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楽しみ

 

 ラオの攻撃と違い、槍で球根部を刺されたモンスターは1撃で倒され枯れていく。


「刺突、弱攻撃でも弱点部位を攻撃するとクリティカルダメージをあたえることのでき、それでいて硬い敵にも有効なダメージを与えることができる。攻撃範囲の小ささと弱点以外に攻撃するとこちらに怯み値が帰ってくる欠点を持つ」


 フルムーンは残りのすべてのモンスターを倒しその場には6つの球根が残る。


「そして魔法、この魔法も例にもれず今行った三種類の攻撃属性を持っている。本日はルールーたちにも魔法のすばらしさを教えてあげようと思います」


 そういって説明を終えたラオとフルムーンは残った球根を拾い上げた。


「今の戦い、魔法使ってたんですか?」

「いいや、杖の攻撃力は低いってのを伝えたかった。最弱だ」


「1匹倒すのもやっとでしたね」

「杖魔法なしで星3クエストのボス攻略する人の動画見てやってみようと思ったけど、私には無理だと悟ったよ」


「いろんな楽しみ方があるんですね」

「ゲームの楽しみ方は、効率重視だけじゃないんだよ。不効率全開も全力での遠回りも楽しい。ソロでの活動や仲間内なら自分が楽しめればそれでいいのさ、ただクリアすることじゃなくて、それをどう楽しむかに意味がある」


 手にしたソフトボールサイズの球根をルールーとエクレアに投げて渡す。


「さぁ、焼いて食べよう」


 ラオはアイテム欄を操作し小さなバーベキューセットのような、三つの足が生えた皿に乗った焚火を地面に設置しラオが球根を乗せると自動で火が着く。


「こんな機能もあるんですね」

「最近じゃどのゲームにもよくあるやつだけどね」


 しばらく焼いていると球根の色が変わっていき、甘い匂いが漂い始めると鉄串で刺して1人ずつに渡した球根と交換し渡す。

 最後にフルムーンへと渡して皆にいきわたるといただきますをして球根を齧る。


「あっ、なんかアップルパイのリンゴの味がします!」

「おいしい。これ、焼かなかったらリンゴの味だったりするんですか?」

「ああ、すごく酸っぱいリンゴの味がするね。焼くと甘くなる、玉ネギみたいに」


 モンスターと戦い倒してこなかったルールーとエクレアはゲーム内での初めての食事にその匂い味触感に驚く。


「果物高いから最近食べてなかったけど、ここだとタダで食べられるのか」

「ゲームだから栄養はないけどね。ちゃんとリアルでも食事を食べなきゃだめだよエクレア」


 黙々と球根を齧るフルムーン。


「フルムーン、おいしい?」

「甘いのはあんまり」


 食事を終え4人は目的地を目指し歩き出す。


「結構大きなものを食べたけどお腹一杯にはならないんですね」

「満腹感を与えると現実世界で何も食べなくなって餓死するからね。まぁ、それでも現実世界の料理がおいしくないって絶望する人もいるけどね」


「ほんとゲームってすごいですね! 現実世界でできないことがいろいろできる!」

「ほんとそれ、カンニング防止のテストや心理カウンセラー、建築モデル、オンラインでの物の取引、医療とかの特殊な職業経験や遊園地の全周囲バーチャルダイブ型のアトラクションなどに活躍してる。元がどこかの国の拷問器具って知らなければ十分楽しめるよね!」


「そうなの?」

「この手のゲームに感触はあるのに痛覚が設定されていない理由だよ。残虐行為の禁止。それでも最近は間隔もリアルにした、男性用の発禁ゲームや痛覚対応の違法ゲームもあるけどさ。さて楽しく遊ぶため変な話はここまで」


 森の奥へと進んでいると次第に緩やかな下り坂となって地面がぬかるみだす。

 マップの地形が変わり枯れた倒木や枯葉しかなかった地面に細い草が茂り始める。


「あの背中に苔の生えたでっかい蟹も食べられるんですか?」

「おっ、食欲がわいてきた? 食べられるよ、蟹の味がする」


「見たままですね、いや蟹の味がしないのはおかしな話か。私、蟹人生でまだ1度しか食べたことないんですよ」

「お、マップ探索しながら食べ歩きでもする? でも、食にふけって狩り続けると謎のモンスターに殺されるな」


「この間その話を聞きました、自然破壊すると出てくる敵。守護者でしたっけ、強いらしいですね」

「ちょっと会ってみたい気もするけど、マップ全体の40%以上の環境モンスターを倒すってのはできないなぁ。倒した奴を食べながらは時間がかかりすぎる」


「1つのマップ広いですからね、何度も来てるのに湿地に行くのは初めてです」

「マップの最奥の場所の1つだからね。さぁ、ついた。ターゲットの妖精を探そう」


 マップの奥へと進み、ターゲットのモンスターがいるとされる湿地。

 水質は悪く茶色く濁っておりそれを覆うように小さな水草が岸付近に生い茂っていた。

 子犬ほどの大きさの蟷螂のような鎌を持ったアメンボが、ルールーたちに気づき水を蹴って逃げていく。

 人の頭ほどある髑髏顔模様のカナブンをラオは拾い上げアイテムボックスにしまった。


「妖精は食べられないんですか?」

「憑依した怪物ごと消えちゃうからね。さて、水の中に入ろう。じゃないと敵が出てこない特殊な条件で現れる敵なんだ。それに魔法も射程距離があるよ攻撃有効射程6メートル、運営が安全圏からの攻撃を絶対許さない度がすごい」


 湿地帯は大きな水たまりのような場所が点在しており水が深い場所ではひざ下くらいまである、4人は1番大きな水たまりの中へと入りバシャバシャと音を立てて進む。

 先行して水の中に入り歩いていくフルムーンとラオ、その後をついていくルールーとエクレアは慣れない足の重さに戸惑いながらも必死についていく。


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