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チュートリアル 3

 

 並ぶのは鞘に収まった細長い剣、鉄のプレートと金属繊維で紡がれた籠手、折り畳み式の槍、見た感じではどう使うのかわからないメイスにも似た杖の四種類。

 箱の構造から光線銃でも出てくるのではと身構えたが、中身は中世の武器を近代的に作り直したようななんとも機能的とも素朴とも言えない武器たち。


「う~ん、どれがいいんだろう」


 視線を武器に合わせると武器が縁どられそれぞれの紹介文が出る。

 ・剣、高い攻撃力をもち、防御力を持つ盾を装備できるようになる。

 ・籠手、身体能力を強化し素早い連続攻撃が行える。

 ・槍、攻撃範囲の長さと回避率、回復と支援魔法が使える。

 ・杖、スロットに魔法を設定することで魔法が使えるようになる。


 --……魔法、あるんだ。


 説明文を読みさらに何にするかを悩むルールー。

 声を張り外で待つラオに助言を乞う。


「ラオ先輩、武器ってどれがいいんですか?」

「好きなのを選んでいいよ、バランスはこっちで合わせる。気を遣わずに好きなやつ使って」


 そう簡単な返事がコンテナの返ってきて少し悩んだ結果、魔法という言葉に少し惹かれつつもルールーは細長い剣を手に取った。

 ただただアイテムが並ぶ順序的に剣が1番上だったからという理由。

 始めて手に取ったはずのそれは手によく馴染み、ひとまずはそれを装備しコンテナから出る。


「剣を選びました先輩」


 答えを聞いて満面の笑みを浮かべて喜ぶラオは、横に立つフルムーンの肩に腕を回す。

 ニヤつくラオと少し残念そうな顔をするフルムーン。


「やっぱり最初は剣だよね! そう来なくっちゃ、はいフルムーン」

「残念、最初だから接近戦より少し引いたところから戦えるリーチの長い槍だと思ったのに」


 肩をすくめフルムーンは手のひらに小さな袋を出現させ、それをラオに渡す。

 何か賭け事されていたなと思いつつもルールーは二人のもとへと合流する。


「ここどういった世界なんですか? まだしっかりとした世界観がわかりません」

「設定は私らは違う星から来た労働者、ただ宇宙船が壊れて脱出ポットで逃げ出し不時着。仲間とは散りじりになったって話」


「散らばった仲間を探してここから脱出するって話ですか?」

「いいや、自力で本来の降下予定地まで行ってそこで労働者として働くってのが通常ルート」


「酷い世界だ」

「ここへは労働するために来たんだから、むしろそこからが始まり何だけど。そんなことより自然が美しい世界でしょ」


「はい、とてもきれいです」

「各地を観光するだけでも心が癒される。それじゃ行こうか冒険に、ただ話して説明するのはゲームっぽくない。体を動かしながら覚えていこう」


 三人はコンテナを後にする。


「ラオ先輩、どこに行くんですか?」

「最初はどこにも行けない、ベースキャンプで装備を取ったら来た道を戻って最初にルールーと出会った場所にいく」


「そこに戻ると?」

「今度はフィールドに敵が出るようになっているから、ボスを倒す。今チュートリアルの真っ最中何だけど、仲間がいるときは説明がスキップされるみたいだね」

「クエストの内容は変わらないみたいだけどね。機械音声より一緒にプレイするフレンドに説明させた方がいいって感じなのかも」


 遺跡へと戻る1本道の先に、先ほどはなかった動くものの気配。

 三人は足を止め動く影を観察する。

 そこには森を歩く二本足で歩く石の人形の姿があった。


「さー、出た、モンスター。ルールー前に、私たちは後ろから援護する」

「えっ! 先輩は一緒に戦ってくれないんですか!?」


「わたし魔法使いだから後方支援、それにチュートリアルだから敵は強くないよ。フルムーン、サポートを」


 名前を呼ばれ折り畳み式の槍を伸ばすフルムーンがルールーの横に立つ。


「まだチュートリアルだから、強い敵でもないしボクが出る幕ないけどね」


 ルールーとフルムーンが前に出ると、敵を認識した土人形が真っすぐ向かってきている。

 黒色と銀色の粗い質感の鉄の剣をルールーが抜き、鎧と同じく金色と赤色の槍をフルムーンが構えた。

 人型をした形の石と岩の塊はフラリフラリとゾンビのような歩きをして迫ってくる。


「とりあえず好きに戦って、なんかあったら手伝う」

「わかりました!」


 そういって剣を鞘から抜き石の人形へと近寄っていく。

 石の塊に剣を振るっていいものかと剣を振り上げるルールー頭を一瞬よぎったが、しかしここはゲームの世界、そんな疑問は即座に解消された。


「やぁ!」


 少し迷いながらも思い切り剣を振るって斬りつける。

 剣を握る両手に重い手ごたえがかかり、それでも力をかけて振り下ろす。

 斬りつけた剣は石人形を透過し切られた跡が残像として石人形の体に残り、同じタイミングで6と数値が表示される。

 おそらくは石人形に6ダメージ与えたということだろう。


「斬れた!?」


 斬りつけた個所に跡が残っているだけで石人形がまだ動く。

 攻撃を受けても石人形はひるまずゆっくりと両手を振り上げた。


「わっ、わわわっ!」


 ゲームとはいえそれを忘れさせるリアルな世界観。

 実際に死なないとわかっていても振り上げられた石の腕に恐怖心が芽生える。

 水の感触や石の質感を確かめた後でダメージを食らうというのがどういうものかを考えるだけで恐ろしい。


 ダメージってどうなるんだろう、そう思っているルールーの頭に岩の腕が振り下ろされた。

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