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姫雫  作者: 赤坂秀一
第三章 ウエディングカウントダウン
9/20

9 式場の下見

大変お待たせしました第9話を更新しました!


前回、瀬菜に結婚式の準備の件でいろいろ訊かれ何も答えられなかった郁美は今回式場の下見をします。


 私は瀬菜(せな)に言われた事を思い出していました。結婚式か! まあ、経験していても可笑しくない歳ですけどね! 私は母にも聞いてみました。

「お母さん、結婚式って式場の下見とかするの?」

「そりゃ、そうした方が良いけど、あなたの場合人前式になるかもよ」

「えっ、人前式って?」

「うちの蔵に関係のある人達が集まってみなさんの前で式を挙げるのよ」

「えーっ、なんか地味なんですけど……」

「仕方ないでしょう、家は酒蔵で清政(きよまさ)さんが八代目に就任するんだから」

 そう母に、言われてしまいました。

「お母さんもそうしたの?」

「ええ、やりましたよ! 文金高島田(ぶんきんたかしまだ)でね」

「えっ、なに? 和装なの?」

「そうよ、酒蔵ですもの」

「えーっ、嫌だ! ウエディングドレスが良い」

「それは披露宴で着れば良いじゃない。カクテルドレスとかもあるから、こんな時でもないとなかなか着れないわよ」

 母はそう言いますけど私としてはチャペルでウエディングドレスを着てみんなに祝福されて…… っていうのが良いんだけどな! そんな話をしている時でした。

「今度は何を言ってるんだ!」

 父です。姫野(ひめの)さんとこから昨日の夜に帰って来ました。

郁美(いくみ)の結婚式は人前式ですよって言ってたのよ」

「ああ、そうか…… 確かにここで俺が紋付袴でおまえが文金高島田で二人並んで人前式をしたな! ついでに七代目の襲名披露もな」

「ええ、懐かしいですね!」

「でも、今回は結婚式だけだし襲名披露はまだ後からだから、普通にチャペルウエディングでも良いんじゃないか!」

「良いんですか? 本当にそれで……」

「俺やおまえが良ければ、良いさ、文句を言う奴はいないだろう!」

 父が何だか今までとは考え方が変わったような……

「あなた、変わりましたね」

「そうか?」

「それじゃ、チャペルウエディングでも良いんですね」

「ああ、一生に一度の事だ。それに郁美のウエディングドレスなんて滅多に見られるものじゃないからな」

「あら、郁美の文金高島田なんて絶対に見れませんよ!」

 母は私に和装をして欲しかったのかな?

「それじゃ郁美、式場の下見に行きましょうか」

「いいの?」

「ええ、お父さんの考えが変わらないうちに決めちゃいましょう」

「やった! 清君(きよくん)も一緒に誘っちゃおう」

 私は部屋へ戻り清君に連絡しました。今度の日曜日に式場めぐりをしようと…… 式場めぐりといっても城南市(じょうなんし)でするのか橋本市(はしもとし)でやるのかで、状況は変わって来ます。どっちにしてもうちの町からじゃ距離的に変わらないんですよね! でも、お洒落なドレスがあるとすればやっぱり橋本市かな、今から楽しみです。


 日曜日、清君が由香里(ゆかり)さんと二人で来ました。うちも私と母の二人で式場めぐりに行きます。という事で清君の車で四人で行きます。

「式を挙げるならやっぱり橋本市でしょう」

 由香里さんがまずそう言います。

「母さん、決めつけは良くないよ! 城南市だって良い式場があるかも知れないじゃないか」

「いえ、清政さん私も橋本市の方が良いと思うのよ」

 今度はうちの母です。

「それじゃ橋本市でいろいろと見てみようよ!」

 という事で三人の意見が一致したので橋本市へ向かいます。

 まず最初に行ったのがアルマジェル橋本という式場です。ここの売りは新装したチャペルです。新装したばかりという事もあってとても綺麗で中も明るいです。

「わっ、明るくて綺麗! ここで良いんじゃない」

 私はそう思ったのですが……

「まだまだ、他も見て見ないと」

 次にドレスを見せてもらいました。ドレスといえばウエディングドレスです。でも種類が沢山あります。主流としては肩や背中が大きくあいたビスチェタイプのドレスです。他には肩や背中の部分に薄いレースが使われているロングスリーブドレスとショートスリーブドレスがあります。どれも部分的に刺繍が施されていてとても綺麗で可愛いです。

「私はこういうのが良いかな」

「あら郁美さん、若いんだから肩とか出した方が良いんじゃない! そっちの方がお洒落で綺麗よ」

 由香里さんからそう言われますけど…… あまり人前では、ちょっと……

「私はロングスリーブドレスのレースと刺繍が施されているのが可愛くて良いと思うんだけど…… お母さんはどう思う」

 母はジッと見つめています。

「お母さん?」

「私もこういうの着て見たかったわ!」

 あっ、そこなのね……

「お母さんは洋装はしなかったの?」

「私は披露宴のときにピンク色のドレスと青っぽいドレスを着たかな?」

「ウエディングドレスは着なかったの?」

「うん、それよりカラフルなドレスを着たかったから」

「ふーん」

 まあ、考え方は人それぞれだよね!

「ねえ清君、どれが良いと思う?」

 私は清君の手を引いてドレスを見てもらいます。

「僕はこういうのが良いかな」

 ビスチェタイプのちょっとセクシーなドレスを指さしています。

「えっ、これが良いの?」

「うん、これを着た郁美を見てみたい、こういう時じゃないとこんなの着ないでしょう」

「あっ、清君好みな訳ね」

「うん」

「でも、式や披露宴でみんなに見られるんだよ! ちょっと恥ずかしいかな……」

「あっ、そうか…… そういう目で郁美を見られるのも嫌だしそれならこっちかな」

 今度はロングスリーブドレスで綺麗な刺繍が一杯施されているドレスです。

「人前だとこっちかな」

「やっぱりそうだよね」

「だって、セクシーなドレスは僕の前だけが良いかな……」

 ちょっと恥ずかしいそうにボソボソ言ってる清君です。可愛い!

 そして、ひと通り見せてもらったあともう一軒行こうという事でお昼を食べた後、次に行ったのがロイヤルプレイス橋本という式場です。ここってなんとなく一流ぽい匂いがするところです。きっと高いですよ!

 まずはチャペルを見せて頂きました。立派なステンドグラスがある本格的なチャペルです。パイプオルガンもあります。なんだか庶民的な私には場違いです。次にドレスを見せて頂きましたが…… 有名なデザイナーが作ったドレスで…… いや、なんだか私には場違いすぎて気疲れしそうです。

 最後にもう一軒という事でフレアージュプレイス橋本という式場に来ました。チャペルもドレスも最初に行ったアルマジェル橋本とあまりかわりませんがチャペルが最初に行ったアルマジェルの方が綺麗で私好みだったのでそこに決めようという事になりました。

「ねえ郁美、前撮りはするよね!」

「えっ、どうして?」

「式や披露宴だけじゃいろいろ着れないでしょう! だから前撮りでいろいろなドレスを着て写真撮ってもらって良いじゃない」

「うん」

 なんだか今日の清君はちょっと違うみたいです。

「清政、前撮りは良いけど郁美さんを着せ替え人形にしちゃ駄目よ」

「そんな事はしないよ、前撮りなんだから綺麗なドレスやちょっとセクシーな、ドレスを着ても良いじゃない」

「まったくもう! 郁美さん、嫌なときははっきり嫌って言わなきゃ駄目よ!」

「は、はい」

 どういう事? 清君はちょっと露出のあるドレスが好きみたいだけど……


 その後、私の家に四人で戻って来てから三軒の式場のパンフレットを見ます。

木村(きむら)さん、やっぱりアルマジェルの方が綺麗で費用も安いみたい」

「あら、そうね! あそこはドレスもかなり種類が多かったから良いですよね」

「ええ、あとは料理ですけど……」

「確か、試食会が今度あるみたいに書いてあったよ!」

 私がそう言うと母も由香里さんも行って試食するみたいです。なんだか本格的になって来ました。

「清君は何を見てるの?」

「えっ、式で着る服をね!」

 でも、清君が見てるのはウエディングドレスやカクテルドレスです。まさか、清君が着るんじゃ無いよね……

「郁美にはこういうのが似合うと思うんだ!」

「えっ、これを着るの?」

 かなりセクシー系のドレスです。しかもビスチェタイプのドレスばかり……

「あら、良いじゃない! どうせ前撮りなんだし、写真を撮るだけなんだから、それに一生に一度なんだから綺麗な郁美さんを写真で残しておいて良いんじゃない」

 由香里さんも母もそんな事を……

「郁美はこっちのドレスが絶対に似合うから」

 なんだか私のために一生懸命な清君です。

「そうだね、一生に一度の事だし良いかな……」

 なんとなく納得してしまいました。でも由香里さんが言っていた着せ替え人形の意味がちょっとだけ解ったような……


3カ所ほど式場の下見をして来た郁美たちでしたが、式場選びは両家の母親が楽しでいるみたいでした。清政は郁美のドレス姿を思い浮かべ、前撮りを楽しみにしてるみたいです。またこれで結婚に一歩一前進出来たかな……

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