ボス戦 1
ゲームを始めるとメッセージが届いており、ログインしたルールーは早速確認する。
一緒に戦ってくれないかと先日一緒に戦ったエクレアからの呼び出し。
さっそくルールーは返事を返して自室から町へと向かい待ち合わせの場所へと向かった。
「お待たせエクレア」
「大丈夫、装備を整えていた。呼び出してしまって済まない」
何度か他のクエストをクリアしたようで彼女の茶色と黄色い頭髪の上には、先日にはなかったアイテム『魔樹の木の葉』が乗っている。
防具の装備も初期のものではなく黒地に蜘蛛の巣の模様の衣装に、灰色い軽装な鎧へと変わっていた。
「別にいいよ、ボス戦はどう?」
「それが全く、強くて我は心が折れた。装飾品集めてからも挑んだが厳しいな、数が多くて一人ではさばけない。本日はそのお願いだ一緒に戦ってはくれないだろうか?」
「そういうことね、いいよ実は私もボス戦なんだ。これって一緒に討伐したことになるのかな、それとも個別かな」
「どうだろう、その時は2度挑もう。それはそうとクエストに修正の入ったプチアプデのほかにイベントの情報が更新されたな」
「そうなの?」
「まだ決まったのは日時だけだが、クラン戦のような大人数クエストらしい」
「くらんせん?」
「ここではギルドか、8名以上の同じチームの人たちと協力して戦うの」
「大勢で戦うのか、面白そう」
「なんであれ、それまでに星を上げないと」
エクレアは新たに追加された赤いファイルを選ぶとルールーにパーティー申請を送る。
クエストを受けようとしていると、近くで見ていた2人のプレイヤーがルールーたちに話しかけてきた。
「そこの二人、ボスクエを受けるのか?」
突然話しかけられ驚いてルールーの後ろに隠れるエクレア。
振り返ればひげを蓄えた老齢の戦士と眼帯を付けた若い青年が立っている。
「その装備からして、星0なんだろ? これからボスクエ受けてランクを上げるのか?」
声もアバターに合わせて老齢の男性アバターは渋い低音のため、喋り方に少し違和感があった。
「え、ええ。そうです」
2人の男性アバターのプレイヤーすでに立派な装備をしており装飾品も多く身に着けていて、このゲームの常連者という印象を受けた。
髭を蓄えた男はルールーの手もとを見て話しかけてくる。
「だと思ったよ見たところクエストを受ける子は初心者、今は星が0なんだろ。俺らも、同伴させてくれよ」
「え、ああ……なぜ、です?」
「おいおいなんだ、知らないのか? 近々起きるイベントの話」
「ええ、ごめんなさい。今日はさっきログインしたばかりなので、大人数で戦うとか」
「向こうのモニターででかでかと広告されているんだがな。しょうがないな、教えるよ。イベント参加の条件はプレイヤーが星1以上に上がっていること。じゃないとイベント中にイベントに参加できない」
「そうなんですか?」
「だから今、上級者が初心者のクエストに同伴している。だからここで初心者を待ってたんだが、そこにちょうど良く昇格クエストを受ける初心者と来た」
「なるほど、だからなんかいつもより人が多い気がしたんですね」
「ああ、昇格クエストは他と違って参加人数が増えるとボスのヒットポイントが増えるがすでにクリアした俺らがサポートするから大丈夫だろ。効率よく倒していこう」
「ああ、そういうことならお願いします。あ、いや少し待ってください相談します」
振り返ってルールーは知らないプレイヤーに驚くエクレアと顔を見合わせた。
「どうする? 手伝ってくれるならクリアは簡単になりそうだけど?」
「ま、迷うけど。我は心折れそうだったから地獄に仏ではある。交渉はルールーに任せていいか? 男性アバターは背が高くて、怖い顔が多い苦手だ」
ルールーの後ろでエクレアがパーティーへの参加申請を送る。
男性アバターのプレイヤー2人をパーティーに参加させると、クエストを受けすぐに4人は移動した。
「よろしく。俺はクラーケン、こっちは弟のベヒモス」
「よろしくお願いします。私はルールー」
「我はエクレアである」
握手を交わしたのち4人はバスに乗りフィールドへと向かう。
「んで、そういえば二人の武器は?」
「私は剣です」「我は杖……」
エクレアの武器が杖と聞きクラーケンたちは肩をすくめる。
戦い方が特殊だからかルールー同様肌に合わないとすぐにやめるものも多く、町でもロビーでも杖を装備している人をそうそう見ない。
この二人もおそらくは杖の使い方を正しく知らないだろうとルールーは思いながらも後に続く。
「杖か……、まぁボス戦だし行けないこともないか、俺らで何とかするよ。ルールーは一緒にアタッカーをやってくれるよな?」
「エクレアさんはいつも通りに戦ってもらって構わない」
着いた場所は今まで来た事の無い場所。
空は雲で覆われ黒ずみ今にも雨が降りそうな天気、風は止んだ木々のざわめ似来ない森が広がる遺跡のマップ。
バスから降りると石柱の立ち並ぶ1本道が続いていて、クラーケンとベヒモスは走り出す。
「さぁサッサと倒しちまおう。このマップは1本道、迷うこともない」
「ボスも固定した場所に沸く、俺たちが倒していくから二人は他のをひきつけていてくれ」
ルールーたちは先を行く二人を追いかける。
静寂に包まれ足音すら大きく異様に聞こえルールーは周囲を警戒しながら走った。
--来たことない場所、ゆっくり散策したいなぁ。向こうに花畑が見える。
通路の奥はすり鉢状に大きな広場になっていてチュートリアルで戦った岩の巨人と、それよりも圧倒的に大きな大岩の巨人が待ち構えている。
接近しないと襲ってこないのか、巨人たちはルールーたちが見える場所にいてもその場でだた立ち尽くす。
「でっかいね、あれ通学用のバスを縦に立てたらあんな大きさかな」
「うむ、そのくらいに見える見ての通りで頭の位置が高いんだ。あと、このゲームを始めて最初に戦ったボスもいるな」
先に向かっていったクラーケンが剣を構えベヒモスが槍を構えると、停止していた巨人たちが一斉に動き出す。




