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買い物

 

 二人が出ると扉は自動で閉まり入れなくなった。

 そんなコンテナと遺跡の壁を見比べながら呟く。


「この世界なかなかハイテクですよね、武器はファンタジーなのに」

「鉄砲が撃ちたかった? それとももっと中世の騎士風な感じのが良かった?」


「いいや、生々しいのは怖いから血が出ないこれでいいんですけど」

「さて、お金もあることだし町に行こう。ルールー、町はもう散策した?」


「いいえ、戦いたかったので真っすぐこの建物に行きました」

「ルールー実は意外と好戦的?」


「ラオ先輩の足を引っ張らないように少しでもゲームに慣れようと思って。後この間見た景色がきれいだったからもっといろんなところに行きたくて」

「そう、よかったこのゲーム気に入ってくれて。さっきのマップも綺麗な場所があるから次クエスト行くとき教えてあげる」


「ありがとうございます、フルムーンさん」

「いえいえ。このくらいならいつでも付き合うよ」


 2人は遺跡の町に並ぶ露店に向かう。

 立ち並ぶ店には必ず行商人が1人座っていてテーブルの代わりに宝箱が並べられている。

 プレイヤーが行商人と会話しているのを見て、ルールーは一緒に露店を散策して回るフルムーンに話しかけた。


「このゲームちゃんと人もいたんですね」

「彼らもプレイヤーだよ、ゲーム内で物を売買するプレイヤー。大きなギルドとかに入ってる人で、みんなでアイテムを集めてそれをこうやって新人やソロプレイヤーに売ってるの」


「そんなゲームの仕方もあるんですね」

「このゲーム、ギルドには維持費がかかるからね。手に入れたいらないものを売って稼ぐのが手っ取り早い。課金という手段もあるけど」


「アイテムを安く売ってくれる店があると嬉しいですよね」

「初期に手に入るものはいっぱい集まるからどれも価格が低くて安定してけど、レアアイテムは価格が高い。上に上がるソロプレイヤーはできるだけ安いレアアイテムを探すのが大事になってくる。じゃないと何度も同じクエストを受けて素材を集めないといけなくなる」


「メビウスさんみたいな?」

「そうそ、あんなかんじ」


 宝箱に触れるとアイテム欄が開かれ販売している商品の一覧とその価格が出た。

 商品の種類も店によって異なり、数は1つしかないものから999個売っているものまでバラバラ。


「フルムーンさん、どの店でも回復アイテムは安いですね」

「栽培やクエストでいっぱい手に入るからね。あ、ここではアイテム買わないでルールー。ここの値段は少し高い、他の店を見よう」


 店によってアイテム欄に表示される商品リストが変わる。

 それらは種類別に分けられたり、安い順に並べてあったり、目玉となるレアアイテムが1番上に来ていたりしていた。


「装飾品も売ってる店もあるんですね」

「お金に困れば売るかもね。ボスからしかドロップしないから集めるのは大変だし、それにまだスキルのわかっていないものも多い。下手に売ってレアスキルが付いていた場合、ショックが大きいからスキルがわかっているもの以外はほとんどは売られていない。値段も他のと違って高額でしょ」


「確かに6桁、今の私じゃとてもとても」

「装飾品は売る側も買う側もリスクが高い。それでも見た目がいいから買うって人もいるけどね、見た目重視でファッションとして。このゲームはキャラクター目線だから身に着けているものがしっかり見える、同じように他人が身に着けているものもね」


 一つ一つ店を見て回っているルールーとフルムーン。

 そんな中、回復アイテムも素材アイテムもボスからドロップする装飾品もバラバラに並べられた店に出会った。


「ここは……見づらい、種類別に分けて並べてくれればいいのに」

「この店はアイテム並びが無茶苦茶、ここはやる気がないなぁ……。あ、価格ミスってる買えるだけ買っておこう」


「酷い、教えてあげないんですか?」

「価格設定は3回確認を取ってくる、よく確認もせずイエスを連打した結果だよ」


 話ながら手元を動かしアイテムを購入するラオ。

 ルールーもそれに習って回復アイテムを買う。


「フルムーンさんはこのゲームのこと詳しいですね」

「リリース日、三か月もプレイしてるからね。それにここじゃないサーバーではギルドにも入ってるし、ギルド事情もよく知っている」


「ほぉ、ギルドに!」

「ラオは攻略情報とか見てるからこういうことより、装備とか隠しスキルとかに詳しいのだけど。ギルド関係はボクの方が詳しい」


 立ち並ぶ店を見て回っていると変わった店を見つける。

 並べてある宝箱の向こうにいる店主は微動だにせず、ただ何もない虚空を見つめて佇んでいた。


「フルムーンさん、あの人は何を?」

「店番、ログアウトすると店の権利消えちゃうからログインしたまま放置してある。花見の席取りみたいなものだよ。ここですることは買いに来るプレイヤーとの雑談か、仲間から送られてくるアイテムを販売用のアイテムボックスへ入れて商品の補充くらいしかないからね。アイテムを集めることもレベル上げもできない退屈な役回りを押し付けられるとこうやって何人か魂が抜ける」


「このゲーム、魂抜けちゃうんですか」

「ゲーム機外して放置してあるっていうべきか。多分この人は今頃、寝てるか他のゲームしてるかそもそもゲーム機の近くにいないかも、ゲーム起動しているだけ」


「わぁ……」

「ギルマスならメンバーへの指示とかすることあるんだけどね。一定時間操作していないと眠ったか回線が落ちたと判断されて、強制ログアウトさせられるからたぶんちょくちょく視線を動かしてたりするんだろうけど……。あ、ここ回復アイテム安いよルールー、多めに買っておきな」


「さっきの店と1円しか変わらないですけど?」

「その1円が、後々積み重なって大きくなっていくのさ~」


「ラオ先輩っぽい言い方」

「真似した、伝わってよかった」


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