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死神様に会いたくて  作者: 楠本 茶茶(クスモト サティ)
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第10部分 自殺の名所:死神が待機するところ

10節 自殺の名所:死神が待機するところ


 その気になればどこでも死ねるのに、その運命の場所を「自宅」に選ぶ方もいれば、あえて「外」に出る方もいる。どのみち変死体として解剖され、ご近所のウワサにはなるのだが…


 「自宅」で決行する利点は…外は引き止められる可能性がある、外に出るのが面倒、金もかからず、準備が存分にできる、外部に死に姿を見られたくない、目立ちたくない、家族に無言のアピールできる、失敗しても内緒で救助してもらえる

 欠点は、家を汚す(事故物件含む)、近所のウワサになる、世の中に死をPRできない、家族に死に姿を見られる、失敗しても助けが呼べない、高低差がないことだろうか。


 「外」で決行の利点は…目立つ、世間や相手に恨みつらみをPRできる、高低差がある(投身)、十分な水がある(入水:じゅすい)、十分な速度がある(飛び込み)、失敗しても死ねる時間的余裕がある(けど苦しくて痛いかも)、

 欠点は、捜索や片付けに人に迷惑やカネがかかる。死に姿を見られる(ネット上でさらされることも)、などが考えられる。


 ここでは「外」の、しかも景勝地を選ぶ思考を考えてみたい。


 景勝地とは景色の良いところであり、道さえ良ければ観光地でもあるところが多い。そんなところがほぼ例外なく満たしている条件は、

・大きな高低差

・水(海、湖、川)の存在

・豊かな自然

である。不可欠と言っても良い。多くは3つとも、少なくとも1つは該当する。よく考えてみれば、これらは各地の有名観光地が満たす条件と近似きんじしている。観光地なら道も整備され、交通状況も便利なところも多い。つまり気軽に行けるから、ココロの荷物が重い自殺志願者も引き寄せられるように集うのだろうか。


 富士山のふもとに広がる青木ヶ原樹海に該当するのは「豊かな自然」1つだけ。だがその1つが立派すぎるくらい立派なのだ。ちなみに「磁石が効かない」というのは一部のエリアに過ぎない。どこか1方向に決めて進めば必ずどこかの人跡じんせきに出るはずだが、その1方向を保つのが至難なのだ。樹海の木をかわし乗り越えていくうちに大抵方向を見失い、体力を使い果たしてしまう。


 目標のない雪の平原では、ヒトは大きな円を描くように進んでしまうという。ひとつの原因として挙げられるのが、利き足(利き手と同様)の歩幅の方がわずかに大きいことだ。例えば利き足が右足だとすると、自分はまっすぐ歩いているつもりでも、実は大きな左回りの円を回ることになる。これと似たようなことが樹海で起こると… 出て来れないだろな、たぶん。自分の経験だと、樹海の中では葉が多すぎて、あんなに近い富士山を見ることさえも難しい。昔のヒトなら、時計があって晴れているならば南がわかるので、一方向を目指すことができた。そういえば、太陽を見ることも結構難易度が高いとこだったけど… 今そんなことができるヒトがいったい何人いるだろうか… あ、スマホにGPSが付いてるか、失礼しました。充電切れたら終わりだけどね。


 以前青木ヶ原樹海で自殺者が多いのだ、という記事について、「なんて失礼な」と評したヒトがいた。無論樹海にではなく、勝手な自殺者に対して「失礼だ」と非難したのだ。まことにもっともな意見だと思う。


 かなり多くのヒトにあてはまる心理として、死ぬ前に「暗い家で誰にも見つからないのはイヤだ」とか、「誰かに見られて死にたい、または死んだら見つけてほしい」という気持ちが働くようだ。いわゆる自殺の名所には高低差と水の存在と豊かな自然とがあるように思われる。


 各県の代表的な場所の例を挙げてみよう。なお投身、縊死(いし…首吊り)などはその場での「主な手段」である。


瞰望岩がんぼういわ:北海道紋別郡            投身

チミケップ湖:北海道網走市            入水じゅすい

竜飛たっぴ崎:青森県東津軽郡             投身

田沢湖:秋田県田沢湖町             入水

    県別自殺率トップ(H12~29まで、H26はNo,2)

四十四田しじゅうしだダム:岩手県盛岡市          投身

白山島はくさんじま:山形県鶴岡市             投身

県民の森:宮城県仙台市・利府町・富谷町   縊死(首吊り)

上蓬莱橋かみほうらいばし:福島県福島市          投身

内の倉ダム:新潟県新発田市          投身、縊死

華厳(けごん)の滝:栃木県日光市            投身

琴平橋:群馬県、埼玉県             投身

秋ヶ瀬公園:埼玉県さいたま市         入水等

袋田の滝:茨城県大子町             投身

犬吠崎いぬぼうざき:千葉県銚子              投身

新小岩駅:東京都葛飾区新小岩         投身(電車への飛び込み)

     ただしホームドア設置前

三原山みはらやま:東京都大島町             投身

横浜ベイブリッジ:神奈川県横浜市       投身

青木ヶ原樹海:山梨県富士河口湖町      縊死(首吊り)、薬物等

軽井沢大橋:長野県北佐久郡御代田町     投身

錦ヶ浦にしきがうら:静岡県熱海市           投身

金城きんじょう埠頭:愛知県名古屋市          投身(車ごと)

的矢まとや湾大橋:三重県志摩市           投身

ヤセの断崖:石川県富来町            投身

新湊しんみなと大橋:富山県射水市           投身

東尋坊とうじんぼう:福井県坂井市             投身

琵琶湖大橋:滋賀県大津市、守山市       投身

船岡山:京都府京都市北区            縊死

堀河ダム:大阪府泉南市             投身

天理ダム:奈良県天理市             投身

三段壁さんだんかべ:和歌山県西牟婁むろ郡         投身

鳴門海峡:兵庫県、徳島県             投身

鬼ノ城(きのじょう):岡山県総社そうじゃ市             縊死

東大山大橋:鳥取県倉吉市             投身

日御碕ひのみさき:島根県出雲市               投身

深谷大橋:山口県岩国市、島根県鹿足かのあし郡    投身*

林田はやしだ港:香川県坂出さかいで市              投身(車ごと)

谷上山たがみさん展望台:愛媛県伊予市          縊死

足摺あしずり岬:高知県土佐清水市             投身

耳納みのう大橋:福岡県八女やめ市              投身

蟻尾山ぎびざん:佐賀県鹿島市                縊死

西海さいかい橋:長崎県佐世保市、西海市        投身

九重ここのえ夢大吊橋:大分県玖珠郡九重町      投身

阿蘇山:熊本県阿蘇郡                投身、火山性有毒ガス

開聞岳かいもんだけ:鹿児島県指宿いぶすき市            縊死

残波岬ざんぱみさき:沖縄県読谷よみたん村              投身


 ちょっと調べてみると、各県ごとに「自殺の名所」とか「激ヤバスポット」などが多くヒットする。しかし厳密な自殺数などの統計は捜しても見つからないし、ナンバー1などのランク付けも不謹慎すぎる。あくまでも、「有名」という観点で勝手にセレクトしたものである。手段などのバランスも一切考慮しなかったため、リストアップしてみたら「投身」ばかりが突出して多くなってしまった。やはり絶景の見事さとそこからダイブするギャップを誰もが気に留めているからかな、とも思った。


 2017年の厚生労働省の統計によると、日本人の死因は

一位 ガン     27.9%

二位 心疾患    15.3%

三位 脳血管疾患   8.2%

四位 老衰      7.6%

五位 肺炎      7.2%

六位 不慮の事故   3.0%

七位 誤嚥性肺炎   2.7%

八位 腎不全     1.9%

九位 自殺      1.5%

であった。


 もっとも日本人は身内の自殺を恥だと考えて隠す傾向があるため、このまま信じるワケにはいかない。少なくとも1.5%はいる、と考えるべきだろう。


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