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冒険

 

 立ち止まったルールーを見てラオも足を止める。

 見渡す限り景色しかなく敵の姿はない、ラオは同じ景色を見ながら訪ねた。


「どうした?」

「ここも景色がきれい」


 マップは岩だらけの斜面だったが高いところに上がったこともあり、森を見渡せ遠くに金色に輝く竜巻を見ることができルールーはその景色に目を輝かせる。


「ああ、遠くまで見渡せるし。光の竜巻もここならよく見えるね」

「ここに来るときに谷から空に舞い上がったときのあれですね」


「ああ、向こうに町も見えるね。それで、反対の向こう側には星が上がってから行けるマップの沼地がっ!?」

「せんぱい!?」


 話している最中に急にラオが吹き飛び斜面を転がっていった。

 突然のことだったかが慌ててルールーはラオに駆け寄る。


「どうしたんです先輩!」

「後ろを見て、敵」


 振り返ればこげ茶色の大きな鳥。

 大きさ以外に通常の鳥と違いがあるとすればそこには翼だけでなく前足が生えているということ。

 4本の足でたちルールーたちに向けてカチカチと嘴を鳴らした。


 現れた鳥型のモンスターにルールーは盾を構えて剣を握る。


「戦いますか?」

「こいつは討伐対象じゃない、それにすばしっこくって割と強い。しかも死にかけると空飛んで逃げる。ちょっかいをかけなければ縄張りを出ると追ってこない」


「なるほど逃げましょう」

「そゆこと!」


 2人は走って斜面を下るが鳥は4本足で斜面を駆け降りてきて蹴りをくらわせ、またラオが吹き飛ぶ。


「ぐえっ、回復アイテムが減ってきてるってのに」

「何か悪いことしたんじゃないですか」


「岩場の裏の巣から卵をもらっただけだよ、必要な素材なの」

「間違いなくそれじゃないですか、ほら返して」


「このマップに来ないと巣がないのに」

「ならあの鳥を連れて残り2匹と戦いますか? 強いんですよね?」


「しかたない。持って帰るのは帰りにしよう」


 ラオはアイテム欄を操作する動作を見せ、手に楕円形の黄緑色をした卵を取り出す。

 そしてそれを地面に置いて離れる。


 すると、鳥は器用に前足で卵を掴み羽根をはばたかせながらバランスを取り、2本の後ろ足で斜面を登っていく。

 去っていく鳥を見てラオは大きく息を吐いた。


「ふぅ、びっくりした」

「こっちのセリフです」


 斜面を駆け下りてきた先は景色が変わり他より大きな岩がゴロゴロと転がり落ちている場所。

 家1軒ほどの岩が転がる干上がった川みたいな場所でラオは高い岩の上に上る。


「ここはなんだ?」

「ラオ先輩も知らないんですか?」


「ちょうど、散策ルートから少し外れた場所に窪地があったのか」

「岩しかないですね」


 モンスターの存在もなく安全を確認してから、ラオは鳥に蹴られて減った体力を見て回復アイテムのスプレーを自分にふりかけて休む。


「たぶん岩しかないから外されたんだろうね」

「何かないか探してみます?」


「せっかく来たしそうだね、なんかあったら呼んで」

「はい」


 武器をしまいルールーは岩の転がる地形を歩き回った。

 大きさはサッカー場ほどで大きな岩など障害物も多いことから見回した程度では周囲を確認できないが、広いマップからすれば小さな場所。

 土や草も生えてはおらずモンスターの気配はなく、ただただ白っぽい岩が転がっているだけ。

 近場の岩をひっくり返してみるがその下にも岩があった。


「しかし、まぁ変な場所」


 大きな岩の周囲を1周しラオの元へと戻ってくる。


「何にもないです、モンスターもいませんし」

「そうだね。何かあったら攻略情報にも乗ってるから、ここは何もない思わせぶりなだけの場所か」


「がっかりです」

「さて行こうか」


 なにも見つけられなかったのを名残惜しそうに二人は岩場から離れようとした。

 しかし何かに気が付きルールーは足を止める。


「何か音が聞こえませんかラオ先輩?」

「そうだね……なんか、シューシュー言ってる。どこから?」


 岩だらけの場所へと戻り音のなっている場所を探していると、岩の隙間から白い湯気が噴き出ていた。


「湯気?」

「間欠泉?」


 白い煙ははじめは1本だけだったが、気が付けば別の個所からも噴き出てきてその数は次第に増えていく。


「この辺り一帯がそうなのか」

「ダメージ受けるんですかね?」


「ちょっと触ってみる」

「気を付けて」


 恐る恐るラオは白い煙に近寄っていき触れる。

 指先で煙に触れ、手を入れ、最後に体で浴びてみた。


「あったかいけどダメージはないみたい、ただのフィールドギミックかな」

「なるほど、時間経過で起きるイベントですね」


「それだけみたい、特に効果はないや。写真コンテストにはここを使おうかな」

「そうですか、でもこういうのも都会で暮らしていると見れないから面白いです」


「いや、田舎で暮らしててもこういう景色はなかなか見れないと思うよ」


 いたるところから白い煙が噴き出し視界が湯気まみれになってきて、二人は煙の中から出る。


「すごいね真っ白だ」


 ふいに空が暗くなり、空を見上げるとフワフワと浮かぶ白いの泡の塊のようなクラゲのような物体が飛んでいた。

 それが湯気に吸い寄せられるように森の方から飛んできていた。


「また変なモンスターがきました」

「お、未発見のモンスターだ。スクショしておこう」


 離れたところで見守っていると最終的に10匹ほどが空を漂ってきていて、クラゲのモンスターは長い触手を伸ばし湯気の中へと突っ込んでいる。


「湯気を食べてるんですかね?」

「不思議な光景だ。このモンスターは強いのかな」


「やめておきなさい。ここまで来てクエストリタイヤはいや」

「確かにそうです」


 次第に湯気の量は減りはじめると、クラゲのモンスターもその場を離れはじめ森へと帰っていく。

 ルールーたちも残り2匹のモンスターを探して歩き出した。


 水辺で最後の2匹を見つけて、見つからないよう岩陰を使ってそっとモンスターに近寄る。


「見つけた、また2匹同時に戦うことになる。1人1匹、ルールーは戦える?」

「大丈夫です行けます!」


「よし、行こう!」


 二人は剣を抜き飛び掛かった。

 背後からの不意打ちに驚き立ち上がるモンスター。

 溜め攻撃と正面から戦わないための回避、手に入れた盾のガードで攻撃を受け止めルールー。


 連撃からモンスターには斬られた跡がたくさん残りダメージ数値が重なるように表記される。

 攻撃力が上がっているうちに強攻撃で一気にダメージを与え、スタミナが切れる前に回避で距離を取った。


 ラオの援護がなくてもモンスターを倒し切りルールーは大きく息を吐く。

 いまだにモンスターと戦っているラオに加勢しようとしたが、加勢に入る前にモンスターは倒され消滅する。

 その場に残るは勝者とドロップアイテムだけ。


「だいぶ戦い方がうまくなったね、これなら受けられるクエストが星1になっても大丈夫そうだ」

「最初に戦ったやつより動きが遅かった気がします?」


「個体ごとにランダムなパラメーターがふられてるんだ。同じモンスターでも足が速いやつや体力が多いやつとかバラバラにね」

「動きが遅いと戦いやすかったですね」


「次はどのクエスト受けようか」

「ラオ先輩がいるなら難しい奴とかがいいですね、今日一気に進めたい」


「任せて」

「お願いします」


 二人はアイテムを回収し、その後ラオは鳥の卵を取りに行って帰路につく。

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