幽霊ホテルVS彦星
15年前に廃墟となった高級ホテル『出霊館』には、毎年夏になると調子こいた中学生〜大学生どもが肝試しにやって来る。
今日やって来たのは給食第一中学校の生徒10人。こいつらは給食のことしか頭にない親から生まれた、さらに給食のことしか頭にないサイボーグのような子どもたちである。お前ら、肝試しも頭にあったんだな。
「さぁ着いたよ! 早速2人ずつ行ってこようじゃないの! 誰ペアから行く?」
皆を指揮するのは学級委員の緋喰 射芽だ。その黒くて長い髪は学校の男子を虜にすると言われている。幽霊みたいだとも言われている。
「フハハハハ! まずは俺からだ。2人ペアとのことだが、霊が怖いものは俺と来てみよ!」
武田 翔牙が名乗り出た。彼はこのクラスのガキ大将的な存在で、こういうお化け系の時は頼りになるのだ。
「じゃ、あたし一緒に行きたい!」
甘 藍は武田と一緒に行きたいようだ。この2人は相性が良いと偉い料理人も言っていたので、無事に肝試しを終えることが出来るだろう。
「とりあえず先にペアだけ全部決めようぜ」
加鈴 ルウが発言した。彼女はいわゆる黒ギャルで、白ギャルの志知 悠と一緒にいることが多い。男勝りな性格だが、中々顔も整っており男子からの人気は高い。スパイスのような体臭も人気の秘密だ!
「もちろん私はルウとペアで⋯⋯」
ルウの腕にくっつくような体勢で悠が言った。
「誰か私とイこうよ♡」
峰州 蕩音がなまめかしい声で言った。同級生男子の情報によると、彼女はめっちゃエロいらしい。
「⋯⋯⋯⋯」
彼女と仲良くなった男子は全員真っ赤に染まり帰らぬ人となるという噂があるため、誰も一緒に行こうと言う者はいなかった。
「あたいは誰と行けばいいんだい?」
鳥野手 莉耶が残りのメンバーを見渡して言った。同級生男子の情報によると、彼女はめっちゃ美味いらしい。だいたい最初派か最後派に分かれるらしい。筆者は最初派らしい。
「俺と行こうぜ!」
いかにも体育会系な佐波 銀紙焼が言った。彼の名付け親は当時狂っていたらしい。言われなくても分かるって? そうかいそうかい。
「ねぇレモンちゃん⋯⋯フヒヒ、僕と行こうよ⋯⋯フヒッ」
八木 豚が唐揚 レモンを誘った。彼は高身長金持ちイケメンで、年間365000人の男女を抱いているという噂がある。
「はい⋯⋯!」
瞳を輝かせ頷くレモン。彼女は日本人とレモン人とのハーフで、親譲りの綺麗なブロンドがチャームポイントだ。
「射芽ちゃん、私と組むしかないようね♡」
「仕方がないわね、はい、じゃあ武田くんと甘ちゃんから、スタート!」
武田はホテルの入口を蹴破り、タッタッタと中へ走って行く。甘も必死でついて行く。
バク!
最後の1組が入ったところで、ホテルが口を閉じた。このホテルはよく見ると人の顔の形をしているのである。入口はちょうど口のところだった。
モグモグモキュモキュノッシュノッシュナップナップハッピハッピワッショイワッショイ
きちんと20〜30回咀嚼するホテル。
ゴクン
調子こいたガキどもはいっぺんに食われてしまった。
「よっこいせ」
ホテルは立ち上がり、DVDを返しにお店へ向かった。最近は交通ルールがめっちゃくちゃになっているが、彼はきちんと制限速度を守るし、ちゃんと待つところは待つという優良ドライバーであった。
「オラァ! はよ行けや! おん? お前入ってくんなや! 殺すンゴ!」
優良ドライバーではあるが、車の中ではめちゃくちゃ怒鳴っている。
「よし、到着」
ホテルはパチンコ屋の駐車場に車を止めると、ズボンとパンツを脱いで店の中へと入っていった。
「ふむふむ、このへんかな」
そう言ってホテルは床に両手をぶっ刺し、タイルを力いっぱいめくり上げた。頭のいい読者諸君は既にお分かりのことと存ずるが、彼女は狂っているのだ。
彼女の指は悲鳴を上げ、第一関節が全部あっちに曲がってしまった。また、彼女の指の悲鳴を聞いたパチ屋の客は全員鼓膜が破れ、帰らぬ人となった。人の人生とは儚いものである。そう思うホテルであった。
「さて、滑るぞ」
パチ屋に来たからには滑らない訳にはいかないだろう、ということで彼女は異次元からスノーボードを取り出した。
「さてと」
ホテルは手に豆を握り、鬼へ向かって全力で投げた。豆は全弾命中し、真っ赤な肌が斑に青くなったそうだ。600km離れた場所から見ていたルイージは「遠くから見ると紫やな」と言っていた。悲しい世の中である。あと、ちんこにも当たったらしいよ。
存分にパチンコを楽しんだホテルは、その場に深くしゃがみこみ、スーパージャンプを披露した。彼女は猛スピードで宇宙まで飛び、アルタイルに衝突した。そう、今日は77月77日。彦星とのデートである。
「ねダーリン、あーしプレゼント買ってきたの〜」
「へー、やるじゃん。早く出せよ」
「これ〜! お給料3ヶ月分のネックレス!」
「は〜〜〜」
彦星は大きなため息を履いた。
「お前さ、俺がそんなもん貰って喜ぶと思ってんの?」
「え⋯⋯」
「だいたいさ、なんでわざわざこんな金属のヒモ買ってくんだよ。半年も一緒にいるのに俺の好みも分かんないわけ?」
「ごめん⋯⋯ぐすん」
「は? 泣いてんの? なにそれ。泣けば許してもらえるとでも思ってんの? そんなの小学生2年生までだぞ? バカか?」
「うるせぇ!」
ついに堪忍袋の緒が切れたホテルは、口から10人の調子こいた子ども達を吐き出した。
「フン、人間風情がこの彦星に楯突こうというのか。面白い、見せてみよ! うぬらのちから!」
彦星は臨戦態勢に入っている。
「別に戦わんけど」
10人の調子こいたガキどもはそう言ってバスで帰っていった。後から分かったことだが、このバスの運賃は1人6000万円だったそうだ。
「ガキどもに俺を殺させようとしたよな? もう覚悟は出来てるよな?」
鬼のような目でホテルを睨む彦星。
「ごめんなさい⋯⋯! 許して!」
「許すかボケ!」
そう言って彦星が巨大斧を振りかぶって飛びかかる。
「そこまでだ!」
彦星の巨大斧を小指1本で受け止めたこの女性は、三又に分かれたアフロヘアをしており、腰にはたくさんの鴨肉、背中と後頭部には無数の矢が刺さっていた。
そう、織姫の登場である。彼女は小指を彦星の斧を粉々にし、そのまま小指だけで彦星をボコボコにした。彦星の鼻の穴に小指を挿した状態で彼女が問い詰める。
「おめぇ浮気か? 死ぬ覚悟は出来てんだろうなぁ」
「いや、ち、ちが⋯⋯」
「浮気というか、無理やりエッチさせられました」
ホテルが織姫に言った。
「嘘つくでねぇ! お前から言い寄ってきたんだべ!オラ悪くねぇだ! 」
「この指を抜いたら3秒後にお前は死ぬ」
そう言って織姫は指を抜いた。予告通り3秒後に彦星の体は四方八方に弾け飛び、「ぬぴゃあ!」と言いながら死んでいった。
その後織姫とホテルは結ばれ、夏の大三角はデネブ、ホテル、ベガとなった。
彦星は廃墟となった心霊スポットの高級ホテルに転生したという。このホテルには、毎年夏になると調子こいた中学生〜大学生どもが肝試しにやって来る。
今日やって来たのは給食第一中学校の生徒10人。こいつらは給食のことしか頭にない親から生まれた、さらに給食のことしか頭にないサイボーグのような子どもたちである。お前ら、肝試しも頭にあったんだな。
以下ループである。彦星とホテルが入れ替わるだけである。調子こいたガキどもは毎回無事地球に戻り、その次の年にまた肝試しをするのだ。バカである。
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