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姫雫  作者: 赤坂秀一
第二章 不穏
5/20

5 言い争い!

お待たせしました第5話を更新しました!


今回もまたデートですけど…… 色々とお互いの思惑があるようです。それに郁美のお父さんも怖い存在です。どうなることでしょうか……


 今週も清君(きよくん)とデートです。ここのところ毎週なんですけど…… でも、なんだか幸せです。

「なんだ、今日も出掛けるのか!」

 父です。この間は清君に婿養子の話を遠回しに言ったという事で母からかなり怒られてた様ですけど……

「お父さん、また余計な事言わないでよ!」

「余計な事とはなんだ、彼がうちの蔵元になってくれるのなら良い事だろう」

「だから、彼はそのつもりはないから、八代目だって私が継ぐ事になってるでしょう! それとも私に結婚してほしくない訳?」

「馬鹿やろ! そんな訳ないだろう…… 俺はこの蔵をだな……」

「お父さんが余計な事を言って彼と別れる事にでもなったら私、この家を出るからね!」

 そう言って、ちょっと怖い表情で父を睨みつけました。

「おいおい、冗談はよせ! そんな事をしたらうちの酒蔵はどうなる」

「やっぱり、私の事より酒蔵が大事なのね! とにかく余計な事はしないで!」

 最近は父と顔を合わせるたびにそんな話を…… 大体、蔵元の事とか日本酒に関する知識さえ無い人を蔵元にするとか信じられません。

「おい、来週のイベントは手伝えるんだよな!」

「そのつもりだけど」

「よかったら北御門(きたみかど)君にも手伝ってもらえないかな?」

「あっ、それは…… うん、話しとくね」

 そう言って私は家を出ました。清君と以前待ち合わせした喫茶店へ行きます。ここだったら誰にも邪魔されることはないでしょうから…… どうやらもう来てるみたいです。相変わらず早いな……

「おはようございます」

「あっ、おはようございます」

 私の挨拶に彼はちょっと驚いたように立ち上がって挨拶しています。

「ちょっと、驚きすぎ! でも、ごめんね、驚かせちゃって」

「あっ、いや…… コーヒーでいい?」

「うん! 今日はどうしようか?」

「うーん」

 彼はいろいろと考えてくれてるみたいだけど……

「映画でも行く?」

 映画か、まあ、悪くはないけど……

「そうだね……」

 その時でした。

郁美(いくみ)じゃない! どうしたの?」

 瀬菜(せな)明奈(あきな)がいきなり声を掛けて来ました。

「えっ! なんであんた達がここにいるのよ!」

「えっ、偶然だよ」

「そうそう、城北川(じょうほくがわ)周辺の環境美化運動の帰りだよ」

 あっ、そう言えばお母さんが何か言っていたような……

「ここのシェークが美味しいから寄っただけなんだけど……」

 明奈はそう言っています。

「それよりそちらの男性は誰?」

 瀬菜は相変わらずわざとらしいな……

「郁美さんの友達ですか?」

 さりげなく北御門さんが訊いて来ました。

「えっ、うん、山川瀬菜(やまかわせな)平泉明奈(ひらいずみあきな)です」

「あっ、北御門清政(きたみかどきよまさ)と言います」

「はあ、よろしくね!」

 まったくこの二人はどこで情報収集したのか…… 待ち合わせの場所を変えないと。

「それじゃね、郁美!」

「えっ」

 二人はニヤニヤしながら持ち帰りのシェークを片手に帰って行きました。本当に環境美化運動の帰りだったのかな? それより映画だっけ……

「郁美は何を見る?」

 そう言って上映中の映画をチェックしますけど……

「なんだか今ひとつ良いのがないね」

「それじゃ橋本公園(はしもとこうえん)に行きませんか!」

「公園?」

「たまには二人でのんびりするのも良いんじゃないですか!」

 確かに清君の言う通りかな。そういう事で私達は橋本公園へ行く事に……

「それじゃ、お弁当とか買って行かないと……」

「郁美さん、ここのカフェのサンドイッチが美味しいですよ!」

「あっ、そうなの」

 確かに美味しそうなサンドイッチです。

「ここのサンドイッチを買っていけばコンビニには寄らなくていいね」

「そうね、って二人でいる時は郁美でしょう」

「あっ、そうなんだけどまだ慣れなくて……」

 ハア! やっぱりまだ気を遣っているのかな? 私はサンドイッチをテイクアウトで買ったあと彼の車に乗りました。

「あと、飲み物がいるよね!」

「それじゃ、やっぱりコンビニに寄って行きますか!」

「うーん、スーパーの方が安くない?」

「まあ、どっちでも良いけど」

 そのあと、結局コンビニでお茶とコーヒーと紙コップを買いました。

「あっ、レジャーシート!」

 車を降りようとした私の肩に彼は手を置いて……

「レジャーシートはあるから良いよ」

「えっ!」

「車のトランクにあるから」

 そう言って彼は車を出しました。なんだか彼の手が私の肩にさりげないスキンシップ! ちょっとだけ胸がキュンとしました。


 橋本公園に到着して私はレジャーシートを見せてもらいました。まだ、新しいものです。

「なんでこんなの持ってるの?」

「車のトラブルがあった時につかえるかなと思って……」

「例えば?」

「うーん、パンクとかかな……」

「ふーん、パンクだったらスタンドでも修理してくれるよ」

「まあ、そうだけど…… 近くにスタンドがないところもあるから、と言っても使った事はないけどね」

 まあ、どうでも良いけど……

「あっ、ボートがあるよ」

「うん、スワンボートもあるね」

「ねえ、ボートに乗ろうよ」

「えっ、ボート……」

「嫌ならスワンでも良いけど……」

 清君はボートとか乗った事ないのかな? まあ、今ボートのある公園じたい珍しいけど……

「いや、別に良いけど」

「やった!」

 私はたぶん子供のように喜んでいると思います。だって小学生の頃以来だもん。本当に嬉しい。

「それじゃ郁美はボートの後ろに」

「えっ、駄目だよ! 私が漕ぐんだから」

「郁美出来るの?」

「うん、全然問題ないよ」

 そう言って私は清君を乗せて水辺の散歩を楽しみます。

「上手いですね!」

「フフ、そうでしょう! 小学生の頃よくお母さんに連れて来てもらって乗ってたから」

「お父さんじゃないんだ」

「うん、お父さんは酒蔵で忙しかったからね」

 そんな話をしながら私は水面にてをつけ水を感じます。

「冷たーい! 気持ち良い」

 とても良い感じです。そんな感じで三十分のボート遊びは終了です。

 その後は、二人で手を繋いで公園内を歩きます。

「ねえ、私達ってどう見えるかな?」

「えっ、いや、それは……」

 ちょっと、顔が赤い清君だけど、急に私を引っ張って木の陰へ…… えっ、どう言う事?

「ここにレジャーシートを敷いて二人でいれば周りからは見えないよ」

 まあ、確かにそうだけど…… でも、景色も良いしいいかな! でも彼が私の手を引っ張ってくれたからちょっと期待したんだけど…… 人前じゃ無理か…… その後は、二人でレジャーシートに座りゆっくりした時間を過ごします。

「ねえ、清君」

「なに?」

「来週、酒蔵でイベントをやるんだけど…… 手伝ってもらって良いかな?」

 こんな事を言って警戒されたりしないかな……

「何をしたらいいの?」

「ほとんどは接客になると思う。お茶をだしたりとか、新商品の販売とかね!」

「新商品が出るんだ! なんだか面白そう」

 清君はちょっと興味が出たみたいです。

「今回のイベントは新商品の冷酒がメインなの」

「それは楽しみだね」

「清君も冷酒が欲しいなら一本くらいキープしとくよ」

「えっ、良いの!」

「うん、手伝ってもらうんだもんそれくらいはね」

「わあ、楽しみだな」

 ふふ、イベントが終わったら一緒に味わっても良いかな……

「ねえ、郁美!」

「ん、どうしたの?」

「蔵元の件なんだけど……」

「うん」

「本当に継がなくて良いんだよね」

「うん、大丈夫だよ」

「実は母さんもちょっと心配してるんだよ、この間の話もあるから……」

 まあ、そうだよね、うちのお父さんが変な事いうから……

「あっ、お父さんにもちゃんと言ってるから八代目は私が継ぐから清君大丈夫だからね」

「うん、でもそうなるとなかなか逢えなくなるの…… 蔵元の仕事って忙しいんだろう」

「うん、でも大丈夫だから!」

「なあ、大丈夫、大丈夫って言うけど本当に大丈夫なの? お父さんは密かに僕に継いで欲しいとか思ってるんじゃないの?」

 清君はずっと考えていたみたいです。なんだか私は知らないうちに彼を追い詰めていたのかも知れません。

「あっ、ごめんね…… 私、蔵元の事で散々お付き合いに失敗しているから…… だから清君とはずっと一緒にいたいから……」

「……」

 私も、清君も言葉を無くして何も言えません。

「帰ろうか……」

 彼がそう言ったので二人で無言のまま後片付けをしました。帰りの車の中でも何も言ってくれません。なんとなく気不味いです。

 そして、酒蔵に到着しました。私が車から降りると……

「郁美、来週は何時に来ればいい?」

「あっ、九時くらいにお願い」

「うん、分かった……」

 やっぱり気不味いなぁ……

「清君、ありがとう。また来週ね!」

 私がそう言うと彼は無言のまま手を振って帰って行きました。でも、なんだか後味の悪いデートになってしまいました。

今回はなんだか後味の悪いデートになりました。でも北御門さんにとっては重要な事ですからね! やっぱり郁美のお父さんをなんとかしないと……

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