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六章 「彼」との出会い

 会場から出た私達は、ただ沈黙に包まれていた。

「……すみません。少し、席を外します……」

 私は一人、その場から離れる。

 ――あぁ、私は本当に、人を殺してしまったんだ……。

 私の投票で、ミヒロさんは死んでしまった。もちろん、その罪は背負うつもりだ。今までとは違い、私は「故意的に」死なせてしまったのだから。

『さ、参加者の方は、五階に上がってください……』

 シナムキの放送が聞こえ、私はロビーに向かう。そこには次の階へ続く階段が現れていた。

(そういえば、隠し部屋……結局行かなかったな……)

 まぁ、いいやと思いながら、私は他の人達を待つ。五分もしないで、皆が集まった。

「じゃ、行こうかー」

 ケイさんが明るく振舞う。しかし、そこに僅かな陰りがあることを見逃さなかった。

 マミさんは、私とどう接したらいいか測りかねているように見えた。ゴウさんも、何を言うべきか悩んでいるようだ。フウやキナも、心配そうに見ている。……当然だ、私の投票のせいで殺された人がいるのだから。

「スズエさん」

 そんな中、ユウヤさんだけは私に話しかけてきた。

「あまり、気に病まないでね。君にだって、何か考えがあってやったことだろうから……」

「……いえ、お気になさらず……」

 そう言われてももう、何もかもに疲れてしまった。

 ――確かに、考えがあってやったことだ。

 私は、不思議なことに複数の未来を見ることが出来るのだ。あの成雲家のお嬢様のように遠い未来は見ることが出来ないが、そのかわり自分でコントロールが出来て、どのように動けばいいか分かる。

 それが、このデスゲームに強制参加させられる前は数時間後のものまでしか見えなかったのに、今では数日後まで見ることが出来るのだ。

 その先の未来を見て……さらに、絶望したのだ。だからもう、これ以上は使わないのかもしれない。

 これ以上失うぐらいなら……もう、生きたくない。

 その先に進んでいくと、暗い場所に出た。中心には……。

「石碑?」

「そうですね……何でこんなところにあるんでしょうか?スズエさん」

 キナに聞かれるが、私も首を横に振る。いよいよ外か室内か分からなくなってくる。いや、室内であることは確かだけれど。

 すると、一つの箱が出てきた。それは……。

「棺だね……」

 ユウヤさんの言う通り、それは棺だった。私は恐る恐る蓋を開ける。そこには見覚えのある男性が眠っていた。

 それと同時に、他のところにも棺が現れ始める。その数は……七個。私は一つずつ調べていく。

 そこに眠っていたのは、被害者ビデオに映っていた人達ばかりだった。キナの姉はいないことが、唯一の救いだろう。外傷も……特にないようだ。これは一体……。

 私は最初に開けた棺の中の男性を調べようと顔に明かりを持っていくと――彼は目を開けていた。

「ひゃあ!?」

 私は思わず悲鳴を上げてしまった。「だ、大丈夫かニャン!?」とフウが駆け寄ってくれた。

「だ、大丈夫……いきなり動き出したから驚いただけだ……」

 心臓がバクバク言っている。久しぶりにここまで驚いた。

「やぁ、スズエさん」

 その緑髪の男性が起き上がってくると、私の名前を言った。私が彼の顔をまじまじと見て茫然としている間に、他の棺からも起き上がってきた。

「最悪な目覚めね……」

 そう言ったのはあのフードの女性。彼女はため息をつきながら私の方を見ていた。

「やってやんねぇよ……」

 ぼやいたのは学ランの男子。どこかけだるそうで、何も興味がなさそうだ。

「は、早く帰してくれ……」

 懇願したのはスーツ姿の男性。気弱そうで、私の方を見て怯えているように見える。

「キャー!スズちゃんだー!」

 私を見てなぜか喜んでいるのは焦げ茶色の女性。なんでこの人はこんなに喜んでいるのだろうか?

「なんで俺らがこんなことを……」

 そう言うのは、帽子を被った真面目そうな男性。真面目そうだが、警戒心が強そうで疑り深い人かもしれない。

「今更あがいても無駄よ……」

 諦めている様子なのは小学生ぐらいの女の子。こんなに幼い子がここまで達観するものだろうか?

「フン。誰の相手をすればいいんだ?」

 不敵に微笑んでいるのは、褐色の男性。どこか分かりやすくて、正直こちらが心配になるタイプだ。

 いや、私からすればそれどころではない。

「スズエさん、ボクのこと、覚えてるかな?」

「……アイト?お前、高雪 愛斗だよな?」

 そう、この緑色の髪の男……私の知り合いの、アイトだったのだ。幼馴染で、小学に入学した後しばらくして引っ越してしまった……。

「そうだよ!いやー、久しぶりだねー!」

「何でここに……?」

「だって、ボクがここのフロアマスターの人形だからね!君も聞いただろ?ボク、松浦 実弘に殺されたんだって」

 確かにマミさんからそう聞いたが。あれは、本当のこと?

 ……あれ?

「……えっと、お前、いつ殺されたんだ……?」

「三年ぐらい前だったかなー?」

「ちょっと待て。私、去年の夏休みの時、お前と会ってるよな?」

 うっすらとだが、そんな記憶がある。それだと計算が合わなくなるのだが。あのアイトは、一体何だったというんだ?

「うん、そうだね。その時にはもう人形だったんだよ、ボク」

 それを聞いて、私はキョトンとしていた。驚きで何も言えない、というのはこのことを言うのだろう。それほどの衝撃だった。でも確かに、思い出してみればほとんど飲食はしていなかった気がする。

 つまり、このデスゲームは少なくとも三年前から計画されていた……ということになる。

「あはは!スズエさんの驚いた顔、久しぶりに見た!」

「これ以上彼女をからかうのはやめてくれる?アイト」

 ケラケラとアイトが笑っているとそこに、ユウヤさんが私を庇うように立った。

「あれ?ユウヤだー!あはは!君もいたんだね!」

「ユウヤさんも、アイトと知り合いなんですか?」

 私が聞くと、アイトの方が「うん!そうだよ!」と答えた。

「いやー、嬉しいなー。あとはここにシルヤ君とエレンとシンヤがいたらよかったんだけどなー!」

「…………」

 確かにアイトはシルヤのことも知っているが、兄さんとも会っていたのか……。

 だが、シンヤとは誰だ?ユウヤさんの方を見ても、よくは分からなかった。

 そんな思考を巡らせていると、アイトはニコニコしながら宣言した。

「まぁ、無駄話はここまでにして、早速ミニゲームを始めようか。ヒトゴロシゲームをね!」

 ……は?何を言っているんだ?こいつ。

 しかし、アイトはそのまま生き生きと進めていく。

「ペアになって、ボクを殺したらクリアだよ!簡単でしょ?

 それじゃあ、ペアを発表しまーす!」

 アイトが言うと、皆の首輪がなった。そこから赤い糸のような光が伸び――学ランの男子の首輪に繋がった。

「これは……?」

 ペアと言っていたが、なんの……?

「君達にはこれから「人形達」と一緒に行動してもらうよ!あー、でも、ボクもう「アイト」って名前は使えないから、スズエさんが代表してボクに新しい名前をつけてよ」

「私?なんで私を指名するんだ」

「好きだから?」

「気色悪いからやめろ」

 にっこりと笑うアイトに少し「いらっ」と来た。私は少し考えて、

「……ざっそう?」

 冗談めかして言った、つもりだったが。

「本当にその名前を名乗っていいのかい!?」

「ごめん悪かった謝るからやけくそになるな」

 なんと、喜んで名乗ろうとしたのだ。まさかこっちが止める立場になるとは思わなかった。

 こいつ本気で「ざっそう」と名乗るつもりだったのか……?

 確かにこいつ、どこかヤンデレサイコパス気質はあったが……。

「えー?じゃあなんだったらいいのさ?」

「お前は子供か」

 いや、犬か?まぁこの際どちらでもいいが。というより、子供と比べるのが失礼だ、子供に対して。

 ……緑の髪、か……。

「グリーン、なんてどうだ?」

「ボクは構わないよ。いやぁ、いい名前をもらったなぁ!」

「それは当てつけか?」

 名前にするには割と適当の部類に入ると思うのだが。まぁ、本人がいいならそれでよしとしよう……。こいつに何言っても無駄だし。

「ほら、ボクにも名前がついたことだし。お互いに自己紹介してねー」

 アイト改めグリーンが私達にそう言う。皆は顔を見合わせて、どうするか悩む。

「……私は森岡 涼恵。高校生だ。スズエでもスズでも、好きに呼んでくれ」

 誰も言いだそうとしないので、代表して私から名前を言う。

「オレは秋原 蘭。お前と同じ高校生だ」

「よろしく、ラン」

 それを合図にするように、他の人達も自己紹介を始めた。

「わ、私は中松 廉人だ……」

「ぼくは珠理 風だニャ!よろしくニャ!」

「俺は三代 孝だ。お前、筋肉少ねぇな。鍛えてやろうか?」

「遠慮するよ……。ボクは祈花 佑夜」

「俺は霜月 怜。一応、大学生だよ」

「わ、わたしは佐藤 希菜と言います……」

「ゴウさんが私のご主人様?私は道新 舞華と言いますぅ!」

「お、おう……そんな軽いノリでいいのか?ワシは梶谷 ゴウじゃ……」

「私は高比良 ゆみ。大学生だよ」

「あたしは松浦 麻実。よろしくな」

「……如月 奈子」

「小学生ぐらいかー。俺は野白 啓だ」

 えっと……フウがレントさんと、ユウヤさんがタカシさんと、キナがレイさんと、ゴウさんがマイカさんと、マミさんがユミさんと、ケイさんがナコとペアか……。

 彼らと仲良く出来たらいいのだが……。

 人形……。

 そこで、ふとあのことを思い出す。

「……なぁ、グリーン」

「なに?スズエさん」

 私はじろっとグリーンを睨む。

「本当に、今出会った人達は「人形」なのか?」

「当然じゃないか。「何を」疑ってるの?君は」

「ふーん……」

 私は腕を組みながらグリーンを見ていたが、

「……分かっていたが、やはり「嘘つき」なんだな、お前。昔はもっと誠実な男だと思っていたが」

 ため息をつく。なんでこんな男を誠実な奴だなどと思ったのだろうか、昔の私は。

「何が分かったっていうの?」

「敵に、わざわざ手の内を見せる大バカ者はいないだろ」

 それに、確信がないし。手札は見られないようにするのが基本だ。

「シルヤ君はやるかも?」

「……シルヤだって、そこまでばかじゃない」

 シルヤの名前を出され、私は少しムッとした。ずっと忘れることの出来ない、それぐらい大事なあいつをバカにするな。

「本当に、君は勘が鋭いなぁ。でも、そういうところ、嫌いじゃないよ。むしろ大好きだ」

「私は嫌いだ。大嫌い寄りの嫌いだ」

「厳しいなぁ」

 火花がバチバチなっている。そんな私を見かねたのか、ケイさんは肩を叩く。

「スズちゃん、落ち着いて」

「……そうですね。柄にもなく血が上っていたみたいです」

 こんなの、敵の罠の可能性だってあるのだから。もう少し冷静になるべきだった。

 ――いや、こいつの場合はからかっているだけか……。

 何となく分かってしまうのが悲しい。私はため息をついた。

「それじゃ、あとは人形達に聞いてね」

 そう言って、グリーンはどこかに行ってしまった。まぁ、あの調子じゃあいつ、何も話さないしな……。

 ……とにかく、人形達に話を聞くしかないか……。

「あの、少しお話を聞かせて……」

「好きな異性のタイプとか、スリーサイズとか?それとも下着の色とか?」

「必要ありません。話しません。言いません」

 なぜこんなにマイペースなの……マイカさん……。

「俺は気になるけどなー。特にスズちゃんのスリーサイズ」

「おまわりさーんこの人でーす」

「俺がおまわりさんだよー」

「そうだったこの人おまわりさんだった……」

 ………………………………。

「なんですか、この茶番。乗った私も私ですけど」

「まさか乗ってくれるとは思わなかったよー。てっきりグーが飛んでくるかと」

「……今からでも遅くないですよね?」

 殴る準備は出来てますよ?と「笑顔」を浮かべる。ケイさんは「おー、怖い怖い」とさして怖くなさそうに答える。

「あ、それなら」

「どうしました?私をじっと見て」

 その質問に答えず、ケイさんはジッと私を見てきた。数秒後、私の肩を叩く。

「……スズちゃん。今日の下着の色はし」

 私の「怒り」のグーパンチがケイさんにクリーンヒットした。

「あー、ごめんなさい。力加減を誤ってしまいました」

 何ならもう一発殴ってやりたいところではあるが。

「スズちゃん、さすがに痛かったよー……」

「変なことを言おうとしていたからです」

 そのスキルを別のところに使ってください。切実に。

 はぁ……とため息をつき、本題に戻る。

「何か、知っていることがあれば、差し支えない程度に教えてくれませんか?」

「あー、なんか、怪物が襲ってくるとかなんとか……」

 タカシさんが何か言おうとした丁度その時、妙な出で立ちの何かが現れた。まさか……。

「これが怪物か?」

「……でしょうね……」

 私は真っ先にフウとキナ、ナコを後ろに庇う。そして、怪物を観察した。

 武器は……刃物を持っている。

「あれに当たったらひとたまりもないな……」

 死は確実だろう。さて、どうしようか……。

 とにかく、弱点を見つけ出さないといけないことには変わりないだろう。幸い、奴の身体には小細工が仕掛けられていない。

「動きを封じたらどうかな?」

 レイさんが提案する。確かにそれはいい案なのだが……。

「どうやって動きを封じ込めるんですか?」

 そう、その手段が思いつかない。下手に掴みかかっても振り払われるだろう。その衝撃で誰かが死んでしまう……なんてことも十分にあり得る。

 ふと、怪物がユミさんを見ていることに気付いた。

「い、嫌な予感が……」

「逃げてください!」

 私が叫ぶと同時に、怪物はユミさんに掴みかかった。

「ちょ、放してよ!」

 必死に抵抗しているユミさんを見て私は怪物の身体を引きはがそうとするが、すぐに飛ばされてしまった。

「くっ……!」

 どうすればいい……?どうすれば……。

「な、なぁ、転ばせられないか?」

 ランの提案に、なるほどと私は気付いた。図体がでかいから、転んだらしばらく身動きできないだろう。

「すまない、少し離れててくれ……!」

「な、スズエ!?」

 私はスライディングで怪物に足を引っかけた。足に違和感を覚えたが、今はどうでもいい。とにかく弱点を……。

「頭だねー。その赤い光を壊すんだよ」

 ケイさんがそう言ってくれた。つまり、頭を狙えば……。

 武器になりそうなものは……。

「スズちゃん!あそこにフライパンがあるよ!」

 マイカさんに示されたそれは、

「兄さんのフライパン……?」

 なぜこんなところに?

 いや、そんなことを考えている暇はない。私はそのフライパンを拾い、

「兄さん、ごめんなさーい!」

 そのまま、怪物の頭を殴った。パリン、と赤い光が壊れ、怪物は消えていった。

「さすが、エレンの妹だねー」

「からかわないでください」

 あぁああ……兄さんのフライパンを壊してしまった……。

 そう思っていると、ランが私の方を見ていることに気付いた。

「どうした?」

 顔を覗き込むと、「い、いや、なんでもねぇ……」と視線を逸らされる。それを見て、私はすぐに察した。

「……あぁ、エレン兄さんのことか?」

 私が聞くと、ランは驚いたような表情を浮かべた。図星か。

「……エレン兄さんは、私が幼い頃に七守家に引き取られたんだよ。だから、私と苗字が違うんだ。私も忘れていたぐらいだしな」

「そう、だったんだな……」

 端的に説明すると、彼はどこか辛そうな表情を浮かべた。自分のことのように思っているのだろうか。

 私は話を逸らすように、「この赤い糸……離れたら何かあるだろうから原則ペアは一緒に行動しないといけないだろうな……」と呟いた。

「気を付けてくれ……さっきみたいに、怪物が襲ってくるって言っていたから……」

「戦いながら、ですか……。ちょっと考えて行動しないといけませんね……」

 レントさんの言葉に私は考え込む。……ここは、多少怪しくても人形達と行動するべきだろう。だが、いきなり別々に……というのも出来ない。

「それじゃあ、一緒に探索しようか」

 ユウヤさんが私の代わりにそう言ってくれた。

「フン。まぁいいか」

 彼のペアであるタカシさんも渋々ながら頷いた。

「ニャ……」

 すると、フウが私にくっついてきた。

「どうした?フウ」

 私はかがみこみ、フウと視線を合わせるが彼はただ顔を青くしているだけ。

 あぁ、さっきの怪物が怖かったのか。

 そう思い、私は彼を抱きしめた。

「大丈夫、さっきの怪物はお姉ちゃんが倒したからもう来ないよ」

 そして、昔、「あいつ」にしていたように優しく頭を撫でて、安心させる。フウは「うん……」と涙目で私を見ていた。

「姉ちゃんが死ななくてよかったニャ……」

「……私は案外タフだからね。簡単に死んでやらないよ」

 本当は落ち着くまで……と言いたいところだが、何しろ何も分かっていない。もしかしたら制限時間もあるかもしれないし、人形達が充電式であるなら、それも探さないといけない。ゆっくりしている暇はないのだ。

「フウ、手を繋ごうか。大丈夫、また何かあったら守ってあげるから」

「分かったニャ……」

 私はフウの手を握り、歩き出す。隣にキナも来て、同じように私の手を握った。

「そうしていると、きょうだいみたいだね」

 ユミさんが微笑ましそうに見ていた。確かにそうかもしれない。

 ――兄さんと、こうやって一緒に過ごすことも出来たのかな……。

 シルヤと一緒に、エレン兄さんにくっついて……なんて未来もあったのだろうか。

(今は、そんなこと……)

 何度も何度も「心」に言い聞かせながら、私達は探索を始めた。

「そういえば」

 少し歩くと、レイさんが不意に声をかけた。

「スズエ、足に違和感がない?」

「え?いきなりなんですか?」

「いや、歩きにくそうにしてるから……」

 違和感……と言われても、痛みは感じないのでよく分からない。

「スズちゃん、足、見せてくれるかなー?」

 ケイさんに言われ、私は靴を脱ぐ。

「これでいいですか?」

「まぁ、大丈夫だけど……タイツも脱いでほしいところかなー」

「……出来れば見せたくないんですよ。酷いものなので」

「……なるほどねー。まぁ、この状態でも分かるからいいよー」

 私の身体は、見せられたものではない。それは足も同じなのだ。だからこそ、タイツを常に履いているわけだ。

「……少し腫れてるねー。包帯巻くから、じっとしててー」

 ケイさんが包帯を巻いている間、フウが悲しげに見ていた。

「フウ、大丈夫だ。痛くもないからさ」

「ニャー……」

 頭を撫でると、フウはケイさんの邪魔をしないように抱き着いてきた。

「これでよし」

 ……確かに少し楽になった。

「ありがとうございます」

「大丈夫だよー」

 私が歩き出すと、ケイさんが人形達に何か言っていたのが見えた。

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