イベント 6
後ろでルールーがアイテムで回復する姿を見て長期戦にため息をつくダンテ。
「またか、意外とガンガン来るね……あきらめたりしない?」
「ゲームであっても戦いには、勝ちたいものでね!」
「あたしも。ところでHPは大丈夫?」
「ボス戦で隅の方で戦っていたから、回復アイテムはまだ残ってる。遊んでいたわけじゃないぞ」
盾で防ぐが攻撃力が高く斬られるたびに、メビウス8の防御を上回った分のダメージを受ける。
ルールーが援護に来るが彼女を無視して一気にメビウス8に畳みかけるダンテ。
何度か攻撃を与えダメージを与えるものの、ダンテの残りのヒットポイントがわからない。
「ほんとに対人戦に慣れてるやつと戦うのは嫌だな」
「おやおや、前はPVPの方にいたのかな?」
エクレアが二人の後ろにいるのでダンテは彼女が魔法を使うタイミングを見計らいながら剣を振るう。
放たれた魔法を回避し一人狙いの集中攻撃でついにメビウス8が倒れ光の弾が浮かぶ。
残るはルールーとエクレアの二人だけ。
『面目ない』
メビウス8を倒したダンテはルールーを見る。
「ふぅ、後2人。意外と手こずった、連携が取れる集団戦は辛いね。でもまぁ素人の虐殺にならなくてよかった、楽しめた。さてもう大技を打ってこないということはマジックパワーも切れたのかな?」
一息つくと戦いを終わらせるべくダンテはルールーへと向かって走り距離を詰めた。
反射的に盾で防ぎ防御力を上回った攻撃力がルールーのヒットポイントを削る。
向こうはただ斬撃、刺突、殴打の弱攻撃を順繰り連打してくるだけ。
ただそれだけだが逃げても回避で詰め寄ってきて反撃も、剣も持ち直し両手で握った強い攻撃ではじき返されダンテに手も足も出ない。
止まらぬ連撃にただヒットポイントは減っていく。
「防御じゃ勝てないよ、じわじわ減っていくだけ。思い切って飛び込んでおいでよ」
「出来たら出来てます、出来ないから出来ないんです」
「何言ってるの?」
「自分でもよくわかりません」
またしてもルールーは剣は弾かれる。
わかってはいてもダンテの振るう剣には、剣で弾くか盾で防ぐしかない。
とどめを刺し切ることができずエクレアの攻撃で一度身を引くダンテ。
「そろそろ、仕留められてくれない?」
「何でここまでして戦っているのかよくわかりませんが、倒します」
「何で戦うか? ゲームだからだよ!」
「そうですね!」
「さぁ、殺し合おうかりそめの命で!! 何に使うかわからないが欲しい欲しいと集める強欲、他者の容姿装備を羨み対抗しようとする嫉妬、いくら食べても満たされない食欲、敵を倒し自分が強くなったと奢る傲慢、負けを受け納得できないと暴言を吐き散らす憤怒、理想のキャラを作り演じる色欲、悠久の時間を費やす怠惰、この7つの大罪を網羅する世界で!!」
攻撃を躱しダンテの剣がルールーの胸に剣が突き刺さる。
真似して紙一重でよけようともしたが、回避で彼女のようにうまく攻撃を躱すこともできなかった。
--やっぱり勝てない!?
ルールーのヒットポイントが削られて行き、残り10を切ったころに異変があった。
ルールーの装備、焦土炭華。
黒い衣装が裾から順にまるで炭の火が赤く熱していくように赤く光りだす。
異変に気づいたダンテは回避で距離を取り様子をうかがう。
「何だそれ、瀕死になれば発動する系のスキルか。面白いねルールー!!」
黒いぼろ布だった衣装は今や、赤く輝き袖や襟が炎が激しく燃えるエフェクトでファーのようになる。
事態はよくわかっていないが残りのヒットポイントも少なくなりふり構っていられないルールー。
「なにこれ」
ルールーが赤く燃える衣装を揺らめかせ剣を構える。
まるでお辞儀を返すかのようにダンテは同じようにオーラが揺らぐ剣を構えた。
そして交える剣先。
会心攻撃、ダンテの剣を弾き斬られた部分から火の粉が散る。
そしてダンテが回避するたびに斬られた場所から火の粉が舞う。
「火傷ダメージ? しかも数値が大きい、うわ厄介な」
移動だけならダメージを負わない為、一秒ごとに減っていく数値を気にし距離を取って回復を待つ。
火傷でのダメージが受けなくなるとダンテは両手で剣を握るとルールーへと向かう。
両手で剣を握り全力で火力を乗せる。
「よく頑張ったけど、これでとどめを!」
ルールーも剣を構え迎え撃とうとする。
そこへ、側面から飛んでくる殴打。
驚き振り返ると杖を持ったエクレアの姿。
「ほんとにマジックパワーが切れてたんだ」
強力な攻撃手段を失ったエクレアを後回しにし弱ったルールーにとどめを刺すべく武器を構えようとするがダンテは武器が構えられないことに気が付く。
混乱状態。
攻撃行動も防御行動も一定時間できなくなるそれはダンテの思考を一瞬奪う。
そして。
「とどめ!」
ルールーの全力の一撃がダンテのヒットポイントをゼロにした。
「びっくり、負けちゃった……」
倒れたダンテの体から光の弾が抜け出る。
同時に穴の上から無数のドロップアイテムが降り注ぎ空間が明るくなっていった。
ルールーの燃えていた衣装が鎮火し再び黒いぼろ布姿に戻る。
『なぁんだぁ、時間制限付きだったか。もっと慎重に行っとけば勝てたなぁ』
どこからかダンテの声が聞こえたが光の弾に交じって消えていった。
光の弾たちが目まぐるしい動きで飛び回りそのアイテムを回収していく。
同時に壁の一部が崩れ出口へと向かう階段が現れアイテム回収を終えた光の弾たちが帰っていく。
『お疲れ、少し休んだら帰ろう』
「ボス戦より大変だった気がします」
「我もくたくただ……」
フワフワと浮かぶ光の弾となったラオがアイテムを回収し終わり帰って来る。
ゆっくりとアイテムを回収していくルールーとエクレア。
ルールーはふと辺りを見回すがすでにダンテの姿はなく、地下に残るのはルールーたちのパーティーだけ。




