魔法少女
「ひゃあ、水が冷たい」
「水がブーツに入って足が重いし、そこはぬかるんでるし岩がぬるぬるしてて滑る」
ルールーの横でエクレアが杖を使って水面に転ばないように進む。
「このゲーム、服脱げるんですか?」
「んにゃ脱いでみようとしたが脱げなかったな。水から上がるとすぐに水が乾いていくけど、乾くまで判定があるのが乾くまで体が重い」
「肩まで浸かったら服が肌に張り付いて嫌なことになりそうだなぁ」
「30秒ほどですぐ乾く、我が川で転んで調べた」
何かを見つけたフルムーンが槍を構えて立ち止まると、正面の水面が揺らぎ噴水のように水の塊が盛り上がる。
しかしそこからは何も現れず立ち上がった水柱がゆっくりとルールーたちに近づいてきた。
「あれですか?」
「今回の敵はスライムだ。近づきすぎないように、接近しすぎると継続ダメージを受ける」
「わぁ、我も見たことのない敵だ」
「それじゃ、フルムーンにヘイトをとって貰って魔法について教えていこう」
「はい」「お願いします」
二人の前に出るとラオが杖を構えた。
「魔法は剣や他の武器と同じで杖の振り方によって横薙ぎで斬撃、突き出しで刺突、振り下ろすか振り上げるで打撃の属性が付く。通常攻撃はその三つの攻撃属性だけど、それに加えて異常付与という力がある」
杖を構えモンスターだとという水柱に向けて振る。
振られた杖の先端から光弾が1直線に飛び眩しい閃光を放って水柱を吹き飛ばす。
攻撃を受け水柱は周囲に大きな泡をばら撒き、フルモーンが距離を取って槍で浮かぶ泡を突ついて割っていく。
「麻痺、火傷、凍傷、裂傷、混乱だ。魔法に限らず防具装備や素材から作られた他の武器にも状態付与があるけど、杖の魔法が他より状態異常の付与率が高い」
「前に混乱は聞きましたね、盾で防いだりすると溜まっていくって」
ラオが説明している間フルムーンが水しぶきを上げて走り回り、ダメージを受ければ回復アイテムを使って攻撃をひきつける。
「そう、高い付与率と他の武器にはない広範囲攻撃というものもあり、あまりにも強いからマジックパワーという制限のもうけられたこの杖というのは、いかに少ない攻撃で効率的にダメージを与えることができるかにかかっている」
「なんか難しそう。そしてラオ先輩が楽しそう」
「撃つときと着弾のエフェクトが派手でかっこいいんだ」
「攻撃時は行動不能になる技も多く射程も短い。近接攻撃で少しずつマジックパワー回復させることもできるけど、扱いどころの難しい玄人向けの武器。敵の弱い最初は火力のごり押しでも倒せないことはないけど、数が増えたり強くなったり上に行くとごり押しは通用しなくなる」
「射程が短いから、こんな水の中まで入ってきたんですね」
「わかるぞ、3匹目を超えたあたりからマジックパワーがすっからかんになってしまう」
「ちなみに、装備によって撃てる魔法が異なってて最初は弱い魔法しかなく、使い込んで熟練度を上げていくと強力な技を覚えていく」
「お金と時間をかけて成長していく武器なんですね」
「そうだったのか強い魔法が使えなくて困ってた」
それじゃあ戦ってみようかとラオに言われ、ルールーたちも杖を構えてフルムーンを追う水柱に向ける。
「詠唱も何もいらない、剣を振るように相手に向けて撃ちだす。溜めればスタミナを使って威力が上がるけど最初は弱い攻撃でいいよ。数を撃って間隔を掴んで」
ルールーとエクレアの杖の先端から放たれる光弾。
1発は水柱をかすり、もう1発は手前に落ちてしぶきを上げる。
「こいつは動きが遅いからいいと思ったけど、狙った場所の飛ばすのは難しいか。エクレアは使ったことあるだけあっていいね、当たりそうだった。とりあえずコツをつかむまで撃ち続けてくれるかな? 大丈夫、マジックパワーがなくなったら私とフルムーンで倒すから」
ラオの指示に返事を返し魔法を撃つ2人。
的となっている水柱のモンスターがあまり動かないが杖の先端を的確に向けるのは難しく、モンスターは目と鼻の先ではあるが外してばかり。
時折、頭の上の魔樹の木の葉が立ち上がりクルクルとルールーの頭の上で舞う。
杖も例にもれず他の武器と同じで攻撃時にスタミナも消費するため、攻撃は散発的で戦っているフルムーンがその間にも攻撃をもらってダメージを追う。
「フルムーンさんがやられちゃう」
「回復アイテムがなくなっても魔法で自分で回復できるから」
ルールーたちの攻撃が当たり始めると水柱に変化があった。
水がはじけたかと思うと水柱のあった水面にパイナップルのようなデコボコのある球体が浮かんでいる。
それを見てラオが叫ぶ。
「混乱した! 畳みかけて!」
フルムーンが球体を突き刺し魔法を2人に教えていたラオもモンスターに向けて杖を向けた。
エクレアは光の弾を放ち続け、ルールーは溜めて大きく威力のある光弾を放つ、ラオも溜め装備の違いによる魔法の違いで生み出された氷柱を降らせる攻撃を放っつ。
数秒して球体はブロックのパズルが壊れるように砕けて行き細い触手の塊となり触手は水を纏って立ち上がる。
「何だったんですいまのは?」
「今見えた球体がスライムの核。触手が水を捕まえて体にするんだ、混乱すると水の守りを解いて本体だけが水面に浮かぶ。この世界のスライムはゼリーみたいなタイプじゃないみたい」
その後も魔法を撃つがとどめはフルムーンが持っていきモンスターとの戦闘は終わった。