勝利
あとからフルムーンが槍を構えモンスターに向かって魔法を飛ばす。
槍の穂先から離れた紫色の光線が瓢箪を生み出す大木のモンスターに当たり、体を揺らし逃げるモンスターの足が遅くなる。
「移動速度低下!」
「了解!」
すぐさま構えなおし槍を突き立てるフルムーンが叫び、即座に追いついたメビウス8が渾身の一撃を振り下ろし返す。
「なにが!?」
モンスターを追うことに夢中になっていてモンスターが魔法がかかったことがわかっていないルールーが周囲を警戒しながらとりあえずモンスターに向かって剣を振る。
囲まれ逃げるのをやめた大木モンスターは足を止めると、また瓢箪モンスターを呼び出した。
「また出してきたか」
「斬ります!」
「スタミナに気を付けろ!」
「もちろん!」
瓢箪型のモンスターの出現にスタミナが切れる前に後ろに下がるルールー。
自分のスタミナの減りを確認していたが、1度の攻撃でスタミナが1減ったり一気に3減ったり又は一つも減らなかったりと不規則にスタミナが減るため首を傾げた。
「スタミナ、きれるのが早い」
瓢箪モンスターが3匹迫ってきてまとめて倒すため剣を横薙ぎに振るうが、それでまたルールーのスタミナが5も減る。
「全然スタミナが回復できない」
ルールーに受けたダメージの表記と甘い香りを残して消えていく瓢箪を見て、あることに気が付く。
それは一撃のダメージの大きさ。
「これ、ダメージの大きさでスタミナの減り変わるのか」
ルールーがいなくなり1人で大木と複数の瓢箪モンスターと戦っているメビウス8。
フルムーンはメビウス8の回復のため攻撃に回れていない。
急いでルールーはメビウス8のもとへと駆け寄り群がる瓢箪を倒す。
「すみません」
「こっちに攻撃が集中したから、やられちまったかと思ったぜ」
ダメージの大きいメビウス8と入れ替わりに、彼は後ろに下がり回復アイテムで減った体力を回復する。
戻ってくるまでのその間ルールーは瓢箪型を倒し切り護衛のいなくなった大木に切りかかった。
--攻撃の威力でスタミナの減りが変わるのなら。
持ち方を変えルールーは片手で剣を振る。
反撃の無い大木に与えたダメージは3。
「今までよりダメージが低い」
しかしルールーのスタミナは減らない。
--スタミナの減りは攻撃の威力に関係してるんだ!
次は両手で剣を持ち斬り上げる。
与えたダメージは7でスタミナは1減った、それを見てルールーの中に問題を解いたときのような閃きが走った。
「最後の確認!」
両手で剣を握り全力で振り下ろす。
ダメージは17、スタミナは3減った。
ルールーの攻撃でヒットポイントがゼロになった大木は、アイテムを花火を打ち上げるようにして複数ドロップしその下で朽ちるエフェクトを伴って消える。
「あ」
最後の一撃がとどめとなって大木モンスターを倒したことにルールーは自分でも驚く。
すでに瓢箪型のモンスターはすべて蹴散らしてあるため周囲に襲い掛かってくる敵はいない。
回復アイテムを使いながらフルムーンがドロップしたアイテム回収のため近寄ってきた。
「何が最後の確認だったの?」
「スタミナの減り方のです、剣の持ち方でダメージが違うから色々試してみてたんです」
「楽しんでるね」
「はい!」
「このゲームのコンセプトは自分で探すってことらしいから、いろいろ試してみるといい。何かしら新しい発見があるかも」
「わかりました」
楽しそうに話すルールーを見てフルムーンがほほ笑む。
「俺が回復している間に戦闘が終わってたか」
「はい、とどめ刺しちゃいました」
「ならもう終わりだね、アイテムを回収して町に帰ろう。魔法を使い過ぎてボクはいま魔法が使えない状態だから、回復は自分でしてね」
フルムーンとメビウス8がアイテムを拾い、最後にルールーもドロップしたアイテムを拾いアイテムを確認した。
・太陽琥珀。
・魔樹の木の葉。
・軽煙木材×8
・骨鉄×4
色が付いているアイテムが上の二つ、複数手に入れた素材と思われるものは白い文字で表示されている。
--色が付いているアイテムが二つも! 装飾品とか武器の名前じゃないから今回は何かの素材かな。
目を輝かせ笑みを浮かべるルールーをみてフルムーンが嬉しそうに話しかけた。
「うれしそうな顔してる、いいもの手に入れたのルールー?」
「わかりません、何かの素材みたいな名前のものが二つ。武器作るのにいっぱい集めないといけないんですかね?」
「ボス……あれは中ボス未満レベルだけどね。素材は武器や装飾品を作るのに必要だから集めておいて損はないよ、お金必要になったら商店で売れるし。装飾品はすぐにでも装備できるから、スキルがわかるまでは付けていても損はないかも」
「こちは素材だけどこっちは装飾品なのか……じゃあ手に入れたこれも身を飾るものなのかな」
「傷跡や入れ墨とかは専用のお店でできるけど。指輪とか髪飾り、後は武器や防具はボスを倒してドロップしないとない」
「そうなんですか?」
「装飾品にも隠しスキルが入ってるから装飾品集めも大事」
「意外とすることが多そうですね」
「あんまり詳しくないけど、ラオは魔樹の木の葉っての探してる」
「へぇ……」
「隠しステータスで魔法攻撃力が少し上がるらしい。もしかしたら近々ドロップするまで付き合わされるかも、ハクスラ苦手だ」
「はすくらって何ですか?」
「ハックアンドスラッシュの略。ストーリー身が薄くて戦闘に重きを置かれたようなゲームに多くて」
「このゲームのことですね?」
「人によって意味は変わって来るけど、ボクが言いたいのは何度もモンスター倒して強いアイテムを探すタイプの、魔樹の木の葉みたいに能力値を上げるような欲しいアイテムを狙って何回も戦って手に入れ。それで、より強い敵と戦いよりいいアイテムを探す。そういう感じの意味」
「強いアイテムを持ってるモンスターを倒すために、欲しいアイテムを持ってるモンスターを倒すんですね。それがハクスラ」
「うん、ボクが言いたいのはそんな感じ。このゲーム、アイテムが多いから目的のアイテムが全然出ないんだ……。最悪、集めたいらない装飾品を売って町で目的のものを買った方が早く楽に手に入る……」
「ああ……」
遠い目をするフルムーン、今偶然にも手に入れたとは言うまいとそっとルールーはアイテム欄を閉じる。




