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姫雫  作者: 赤坂秀一
第三章 ウエディングカウントダウン
8/20

8 田植えは楽しい

大変お待たせしました第8話を更新しました!


今回は契約農家さんとこの田植えのお手伝いです。とても大変みたいですけど……


 今日は契約農家さんとこの田植えです。うちのお酒の材料となるお米は、ここ姫野(ひめの)さんとこの夢しずくという品種のお米を使っています。あっ、だから姫雫なのか!

「姫野さん、またお世話になります」

「いえ、こちらこそ毎回お手伝いに来て頂きありがとうございます」

「今日は、うちの八代目と娘を連れて来ました」

「初めまして北御門清政(きたみかどきよまさ)と申します。今日はお世話になります」

「初めまして、木村郁美(きむらいくみ)です」

「はい、よろしくお願いします。今日は苗床から田んぼに苗を運んでもらいます。息子の英治(えいじ)が指示しますので」

「英治です。よろしくお願いします」

 挨拶も早々に作業が始まりました。父は英治君と一緒に苗運びをするみたいです。私は清君と一緒に苗運びをします。服装は汚れていい物を着て来たのですが、長靴は持ってないので借りる事にしました。

「清政さん、郁美さんサイズをお願いします」

「僕は27センチです」

「私は24センチです」

 それぞれの長靴を準備してもらい、いよいよ苗床へ……

「うわっ、凄いドロドロ」

「ここに水を張って苗を成長させるんです」

「これをどうするんですか?」

「軽トラに乗せます。ローラーコンベアを使って」

 まあ、要するにローラーコンベアの上に苗箱を転がせて軽トラの荷台に乗せる訳ね!

「苗箱が落ちないように気をつけてくださいね!」

 私達がドロドロの苗床な訳ね…… そう思ったのですが、軽トラの荷台では作業服を泥水で濡らしながら苗箱を積み込む英治さん! なんだかカッコいいですけど……

「なに、見惚れてんの!」

「えっ、そんなんじゃ…… ひょっとして妬いてるの?」

「そんな訳ないでしょう」

 そう言って私達はせっせと作業をします。そして軽トラ一台分積み終わりました。あともう一台分積み込むみたいです。四人で作業すると早いですね!

「それじゃ田んぼに運びますのでついて来てください」

 私は助手席に乗り清君の運転で田んぼへ行きます。

「うわーっ広い、ここに植えるんだ!」

 田んぼには沢山の人がいます。

「おーい、一台は道路の奥に止めてくれ」

 ここの田んぼは道路の両サイドに左側五面、右側に五面あります。英治君は左側手前の田んぼの脇に苗箱を置いて行きます。私達は道路奥の右側の田んぼの脇に苗箱を置いて行きます。でもこれだけ人がいると作業もあっという間です。

「それじゃ、また持って来てね! 今日はここの十面を終わらせんといかんから」

 そういう事で、また苗床へ逆戻りです。

「凄いね、田植え機二台で植えてたよ」

「うん、でもそうでもしないと終わらないんじゃない」

「うん、そうだね!」

 そう言って苗を積み込みます。私が荷台に乗せる役です。積み込むといっても苗箱を斜めに差し込んでいくだけです。ただ、上手くやらないと泥水が掛かります。

「郁美代わろうか?」

「ううん、大丈夫」

 積み込んだ後は、また田んぼです。これを四往復したときでした。

「ほら、郁美さん達もお昼にしようか」

 そう声を掛けられました。必死になっていたので時間を忘れていました。

「さあ、どうぞ沢山あるけん食べてくださいね」

 凄い量です。おにぎりだけでも三種類、海苔がついてるもの、胡麻が掛かっているもの、紫蘇のふりかけがついてるものです。おかずも凄いです。玉子焼き、唐揚げ、ウィンナーにゆで卵、胡瓜のつけもの、茄子の漬物とバライティーです。

さあ、沢山食べてお昼からも頑張ってね」

 田植えってなんだか楽しいです。私達は苗運びをしているだけですけど、外でみんなで食事は良いですね!

「昼からは苗を田植え機に乗せるのを手伝ってね」

「えっ、どうするんですか?」

「こげんすっと! よう見とってね」

 そう言って英治さんのお父さんが手本を見せてくれました。手本によると苗箱の苗を優しく掴み半分くらいめくります。そして、白い下敷きのようなものを差し込み苗を下敷きに乗せかえるような感じです。

「こげんすっと、田植え機にセットしやすかったい!」

 なるほど…… なんとなく解ったような解らないような…… とにかくやってみよう! という事でお昼からも、がんばります。


 お昼休みが終わり作業開始です。田植え機には英治さんが乗るようです。

「英治、長袖着とかんとやくっぞ!」

「田植え機に乗ると日焼けするんですか?」

「ああ、田んぼに水ば張っとっけん下からの照り返しがあるとよ」

 なるほど…… そして、先程教えてもらった通り、苗を下敷きに乗せ替え田植え機に乗せます。田植え機は向こう岸まで苗を植えて方向転換して戻る途中で、苗を田植え機の後ろに補充して戻って来ます。そして私達が不足した苗を補充します。やっぱり田植えは大変です。

「郁美さん、もう一回苗を十枚持って来て!」

「えっ、十枚ですか?」

「うん、ちょっと足りんごたっ!」

「…… ??」

「分かりました」

 私と清君は軽トラでもう一度苗運びです。

「ごたっ! ってなに」

 清君が訊きますけど……

「たぶん、足りないからって事だよね!」

 うーん、日本語は難しいです。


 そして、夕方です。本日の作業は終了しました。

「お疲れ様でした」

「いやー、郁美さん達が来てくれたけん早よ終わって良かった! これ、お土産」

 お昼に食べた胡瓜と茄子のお漬物です。

「ありがとうございます」

 そう言って私と清君は車に乗りますけど、父はみなさんと一緒に手を振って見送っています。

「お父さんは帰らないの?」

「俺は明日まで手伝いだから」

「賢斗さんは田植えは好きなごたっけんね!」

 そういう事で私と清君は姫野さんの農場を後にしました。

「それにしても大きな農場だったね!」

「うん、ちょっとびっくりだったけど……」

「ねえ、ところで新米はどうやって送られて来るの?」

「ああ、フレコン三袋くらいかな!」

「フレコンって何?」

「大きくて丈夫な袋で一袋で一トンくらい入るかな」

「そんなに送られて来るんだね!」

「まあね!」

 その後、私と清君は小腹が空いたので杏子(あんず)に行く事にしました。

「いらっしゃい郁美ちゃん!」

「マスター、食事したいんですけど」

「どうぞ!」

 私はテーブルに着いて注文をします。

「今日は瀬菜(せな)達は来てないのね」

「淋しいなら呼ぼうか?」

「いや、いいよ! 折角静かだし」

 でも、噂をすれば……

「郁美、来てたんだ」

「あっ、瀬菜!」

 と手は振ったものの……

「八代目こんばんは!」

「あっ、どうも……」

「ねえ、郁美は式はどこで挙げるの?」

 瀬菜は突拍子もない事を……

「まだそんな事決めてないよ」

「えっ、そういうのは早く決めないと」

「だから早すぎるでしょう」

「何言ってるの!そういうのは半年前とか一年前から準備するんだよ、招待状だって三ヶ月から二ヶ月前くらいに出さなきゃ間に合わないよ」

 えっ、そんなに……

「私の時だって一年前から準備して、招待状の返信で手間取って、もうギリギリだったんだから、いろいろ準備があるんだよ……」

「でも家は、そんなに人を呼ばなくても……」

「郁美んとこはそうはいかないでしょう! 酒造組合とか付き合いのある酒屋さんとか呼ばない訳にはいかないでしょう」

 確かに…… 瀬菜にしては今日はまともだ!

「まあ、真面目な話はこれくらいにして楽しく飲みましょう」

 その後はいつもの瀬菜で一時間くらい付き合わされました。でも、清君も一緒になって…… なんだか楽しそうでした。でも、そうか…… 式場とか探さなきゃね……


田植えの手伝いも終わり一安心ですけど…… 結婚式か…… 何も考えてなかった。瀬菜に言われて初めて気づく郁美でした。

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