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姫雫  作者: 赤坂秀一
第二章 不穏
6/20

6 イベント

お待たせしました第6話を更新しました!


前回のデートで彼を怒らせてしまった郁美ですが、今回も何かが起こりそうです!


 今日は木村酒造(きむらしゅぞう)のイベントです。姫雫(ひめしずく)の冷酒が出来ましたのでそのイベントをやります。清君(きよくん)も九時前には家に来てくれて私とお揃いのハッピを着ています。と言っても木村酒造のハッピなんだけど意外と似合っているな…… 前回のデートでちょっと気を悪くした清君だけど、まあ来てくれたから良いかな!

「清君、十時オープンだからそれまでゆっくりしててね!」

 すると蔵の方から……

「あっ、お嬢さん冷酒をワンパレ準備しやしたので人を呼んで来てもらって良いですかい!」

 杜氏(とうじ)永島(ながしま)さんです。

「あっ、はい。直ぐに呼んで来ます」

 私が店の方へ人を呼びに行くと追い廻しの人達が集まって来てくれました。追い廻しというのは酒蔵で経験の浅い若手の職人さんの事です。蔵からフォークリフトが入れる店の手前まで持って来てもらい後は人力で運びます。蔵の冷蔵庫に入っていたので冷たくて冷え冷えで美味しそうです。冷酒って冷たいから喉ごしが良くてスーッと入るんですよね! おっと、私もお手伝いをしなくっちゃ!

郁美(いくみ)さん、これは全部冷蔵庫に良いんですか?」

清政(きよまさ)さん全部冷蔵庫にお願いします」

 私の代わりに母が指示してくれました。それにしても店の冷蔵庫って結構大きかったんですね、私もびっくりです。

 十時になってイベントスタートです。馴染みのお客様が次々といらっしゃいます。

「郁美ちゃん!」

 そう言って手を振るのは杏子(あんず)のマスターです。

「良いんですか店の方は……」

「あっ、それは大丈夫。まだ準備中だし嫁さんが行って仕入れて来いって五月蝿(うるさ)いから」

「それなら良いんだけど」

「まあ、そういう事で冷酒も店で出す事になったから取り敢えずね」

「ハイハイ、毎度ありがとうございます」

 そういう事でマスターも1ダースお買い上げです。店で出すのならもう少し買って行けばいいのに……

「いやー郁美ちゃん、今日も綺麗だね!」

「あっ、ありがとうございます」

 この方は城南酒販(じょうなんしゅはん)の社長さんです。

「この冷酒はうちでも、大量に扱わせてもらうからね」

「はい、よろしくお願いします」

「それと女将さんに聞いたんだけど八代目を継ぐんだって!」

「はい、その時はどうぞよろしくお願いします」

「うん、うんそうだね! その時はよろしくね」

 オープンから沢山の方にお越し頂きました。近所の方は冷酒を早速買って行かれています。近くの酒屋さんからも来て頂いて注文もかなり入っているみたいで大盛況です。でも、清君は大丈夫かな? 慣れない事で疲れてないかな? その後もスタッフは交代でお昼を済ませ、午後も大賑わいです。

 そして、今日のイベントは大盛況で終わる事が出来ました。

「清君、ありがとう。疲れたでしょう?」

「うん、慣れないのと人が多いのとで驚いたよ」

「はい、これ約束の報酬」

 そう言って720mmlの冷酒を二本彼に渡しました。

「えっ、こんなにもらって良いの?」

「良いの、良いの!」

「北御門君、遠慮しないでくれよ。販売の方もきちんと出来てたし酒販会社の社長さんや酒屋さん達にも良い跡取りが出来て良かったですねなんて言われたんだから」

 それを聞いた清君は顔色が変わりました。

「ちょっとお父さん!」

「なんだよ」

「すみませんが、私は八代目を継ぐつもりはありませんから…… 失礼します」

 そう言って清君は店を出て行ってしまいました。

「ん、どうしたんだ彼は?」

 お父さんはやっぱりそう思っていたのね!

「清君!」

 私は慌てて店を出て清君を追いかけますが…… 彼は車に乗って行ってしまいました。今日もお客様からそのような話を聞いてたぶんやるせなかったと思います。そこに来て父があんな事を言うから……

「ちょっとお父さん、どういうつもり!」

「どういうって……」

「お父さんの馬鹿!」

 私はそう言って部屋へ行きました。あれだけ言っているのになんで解ってくれないの…… こんな家もう出て行くんだから……

 私はそう思って必要な物をバッグに詰めて部屋を出ました。

「なんだ、どっか行くのか?」

 父は呑気な事を言っています。母は少し慌てていますが……

「お父さんお世話になりました。私は家を出て行きます」

 それだけ言い残して私は家を出ました。とは言ってもどこに行こうか? 歩いてとなると瀬菜(せな)明奈(あきな)の家しかないんだけど…… そう思いながらも、もっとお願いしやすい人のところへ。

『ピンポン』

 私がチャイムを押すと……

「はい」

「郁美ですけど……」

 そのやり取りの後、ドアが開きました。

「どうぞ!」

恵子叔母(けいこおば)さんすみません」

 なんだか叔母さんは驚いた様子がありません。まるで私が来るのが解っていたみたいです。

「さあ、ご飯にしましょう。それともお風呂を先にする?」

 なんだか普通の対応なんですけど……

「あの、私が来るの解っていたの?」

「ええ、姉さんからメールが来たから」

 姉さん? あっ、私から見れば母の事か! それにしても私の行動は母にはバレバレのようです。だから、あまり心配しなかったのかな…… 母は。

「さあ、たいしたものはないけど召し上がれ」

 叔母さんの家の夕ご飯は鯖の塩焼きです。美味しそうです。

「それで郁美さん、これからどうするの?」

「あっ、二、三日泊めてください。なるべく早くアパートを見つけますので」

「あなたね、家に帰らない気!」

「はい、私はあの家を出ないと結婚出来ないみたいなので……」

 叔母は苦笑しながら私を見ています。

「大体、お父さんが跡取りだのなんだのって言うから清君は怒って帰ったんだよ。私が八代目になるからって言ってるのに」

「まあ、兄さんや姉さんには私からも説得するから明日一緒に帰るわよ」

「えーっ、ヤダ!」

「そんな事言わないの、あなたいくつになったと思ってるの?」

「歳の事は言わないで…… それに、もう清君とはお付き合い出来ないよ、前にもお父さんが跡取りの話をしてるみたいだし」

「解った! それじゃ、こうしましょう。兄さんも姉さんもあなたの事を解ってくれないのなら、私の家にいつまで居ても構わないわ! 仕事だって世話してあげる。どう? 悪い話じゃ無いと思うけど……」

「うん…… 解った」

「それに結婚なんてそんなに良いもんじゃないわよ」

「でも、いつまでもフラフラしてられないでしょう」

「まあ、そうだけど私のようになったら駄目よ」

「うん」

 取り敢えず今日は恵子叔母さんの家に泊まります。あっ、清君にメールを入れとこう。


『清君、今日はごめんなさい。私はあの家が嫌になったので家を出ました。だから、私の事を嫌いにならないで、お願い……』


 私は家を出た事だけは伝えたかったのです。すると直ぐに電話がなりました。

「もしもし……」

『郁美、今どこにいるの?』

「えっ、今は叔母さんの家にいるけど……」

『そうか、家出したって言うから心配したよ』

「だって、お父さん言う事聞かないから…… それに、もう私八代目も継がない事にした。もう、酒蔵がどうなろうと知らない」

『郁美、明日一緒に帰ろう! そして、結婚の承諾をしてもらうから』

「えっ、いきなり?」

『そしたら僕の家で一緒に暮らせるだろう』

「うん…… でも叔母さんがお父さんを説得するって言ってるんだけどね」

『郁美、とにかく僕も夕方になるとは思うけど行くから』

「うん、待ってるね!」

 そこで電話は終わりました。清君からは嫌われていなかったようです。良かった!



とうと、怒って店を出た北御門に郁美は心配で彼を追いかけますが…… 郁美も父に対して怒りが込みあがり家出をしてしまいます。この後どうなるやら…… 木村酒造は七代目で終わってしまうのかな?

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