我々は王家の血筋を残すと言う義務を果たせばいいのだな!」



 お前、我らがガラティー様に名を呼ぶことを許されてもいないのに、そんな上からの発言……。私の中で感情が暴発しそうです。興奮しすぎて、窓の外は暴風が吹き荒れています。


 落ち着かないと。私は天候を操る魔法の研究をしているので、つい感情が天候に出てしまうのです。




 ベタンナ嬢の背中をそっと支えたガラティー様は、凛として王太子とルシア嬢に言い返します。



「ありがたいお言葉ですが、お断りいたします。そして、婚約破棄については、そちらの有責という形で受け入れます。臣下として申し上げますが……まず、この国の王妃には、元平民はなることができません。そのことはご存知でしょうか? ベタンナ嬢はそのことをご存知で、側妃を目指しておられましたよね?」



 ガラティー様に問いかけられ、こくりと頷くベタンナ嬢。その様子を見て、ガラティー様は続けられます。



「国母として、他の男性を受け入れたことのある女性は王妃になれません。確実に王家の血を残すためです。また、貴族制度がある限り、貴族しか王妃になれません。……なぜかというところのご説明は省かせていただきますが、お二人が王と王妃という形で結ばれることは難しいかと思います」



 貴族学校2年で習う内容です。貴族の血こそ魔法の素となる魔力の源です。この国では魔法は使いませんが、魔力こそが魔法を跳ね返す力となりうるのです。しかし、ルシア嬢の魅了魔法はかなり効力が強く、先ほど、ほとんどの貴族に効いておりました。対抗できたのは魔法研究会の面々です。もしかして、魔法への認識や研究が阻害効果を生むのでは……今後の検討課題として、ガラティー様と研究いたしましょう。


 それはさておき、おそらく王太子は貴族の血の重要性等を理解していなかったでしょうが、わかったふりをしながら反論なさいます。

 ガラティー様の精一杯の『平民になれば、愛を貫くことができる』のアドバイスの意味は伝わってないのでしょう。しかし、これ以上の発言は不敬になる可能性があります。伝わらないのなら、仕方がありません。



「ここ数ヶ月、ルシアは私以外を受け入れていないのだから、問題ないであろう。そもそも、そんな貴族制度、なくしてしまえばいいのだ。僕が王になった時には、貴族制度をなくしてルシアを王妃とする! そして、ルシアを侮辱したことの責任を取ってもらうからな、ガラティー!」



 自信満々に言い放つ王太子。

 ルシア嬢を侮辱したのはベタンナ嬢なのに、王太子の頭の中は本当に残念です。


 この発言を受けて、王太子を支援していた派閥は全て消え去ったようです。 次期国王としては、元々優秀と言われていた第二王子が担ぎ出されることになるでしょう……。第二王子の婚約者候補は、ガラティー様になってしまうのかしら……。あのお二人、相性が悪いはずですが、仕方ありませんわね。


 あちこちで、慌てて両親に報告に走る生徒がいます。卒業生の保護者として参列していた方々も、慌てていらっしゃいます。この様子を見ても、王太子はきっと、自分の発言を受けて、皆が貴族制度をなくそうと動いているんだろうな、とでも、思っていらっしゃるんでしょうね。


 本当に……ガラティー様に責任を取らせるなんて……。ガラティー様は、ルシア嬢を一言も侮辱していないどころかフォローしていらっしゃる女神ですよね? あの王太子、耳も脳も飾りなのでしょうか?










「……遅れてきてみれば、どういうことだ?」



 国王陛下の登場です。何でこんな日に限って、遅れてくるんでしょう。頭を抱えたご様子の王妃。微笑みを浮かべて心の読めない第二王子。相変わらず、麗しの貴公子ヅラしてるけど、中身は腹黒王子なんですよ!




「父上! ちょうどよかった! ガラティーがルシアのことを侮辱するんです!」



「そうかそうか。ではまず、ガラティー様……いや、ウェスティン公爵令嬢と呼ぶ練習から始めなさい。皆のもの、騒がせてすまなかった。ご察知の通り、第二王子カルロスを王太子とする。そして、第一王子シルヴィアを廃嫡とし王位継承権を抹消、王族の登録削除の上、平民とする。運命の相手ルシア嬢と共に北の鉱山へと送ろう。ベタンナ嬢。愚息がすまなかった。ただ、婚約者のいる男性の側妃になろうとしてはならない。それを学ぶためにも、修道院へ行くといい。最後に我が義娘ガラティー。そしてウェスティン公爵。此度のことは本当に申し訳ない。何か願いはないだろうか。ガラティーさえ、もしよければ、カルロスの婚約者となってくれないだろうか」



「……私、ガラティー・ウェスティンの発言を認めていただけますでしょうか?」



 そっと姿勢を正したガラティー様は、お答えになられます。

 ちなみに、元王太子たちは、いまだに会話の内容を理解しておらず、『なぜ、王太子の私がウェスティン公爵令嬢と呼ぶ必要があるのだ?』と悩んでおられます。ベタンナ嬢は、王の会話の途中なので空気を読んで黙っておられますが、顔色が悪いです。


「第二王子との婚約、ありがたいことでございます。しかし、第二王子にはお心に決めた方がいらっしゃるのではないでしょうか? 以前、第二王子と歓談したときに、元義姉になる身として、そんなお話をお伺いしております。彼女とは良き友人であり続けたいのです。……王命でなければ、お許しください。そして、彼女と私は研究仲間です。我々に学びの自由をお許しください。今回のルシア嬢も魅了を使っておられました。強大な魔法でした。そんな魔法から身を守るためにも、魔法の研究をお許しください」


 ざわざわと会場が騒ぎになります。

 って、ガラティー様はいつの間に私たちの完璧に隠した想いに気づいておられたのでしょう?

 私の方にちらりと視線を向け、イタズラが成功した子供のような微笑みを向けてくださいます。『王命でなければ』なんて、なんの瑕疵もなく突然婚約破棄された令嬢に王命は使えないでしょう。ガラティー様……。




「なんと! 魅了を……。仕方あるまい。カルロスの婚約者については、改めて本人と相談しよう。……そうだな。我が国は、魔法について疎すぎるかもしれない。決して禁じているわけではないが、魔法研究は嫌悪されることが多い……国としての研究機関を作ろう。カルロス。ガラティー……そして、マルタリア・ユースト公爵令嬢」



「はい」



 私は突然名を呼ばれ、慌てて前に出て跪きます。




「魔法研究を進めてくれないだろうか?」


「「「謹んでお受けいたします」」」



 私の行動に、お父様とお母様は目を丸くしていらっしゃいます。


 ちなみに、元々『魔法と結婚したい』とおっしゃっていたガラティー様は、恍惚とした表情を浮かべていらっしゃいます。あまりの麗しさに、ガラティー様の婚約者の座を狙う者が増えそうです。友人……いえ、親友として私がしっかり警戒しておかなければ。まぁ、私がガラティー様を任せてもいいと思える相手は、どんな時でもガラティー様のことを想って行動しているあのお方しかおりません。そっとサポートさせていただきましょう。



 ニコニコと微笑みを浮かべる国王陛下。私たちの隠した想いに気づいていたのでしょう。視線があったら、にやりと笑っていらっしゃいます。どこの情報網なの、国王陛下もこっわ。


 カルロス様は、私を見ていつもの笑みを浮かべていらっしゃいます。これ、確実にカルロス様が根回ししてるわ……多分。相変わらず心の底の読めない腹黒王子。まぁ、ベタンナ嬢の立場をルシア嬢が成り代わることは想定外だったんでしょうけど。


 ってことは、ガラティー様も今回の対応のご準備をなさっていたのかしら? 相変わらず、先見の明に優れていらして優秀な方です。





「父上! なぜ私が廃嫡なのですか!」


 やっと会話を理解した元王太子は、そう叫びながら、騎士たちに連れて行かれました。……ルシア嬢はエスコートのような形で連れて行かれているけど、いつの間に騎士の心を掌握したのかしら!? 魔法、という単語では解き明かせない謎です。

 まぁ、2人とも抜け出すことのできないと言われる、北の鉱山に行かれるのです。騎士の心を掌握したところで、何も起こらないでしょう。……念の為、後ほど関係者には、魅了の妨害魔法の重ねがけをしておいて差し上げましょう。阻害効果のある宝玉も作ってお渡ししておかないと。




 さてさて、私たちは、この後魔法研究所立ち上げのために打ち合わせをしなければなりません。

 麗しのガラティー様と一緒に頑張ります!……カルロスもね。

貴族がそんな表情豊か!?とお思いかと思いますが、通常では起こり得ない出来事に動揺している面々、読心術の優れているマルタリアからの目線でお伝えしております。



最後までお読みいただき、本当にありがとうございます。

もしも、少しでも面白かったと思っていただけたら、ブックマークや評価⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎をいただけると、作者の励みになります。ものすごくなります。

お手数ですが、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 魅了の魔法が無い日本にも、ふくよかで美人と言えないのに周りの美しい人達よりモテてる人っているよね。
[気になる点] この手の洗脳話を見るたびに思うのが 何故魅了魔法の被害者を処罰されるのか
[一言] 平民が王族に精神操作(魅了)魔法とか、魔女の所行。 その場でぐるぐる巻きにふん縛られて、そのまま火刑場にエッホエッホと直行ぐらいで丁度いいんじゃねぇかなぁ。 平民のやらかした悪行に対して、ゆ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ