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三題噺もどき

家の中

作者: 狐彪

三題噺もどき―ひゃくにじゅうに。

お題:変わってしまった・声・強がり




「――ん、、、」

 どこかから差し込んできた光に、瞼を焼かれ、目を覚ます。

 自室のベットの上。

 カーテンはきっちり閉める方なのだが、ほんの少しだけ隙間が空いていたようだ。

 そこから、外の光が差し込んできていた。

 丁度私の顔を照らすような角度で。

 ―嫌がらせのように。

「……、」

 今日は特にすることもない―わけでもないのだが、やる気が出ないので午前中は寝て過ごそうと思っていたのが…。

 起きないようにアラームも消して、雑音が聞こえないようにノイズキャンセリングのイヤホンまでして寝たのに…。

 日の光に起こされるとは思っても居なかった。

 今度はアイマスクでもつけて寝ることにしよう。

「……、」

 いつもは、外の光を入れないように、遮光カーテンをしっかりと閉じるように気を付けているのだが、昨夜は寝ぼけていたのだろうか。

 しかし、こんなに徹底して寝ようとしていたのに、いつも気にしているカーテンを閉め忘れることはないと思うのだが…ま、そんなことを今更気にしても仕方がない。

「……、」

 起きてしまった体を動かし、枕元に置いていたスマホを手に取る。

 あまり、時間を気にするたちではないので、文字盤はロック画面の背景イラストのせいで見づらくなっている。

 正確には、見づらくしているのだが。

 時間に縛られるのは嫌いなのだ。

 そのせいで、いまだ覚醒しきっていない頭では、その画面を見ただけは、正確な時間が分からない。

 が、もうそれ以上時間を追求することは諦め、スマホをもとの位置に戻す。

「……、」

 さて、どうしたものか…起きてしまった以上何かしないといけないような、気がするのだが。

 ―こうなるから起きたくなかったのだが。

 何かやること…多すぎて手につかなそうだ―やめておこう。

 というか、どうしようもなにも、もう一度寝直せばいいだけなのだ。

 そうと決まれば―カーテンを閉めなおし、今度こそ、ゆっくりと睡眠をとるとしよう。

 そう決め、上体を起こし、カーテンに手を伸ばした

「……、」

  トン、、トン、、トン、、

 誰かが、上がってくる音が聞こえた。

 失念していたが、我が家は二階建ての一軒家である。

 一階には、リビングやキッチンなどがあり、二階は家族それぞれの部屋がある。

 家族は、私を含め、5人―父、母、妹、弟―で暮らしている。

 両親は一部屋、子供は各々一部屋ずつ、計4部屋が二階には存在している。

 私の部屋はいろいろな関係で、少々手狭に作られているのだが、もとより持ち物は少ないので丁度いい。

 ベットから手を伸ばせば、本棚に手が届く、カーテンも閉められる、少し動けばテーブルにも。

 本を集めるのが趣味のため、本棚が部屋の大半を占めているが、私にとっては大した問題ではない。生活に支障があるかと言われれば―なくはないが、これもたいしたことではない。

 ちなみに、本が日焼けしないように、遮光カーテンを取り付けていたりする。

「……、」

 と、まぁどうでもいい事を考えてしまったが、誰かが二階に上がってきた。

 普段は気にしないのだが、今日はやけに違和感がある。

 両親は外に働きに出ているから、この時間にいるわけがない。

 まして、父はもう少し重たい音で歩くし、家に居てもリビングでテレビを見ていることが多いため、二階に上がってくることはほとんどない。

 母もリビングで持ち込みの仕事をするので、両親にとって部屋は寝るための場所でしかない。

 私を起こしに来た、という線もあるが、起こさなくていいと伝えているので、ないだろう。

「……、」

 ―ならば、妹か弟だろうか。

 といっても、二人とも学校に通っている身であって。平日は家に居ない。

 急遽休みになったということもなくはないが、あまりにも現実味がない。

 時間をはっきりと確認していないから、まだ家を出るような時間ではなかったのか。

 それとも、忘れ物を取りに…?

「……、」

 と、考えている間にもその足音は続き、階段をゆっくりと上がってくる。

 どこに向かっているのか分からない。

 スマホをいじりながら歩いているのか、あまりにもゆっくり過ぎる。

  トン、、、トン、、、トン、、、トン、、、、

「……?」

 足音が、止まった。

 私の部屋の前。

 もしや、妹か弟が、学校に送ってくれと言いに来たのだろうか。

 今や私に甘えることなど、なくなってしまったあの妹か。

 何をムキになって強がっているのか分からないが、いつの間にか変わってしまった、弟か。

 どちらにせよ、送ってやることぐらい大したことではないし、むしろうれしい限りなのだが。

「……?」

 どうかしたのだろうか。

 ドアの前で止まってから、一向に動く気配がない。

 今更ながら、頼むことに引けを感じているのだろうか。

 それとも、時間的にはまだ余裕があったのだろうか。

「ど―

 うしたの、と続けようとした瞬間、ドアの向こうから、声がした。

『―――、―、――――、――』

 ドア越しのせいか、聞き取れない。

 小声で話しているのか?

 何も遠慮などしなくとも、開けてくれていいのだが。

 声の低さ的に、弟だろうか。

 仕方がないから、こちらから、ドアを開けて

『――?』

 なんだ?

 やけに、声が低い。

 ならば父か?

 弟も声変わりを迎えて、はや数年たつが、そこまでの低さではない。

 しかし、父だとしてもおかしい。

 何か、ノイズがかかっているような、かすれたような、おかしな声。

「……?」

 なんとなくの違和感と、胸騒ぎを覚えつつ、ベットを下り、ドアを開けようと手を伸ばす。

  トン、

 ん?

 なんだ、部屋を間違えたのか?

 この家に住んで何年たつと思って、

  トン、、トン、

 しかし、音は扉の前で聞こえる。

 足踏み…?

 なぜ部屋の前で?

  トン、トン、トン、

 音が、大きく

  トン、トントンドンドンドンドンドンーーー!!!!

 誰のものか分からない足音が響く。

  ドドドドンンンドンドンンドンドンドンン!!!!

 それに混じって、時折あのよくわからない声が聞こえる。

『―――――!!??』

 これは、何だ?

 なにが、起こって

グンー

「―った!!」

 何かに体を引っ張られ、後ろに倒れる。

 そのままの勢いで、角に頭をぶつけた。

 当たり所が悪かったのか、体がうまく動かない。

 朦朧としてきた意識の中、静かに開かれる扉が視界の隅に見えた。


「――ん、、、」

 あまりの眩しさに目が覚める。

 今日は家族も誰もいないし、ゆっくり寝ようと思っていたのだが。

 枕元のスマホを手に取り、時間を見る。

 寝ぼけ眼であまりはっきりと見てはいないが、まだ寝てもいい時間だ。

 さて―と寝直そうとしたとき、

  トン、

 と何かが上がってくる音がした。


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