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集団戦

 

 話している間にも二人に向かってノソノソと歩いてくる四足歩行のモンスター。

 大きな口を持つカバのような姿をし小動物のような黒くて丸いつぶらな瞳が4つ。


「さて、あいつをかわいいといってられるのも今だけだよ。無害な動物に見えるけどあれも妖精だ」

「妖精……、妖精ってなんですか?」


「ゲームの設定だと妖精は形を持たない生き物として漂い、それに入り込まれた生き物は好戦的になって同族を殺し森を破壊する。これは排除と調査するものとして私たちがいる、自然破壊や動物虐待で批判を受けないように考えたんじゃない? ほら、悪魔とかゾンビとか怪獣が敵のゲームが多いでしょ、これも憑依の類だよ。乗っ取り転生ファンタジー」

「ファンタジーなSFだと思ったらホラーまで入ってきましたね。というか調査ルートってこの謎の現象を調査するんですか?」


「それだけじゃないよ、遺跡や遺物の収集、生態系や未確認のモンスターの調査が仕事さ。通常ルートの話だけどね」


 お喋りをしながらも敵の接近に2人が身構えると四足歩行のモンスターは立ち上がった。

 立ち上がったシルエットは太った熊の様な見た目だがその顔に顎はなく口はだらりと開いたまま、口の奥で人の腕のような形をした小さな舌がのたうっている。


「ラオ先輩、こいつきもいです! きもいです!!」

「さぁ、倒すぞ。とはいっても、まず私がお手本を見せるよ下がっててルールー」


 そういってラオは剣を構え1人モンスターへと近寄っていく。

 モンスターは大きな口を広げラオを丸呑みにしようとするが、それを回避で躱し背後に回り剣を高く上げた。


「じゃぁ、よく見ててね」


 ラオは攻撃を躱され倒れたモンスターの背中を剣を片手で持ち、素早く斬りつけダメージを負わす。

 斬りつけダメージを追わせた場所は色が薄くなる。

 起き上がり背後に回ったラオにモンスターは振り返るが、しかしモンスターの再び背後を取ると突き刺し斬り上げた。


「まずは剣を振り上げる、そしてその姿勢のまま力を加えると」


 他人の攻撃はダメージ表記が出ずルールーには与えたダメージを見ることはできないが、離れた場所でラオの行動を見よう見まねで剣を振り上げ振り下ろしステータスの上昇とスタミナの減りを確認する。


「スタミナが1減りましたよラオ先輩」

「そうだよ」


 ルールーの返事を聞いてラオは頷く。

 ラオは戦い慣れておりスタミナが切れる前に回避で距離を取って休み、モンスターが攻撃範囲に入る前にまた攻撃を仕掛けた。


「ステータスを見れば攻撃力が上がっているのがわかるだろう。溜める時間が長い分スタミナが消費されその分威力が上がっていく。攻撃力が上がっている時間は2秒、その間は弱攻撃でも十分大きなダメージを出せる」

「おお~」


 立て続けに連撃を食らわせラオはスタミナ回復のために距離を取る。

 ルールーへの説明しながらということもあり、攻撃の頻度は高くないがモンスターの攻撃を極力受けないように戦うラオ。

 攻撃を受けてもすぐに距離を取り回復薬を使ってまた剣を振る。


「まだ不確かだけど溜めは会心率の上昇があるって話、でも槍使いの支援魔法で攻撃力アップを使ってもらった方が効果時間も長いし楽だけどね」


 戦っている中型のモンスターは近場にいる相手を狙う様で、離れた場所でラオの真似をしながらみているルールーにはまるで襲い掛かる様子はない。


「そうすると攻撃したり回復させたり支援したり槍使いって大変ですね」

「そゆこと、次は回避かな」


 モンスターを翻弄し飛び跳ね踊るように戦うラオ。

 ルールはその姿に感心し見惚れていた。


 --ゲーム慣れしてるとあんな動き出来るようになるんだ。


 しゃがみ飛び上がる余波を見抜き、ラオはモンスターの攻撃範囲から大きく距離を取ってそのあとモンスターの攻撃によって地面が揺れる。


「範囲攻撃や大きな攻撃の前には大きな予備動作があるそれらを見逃さなければ回避は容易い。小さな攻撃は腕や足など攻撃に使われる部位から離れていればそもそも攻撃を受けないが、それでもどうしても正面から戦わないといけないときは1撃離脱がいいかもね。今言った溜めからの強攻撃でそのまま回避、モンスター相手ならこれでも十分対処できる」

「なるほど」


 少しずつ戦いながらルールーから離れた位置にモンスターを誘導するラオ。

 十分に離れると1度ラオはモンスターから大きく距離を取る。


「あとはこれかな。何度か戦っているならわかってると思うけど、攻撃に種類があるように回避にもっ!」


 そういって前に踏み込み剣を突き出すラオは、四つん這いになって追ってきたモンスターの頭を貫く。


「順番が狂っちゃった。こいつ250くらいしかヒットポイントないしね、こんなもんか」


 モンスターの体力を削り切ったようで無数の傷跡を受けたモンスターは、最後に咆哮を上げて倒れドロップアイテムをまき散らして消滅する。


「今のは回避に威力を乗せた攻撃、言い方少し変だけどね」

「回避ってなんでしょう」


「でも私、昔、部屋に虫出たときバックステップで様子見にた弟を吹っ飛ばしたことあるから攻撃方法で会ってるでしょ」

「かわいそ」


 散らばったドロップアイテムを回収しラオはルールーを呼ぶ。


「素材しか出なかったか、装飾品のドロップ率はやっぱり悪いな。ルールーもアイテム回収しちゃって」


 アイテムを確認したラオがつぶやくと、近寄ってきたルールーのアイテムの回収を待って話しかける。


「回避は前後左右に移動する、大きく1歩、それより移動距離の大きいステップ、他より無敵時間が長いダイブの三種類。消費するスタミナは後者に行くにつれ大きくなるし移動できる距離も無敵時間も長い。あと、回避は攻撃をもらってダメージを受けても防御同様にノックバックを押さえられる」

「無敵時間? 無敵になれるんですか?」


「ずっとなわけないでしょ、一瞬だけ攻撃の当たり判定が消えるんだよ。私が動画で見たうまい人だと1歩の踏み出しだけでほとんどの攻撃を回避してた」

「ゲームを全くしない私にはそれがどれくらいすごいことなのかわかりません」


「まぁ、戦っていればそのうちに気付くさ。つっても調べないとこういう攻撃方法もわからないんだよなぁ」

「でもラオ先輩の戦いを見ていて私も戦いたくなってきました」


「いままで戦闘系のゲームをしてこなかったのが不思議なくらいに好戦的な子だ」

「五月蠅いですラオ先輩、ラオ先輩のせいです。ラオ先輩を斬ります」


「こりゃPVPサーバーを進める日も近いかな?」

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