イベント 1
リアルでメッセージを受けゲームにログインするルールー。
ゲーム世界に到着したばかりのルールーに、マイルームへとやってきたラオが速足で近づいてきて浮かれ弾んだ声で言う。
「イベントが始まった。行こう、参加して限定アイテムを手に入れるんだ」
「あれ、フルムーンは?」
目をこすりルールーは辺りを見渡す。
マイルームに居るのはラオだけでいつも一緒にいるフルムーンの姿はない。
「ギルドに呼ばれて向こうでイベントを受けるらしい、なんでも主力メンバーが一人欠員出たんだって。いつもこっちに来てるけどフルムーンはギルドの中じゃ上の方のランクだし」
「ラオ先輩は私とクエストに行っていてもいいんですか? 他の場所で活動していたんでしょう?」
「私の勧めている通常ルートはソロだから問題ないし、ここが終わったら向こうにも参加する予定。エクレアちゃんにも連絡は取ってるからすぐ来てくれる。町で合流だ3人で行こう」
「わかりました行きましょう」
町へと向かうといつも通りに大きな遺跡の階段を駆け下りクエストを受けに行く。
「そういえば、あれからいろいろ調べて少しわかったよ」
「何がですか?」
「ルールーの装備。その髪のアケボノは溜め攻撃時の火傷属性の付与、灼熱の耳飾りは火傷ダメージの蓄積の強化」
「よくわからないです、何がどういう能力?」
「属性付与は攻撃時に属性を相手につける。杖にはそれぞれ属性が付いてるけど、これがないと普通の武器は属性を付与はできないの。蓄積強化は数値が増える、だからルールーの装備は髪型で火属性が付与できるようになって、ピアスがそれの強化する感じかな」
「この煤みたいな服は? 焦土炭華」
「ごめん焦土炭華の情報無かった。わからないけど、見た目が何かの燃えカスみたいだから、火傷ダメージ系の何かだと思うけど確証はないなぁ」
「そうですか……でも装備の能力がわかってよかったです。会心攻撃するには溜め攻撃をすればいいんですね?」
「うん、まぁ発動率は低いからあんまり気にしない方がいい。狙っては出せないから」
「わかりました、出たらラッキーな感じですね」
ラオとともに駆け抜けた町に人はほとんどおらず、露店の行商人たちが暇そうにしていた。
初のイベントということだけあり普段より多くの人が集まっていた。
皆クエストを受けてはバスの発着場へと向かっていくが、新たにログインしてきたプレイヤーたちが入れ替わりに入ってくる。
「すごい人ですね。ぎっしり、いつもの3倍くらいはいる気がします」
「いつもは他の時間帯にやっている人も早くやりたくて来たんでしょ、なんてったってアプデ直後だ」
ラオとルールーは施設内を歩き回り、先に来ているエクレアを探す。
「エクレア!」
名前を呼ばれ気が付いたエクレアが手を振ってやってくる。
頭に魔樹の木の葉を乗せた魔法使い装備で、あの時より指輪や装備の詳細が変わっていた。
頬などに入れ墨など入ったエクレアはルールーに明るい笑みを向ける。
「おはようルールー、ついにイベントが始まったな。我は楽しみ過ぎて早起きしてしまった」
「おはよ、まだすこしねむいや。呼ばれてすぐ来たけど、今何時」
「アプデは毎朝5時、今は5時15分。イベント中に眠らないといいな」
「今すぐにでも寝そう、でも始まったら目が覚めそう」
「さあさあ、ルールーが眠らないように早速クエストを受けてイベントをクリアしよう!」
「そういえば、今まで星を上げるためクエストで全然見ていなかったけどイベントって何するんですか?」
「報酬のアイテムとか日時とかあったけど、戦い方は大規模戦闘としか結局情報がなかったな。少しボス所情報も出ていたけどシルエットと戦闘場所くらいしか、大型のボスだ」
「みんなで寄ってたかって攻撃するんですか?」
「多分な、ボスを倒せればやられてもアイテム回収はできるそうだ。その辺は普通のクエストと一緒みたい。我も防御より攻撃よりの装飾品を多くつけてきた」
「いいなぁ、調子がよかったのは最初だけで最近は素材しか出てくなくてあんまり増えなかった。戦いはどんな敵が出てくるのかな、気持ちの悪いものや怖い系じゃないといいんだけど」
そんな二人にパーティー申請が届く。
「話が盛り上がってるとこ悪いけどクエスト受けて来たよ、申請届いた?」
「受けました」「我も、参加した」
「それじゃバスに乗り込んで出発だ」
3人は階段を下りてバス停へと向かう。
バスの中は同じクエストに向かうパーティーが乗り込んでいて、広い空間も若干の圧迫感があった。
「同じバスに乗るんですか?」
「大人数クエストだからなのからかね? 多分人数がそろったら出発でしょ」
「いっぱいいる。初期装備の人も何人か」
「みんながみんなルールーやエクレアみたいにドロップしてアイテムを手に入れられるわけじゃないから。私だって課金でそろえたんだから。とはいえ装備で人の強さを見るのはNG、スキルがなくても戦えるのがこのゲームだからね」




