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死神様に会いたくて  作者: 楠本 茶茶(クスモト サティ)
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第5部分 ケース3 カナの場合

第5部分 ケース3 カナの場合


 カナは北海道内陸部の中学3年、つまり受験生。家族は父母兄姉本人の5人家族。容姿にはかなり自信がなく、ときどきおばさん顔のつつ体形であると言われたりすることがあった。ひどいときは昔の郵便ポストみたいだな、なんて… 

 行きたい高校は遠くて、学力も届かない。近くの高校もあるが、そこにはイヤな友達数人が進学すると公言していて行きたくない。実はイヤどころか、集団いじめを受けていたのである。みんな進学のことでストレスを抱えているせいもあるのか、カナが集中砲火を受けていたのである。近頃は食欲もなく、勉強も手についていない。年齢=非交際歴で、相談できる友人はいたが、いじめが始まってからは今は誰もカナに近寄ろうとしない。


 今日も学校行きたくないな… 外はぜったい寒いし…


 ただでさえ出掛ける気になれないのに、また雪かきしなくちゃって、お父さんがなげくんだろうな。こんなとき、おなかが痛くなったら学校休めるのに。頭痛でも生理痛でもいい。熱が出てくれればもっといいのにな。


 お願い、どこかおかしくなって、お願い。妙に丈夫なこの身体が憎たらしくて恨めしい。

おとうさんは無理としても、せめておかあさんが気付いてくれないかな。おにいちゃんは札幌で遠いけど、お姉ちゃんに相談したらいいかも…。結論はわかっているんだよね。でも… あんなのどうにもならないじゃん。みんなで陰ではアタシの悪口ばかり。


 あ、なんか頭が痛くなってきたかも… ガンバレアタマ、もっと痛くなって!


『カナ、もうこんな時間よ。はやくいってらっしゃい』

「あ、はい」

「おかあさん、あのね、きょうカナ、頭が痛くて。だんだんひどくなってきたの」

『え、大丈夫? さっきから浮かない顔だったけど、熱測はかった? 測ってごらん』

「ううん、測ってみる… たぶんちょっとあると思う」

『お休みしたいってこと?』

「う、うん…」

『ダメよ、ズル休みは…』

「そんなんじゃないよ… いたいんだもん」

『仕方ないわね。じゃ電話しなさい』

「うん… でもお願い。おかあさんから電話がルールだっていうから」

『めんどうだわね… 番号は?』


 母がよそ行きの声で電話するのを聞きながら、カナはいつもの自己嫌悪じこけんおおちいっている。

あああ、ついにズル休み。でも行けないんだもん。あしたはどうしよう。

そうだ、もう死んじゃえばいいんだ。居なくなればラクになれるから。そうだよね、うん。でもどうしたら死ねるの? ちょうちょさんみたいに天国へ行きたいだけど身体が邪魔だな… そうだ、あの子も死にたいって言ってたけど、こんな気持ちなのかもな…


 考えるのはとりとめのない、空想に妄想ばかり。


 ふと気づけば、いじめられている夢ばかりの浅い眠りから醒め、母の声が夕食が食べられそうかと訊ねている。

夕食食べたくないって断ったけど、いま何時頃? 結局一日悩んで終わっちゃう。ああ、学校行きたくないな…


え、もうこんな…深夜じゃん。ラインで相談できる友達もいないし、空しいな… 寒いなあ… アタシのココロ… 


 あ、そっか、なんだ、そうすればいいのか。そうしたら死神が呼びにきてくれるわ、きっと、

もう外はシバレル寒気かんきがあたりを支配している。今夜はきっと-30℃まで下がるかも知れない。


 服を着たままお風呂場でお湯に入ってからそっと外に出て、全力で山の方に走って行けば、たぶん帰って来ることはないわ。倒れて止まって、服が凍れば多分もう動けないから明日を迎えることはない。いまの季節ならあのこわひぐまさんに出会うこともないわ、きっと…


 そのかわり、キタキツネさんにこのカラダを齧られることになるかもしれないわ…


そうね、明日でもできるから、今日はもう寝よう。あと一日だけ頑張ってみよう。



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