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帰宅

 

 アイテム屋で回復アイテムを買い次にフルムーンに案内されてやってきた店は家具屋。

 先ほどの露店と違い、遺跡と同じ石壁の建物の中に普通の店として存在していた。

 展示されているアイテムも大きく、そして宝箱に入っておらず店の地面に置いてある。


「ここは?」

「自室に飾る道具、家具? を売ってる場所。家の中だけじゃなくて花壇や庭石など家の周りにも飾れるものもあるけど」


「それらは何に使うんですか?」

「家が華やかになるってのもあるけど、ギルドを作ると飾るアイテムに応じて能力にバフが付くようになる」


「ばふ?」

「能力の向上効果のこと。他にも装備を作ったり、回復アイテムを作ったり、素材を育てたり、自分にバフを付与する食事を作ったりする道具もある」


 店の中にはオブジェや鉢植え、額縁やフルムーンが言っていた何かを作る道具などが並べられている。

 薬を調合するための実験機器や料理をするための調理器具など、何かしらの目的に特化した形の道具が見て取れルールーはそれらを見た。


「素材を育てて道具を作れば、お店で売れますね」

「その通り、大手のギルドはそうやってお金稼いでるよ。今言った製造系のアイテムは高いから個人じゃよほど溜めないと買えないけどね。それもギルドホームでしか置けないし」


 家を飾るための家具といっても壁にかけるものや小物、大きなオブジェなどジャンルが多く、家具屋というよりいろんなものを売っているリサイクルショップといった印象。

 ガラスのようなもので作られた壺を見ていたルールーが尋ねる。


「じゃあ何しに?」

「普通に殺風景の家を飾り付けてみようかなって、PVPサーバーはそういうことしてこなかったから。安い小物なら1つくらい買って飾れるでしょ」


 見て回っていると店の奥に何らかのモンスターを模したぬいぐるみが並んでいるのが見える。

 動物型、植物型、奇怪な形のモンスターなど複数のぬいぐるみが並べられていてルールーとフルムーンはその1つ1つをじっくり見ていく。


「向こうにぬいぐるみが置いてありますよ、あまりかわいくなさそうだけど」

「ああ、ボスモンスターのぬいぐるみか。この先戦うモンスターたちだよ」


「あ、かわいいのもある」

「それさっき戦った瓢箪型のモンスターじゃん……かわいい?」


「かわいくないですか?」

「感性は人それぞれだからなんとも」


「お、安い。ちょっとこれ買ってきます」

「行ってらっしゃい」


 二人は買い物をして帰る。

 町を出て霧に囲まれた道を抜け戻ってくる自室。

 部屋の中には石のテーブルはあるものの椅子はなく二人は落ち葉の積もった床に座る。


「このテーブルや落ち葉の床もなんとかできるんですか?」

「もちろん、テーブルと絨毯の枠に替えがあれば好きなものに変更できる」


 石のテーブルの上にルールーは買ってきたぬいぐるみを置く。

 瓢箪型のモンスターのぬいぐるみを持ち上げそれを抱きかかえる。


「昔やってたスローライフものみたい、懐かしいなぁ」

「全くゲームをしないわけでもないんだっけ?」


「最近は全く触れてませんでしたけどね、これも兄のゲーム機を借りてプレイしてます」

「そっか、ルールーこのあとの予定は?」


「とくには……あ、宿題あるからもう少ししたら落ちるかもです。何かありました?」

「いや、クエストいっぱい受けてルールーのレベル上げでもしようかなって。嫌だったり無理ならいいんだよ」


「なら時間が来るまでお願いします、フルムーンさん」

「よし来た」


 ぬいぐるみをテーブルの上に戻しルールーは鏡の前に立つ。

 クエストで手に入れたドロップした装飾品のアイテム身に着けてみるため。

 視線を端に寄せアイテム欄を見る。

 ・魔樹の木の葉。


 二つ手に入れたうちの片方は装備欄になく、とりあえず身につけられるほうの装飾品を選択する。


 --もう1個の琥珀は素材だったか~。


 ルールー頭の上に葉っぱが乗った。

 ありきたりのその辺の木にくっついているような普通な葉っぱ。

 力が湧いてくるとか特別何かが変わるとかもなく、葉っぱは赤い髪の上に乗っているだけ。


 --変身する前の狐や狸みたい。う~ん、似合わないな……。


 かわいいわけでもなく頭の上にゴミが乗っている印象を受けたので、すぐに魔樹の葉を頭から取り鏡から離れるルールー。

 それをじっと見ていたフルムーンが話しかけた。


「さっきの戦闘でドロップした? それ魔樹の葉だよね、ラオが見たら羨むだろうな」

「私、多分この装備を使いませんし、先輩にあげられないんですか? お店では売っていましたけど?」


「ラオが許さない、そういうところだけプライドが高いから。レアアイテムをもらうのは動画受けが良くないらしい」

「厄介な先輩だ。フルムーンさんは手に入れた装飾品とかつけていないんですね?」


「頭装備が出てこないだけだよ、一応はボクも身に着けてる」


 そういってルールーに向かって手を広げて両手を見せる。

 二つの指輪にブレスレットが1つ身につけられていた。


「指輪は二つともスキル未解明。腕輪は一定確率で回復魔法での回復数値の上昇と攻撃力の低下」

「指輪の能力は未解明なんですか?」


「そうだよ、このゲームは調べる、集める、伝えるがテーマらしいからね。装備や素材に名前はあるけど、モンスターにも土地にも名前がない。チュートリアルが終わったら普通のプレイヤーは何も知らない世界に置き去り」

「そういえば、私はチュートリアルすらなかったですね。でも、それだと不親切だといわれそうですね、大丈夫なんですか?」」


「フレンドと一緒にしているとイベントスキップされちゃうからね。攻撃、防御、回避と移動、採取、プレイ操作自体は難しくないからね。慣れてきたころにはお店の買い物やマイルームのカスタムとかのこともわかってくるでしょ」

「スキルとかわからなかったら不便そうですけどね」


「でも何となく能力はわかるもんだよ。ボクの装備してるこの指輪、多分だけど回避率上昇関係とスタミナの減り軽減関係の何か、マイナスは確率で受けるダメージ増加かな」

「へぇ、すごい」


「まぁ、ひと昔は攻略情報もスキルも公開されていなかったら炎上しそうだけど。今は情報が簡単に手に入る時代、どこかに調べる人はいてそれを教える人がいる」

「そういえばラオ先輩は、攻略情報見てるんでしたっけ」


「そうそ、考察、攻略、検証、解説などの動画や掲示板、今は簡単に情報を共有できる時代。まぁ、運営も公式チャンネルで少しずつ情報公開してるし」

「とすると攻略本はネットにあると。ペーパーレスな時代になってきましたね」


「そもそもスキルに頼らなくても十分戦えるようになってる」

「なるほど」


 フルムーンとルールーは部屋を出て再び町へと向かう。

 そして疲れるまで遊んだ。

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