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世界

 

 倒した岩の巨人のいた場所には討伐報酬としてドロップしたアイテムと、とどめだけを持って行ったラオに向けた冷たい視線が残った。


「何その視線」

「最低、ラオが悪い」

「酷いです、ラオ先輩! あと一息だったのに!」


 ボスが倒されたことで閉ざされていた部屋の扉が開き、3人はボスが消えた場所に集まる。

 とはいえボスは消え戦闘は終わり構えていた武器をしまう。

 気持ちは不完全燃焼だったが、気を取り直しルールーは視線をドロップしたアイテムに向け確認した。


 ・灼熱の耳飾り。


 --……名前が物騒。


 アイテムを回収し終えるとフルムーンが自分とルールーへと向かって回復魔法を撃つ。

 減った体力も回復し、3人は閉ざされていた方の出口を見る。


「これでチュートリアルは終わりだね、これで自由に動ける」

「ラオ先輩、この後は?」


「とりあえず、遺跡の外に出る」


 そのまま遺跡を出るとゲームの開始地点であるカプセル落下場所を通り過ぎ、最初散策した時にはなかった新しい道を歩み始めた。


「それで東西南北どっちに行こうか?」


 ラオの質問に意図がわからずルールーとの間に少し間が開く。


「なんです?」


 コンテナしかなかったベースキャンプへと続いていたものと同じような獣道が、カプセル落下地点の後ろに続いていた。

 まだ遺跡は続いているようで、獣道の途中に木の根に埋まった石畳や倒れた石柱が見える。

 それらを乗り越え硬い地面、ぬかるんだ地面、滑りやすい地面と順に歩かされるルールー。


「どこ行くか決まってないんですか?」

「一応は東が正規ルート、プレイヤー人口も多い素材の採取や採掘、大人数クエストもある場所。ダンジョン探索やタワーディフェンスとかが多いかな。私が進めてるから時間あるときに動画視聴してもらえると嬉しい」


「今日のプレイが終わったら少し調べて見てみます。他にもあるんですよね、他はどんな感じですか?」

「北が来た道を戻る感じで自然を相手にサバイバルをする探索ルート、遺跡調査や原生生物と戦う自然伴う広いマップや地形効果など使ったクエストが多い。南が宇宙船の落下地点の略奪ルート、まぁ、PVPルートって言った方がいいか」


「ピーブイピー?」

「あれ、ルールーのやってたゲームのジャンルがわからないから変に用語使えないかな? プレイヤーバーサスプレイヤー、名前の通りにプレイヤー同士で戦うクエストが多い。というかここはどうやってもPVPになる。西は山を抜けた未開拓地、単純作業や戦闘が苦手なプレイヤーが集まって村を作ってる開発ルート、開発や発展と採取や大規模戦闘クエストがメインかな」


「最後の、戦闘が苦手な人の集まりなのに戦闘クエストがあるんですね?」

「スタンピードから町を守るタイプのタワーディフェンスのクエストだね。他の大規模戦闘は、正規ルートの方はダンジョン奥のボス戦、今ルールーが倒したボスの強い奴が出てくる感じ。開発ルートは街を襲う怪物たちからギルドメンバーで応戦する、数対数で大規模戦闘クエストを戦うかんじかな」


「へぇ、いろいろあって迷いますね」

「どれ選んでも、自分に合わなかったら後でサーバー移動できるから大丈夫」


 話を聞いていたフルムーンがラオの肩を叩き話に入ってくる。


「ラオ説明に熱が入ってるところだけど、PVPルートと開発ルートは公式からギルド加入推奨だったはず。3人で進めていくにはなかなか厳しいかも」


「ゲゲッ、そうだっけ? じゃあ通常ルートか探索ルートになるか……」

「そうなるね」


「私、ソロでは通常ルート進めてるからちょっとあれかも」

「なら探索ルート一択になるかな?」


 少し悩んだのちラオがルールーを見る。

 わかりやすく困った表情を浮かべており、選択肢を奪ったフルムーンが思わず口元を押さえそっぽを向く。


「……どうするルールー、プレイした感じ基本をこなしていくクエストも多くて初心者向けだし私は通常ルートでもいいけど?」

「特に難しくないなら探索ルートでも大丈夫です」


「ありがとうルールー、私と違って空気の読める良い子だ。今度私が家に帰る機会があったときにルールーに何でも好きなお土産買って持っていくから」

「高いのをねだっちゃいますよ?」


 歩いて森を抜けるとそこは大きく大地の裂けた峡谷が広がっていた。


 大きく深い谷の間には強い風が吹いている。

 断崖絶壁で剝き出しの様々な色の地層に半透明の結晶が生えていて、下から大きな水の流れる音も聞こえてきた。


 --綺麗。


 壮大で幻想的。

 ビルの立ち並ぶ大都市で生まれ育ち外国への旅行経験の無いルールーには、どこまでも広がる広大な景色に目を輝かせた。


 同行するフルムーンからの許可を得てラオは崖のふちへと近寄っていく。

 そして遺跡のものと思われる石畳の上に立つラオはルールーに振り返った。


「それじゃ、出発しよっか?」

「はい!」


 崖のふちへと歩み寄るラオの言葉に何で移動するのかと楽しみにしていると、三人が立つ崖の一部が崩れ真っ逆さまに落ちる。


「えっ!?」


 ルールーが驚く間もなく、衣装に合わせ背中から簡素な骨組みの皮張りの翼が展開した。

 体というより鎧から生えた翼のおかげで、谷底へと落ちて小さくなっていく遺跡の石畳のようにはならず緩やかに下降していく。

 真っ逆さまに落下していないとわかり大きく息を吐くルールー。


「谷底に落ちるわけじゃないんですね」

「谷を抜ける風に乗って移動するんだ、下から風が吹くから下の川に落ちることはない」


「この羽根なんです?」

「見た目はSFチックなのとファンタジーチックなのの二種類に分かれてるけど、空を滑空するだけで飛ぶ機能はないよ。あまり使う機会はないけど一部スキルで出ることもある」


 一緒に堕ちたフルムーンが赤茶っぽい大きな鳥の翼を広げ飛んでいる。

 羽ばたいてはいるが高度は上がらずルールーとともにゆっくりと下降していく。


「早くこーい」


 先に降りたラオが少し離れた場所で呼んでいる。

 生まれて始めて翼を扱うルールーだったが、そこはゲーム移動に難はなくフルムーンの後に続いて滑空していきラオと合流した。


「何してたの?」

「脅かすラオが全部悪い」


「ええ!? あの崖が崩れるのはゲームの仕様なのに!」


 ラオとフルムーンの後を追いルールーは激流の流れる川の上を飛ぶ。

 石でできた重そうな鎧を着こんでいるにもかかわらず、ラオは鎧と同じ材質の石の翼で同じ速度で自由自在に飛び回る。

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