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4月6日の早朝。
その男性の遺体は無残な形で見つかった。
顔面がもう釘まみれでグシャグシャで、釘を顔面に打ち付けた際に飛んだと思われる乾き切った肉片が、至る所に飛び散っていた。
おそらく、改造したエアタッカーで釘をこの被害者めがけて何度も飛ばし続けたのだろう。
殺されたのは深夜0時とみて間違いなく、地面に点々と続いている血液も同様に乾き切っている。
遺体にはほかに、顔面以外で、暴行された形跡はいっさい見られなかった。
現場に駆けつけた捜査1課の人達は『怨恨の線で間違いなし』と判断しようとしたが、それを制したのは、あのキツネのような顔をしたトモイ・ナカミチだった。
トモイは相変わらずその能面のような表情の一切を変えようとはせずこう言った。
「これは素人による犯行じゃない。だって、正面から何度も何度もこうして顔面に釘を打ち付けちゃってるわけだからね」
「でっ、ですが……」
「たとえば白昼堂々、突然目の前に包丁を持った人物が現れたとする。普通は逃げるよね?」
「あっ………………」
「そう、逃げたターゲットの正面にあえて回り込んで、こういった殺害方法を取ってるわけだよ。たぶんこの犯人、足も速いと思うなぁ」
「なら、犯人の知人に、体育会系の人物がいるとか?」
「犯人が知人なら、包丁で刺せる位置まで近づけると思うけどね。まあ、険悪な仲だった場合は、急に接近なんてされちゃうと相手も警戒しちゃうわけだから、遠距離攻撃のできるエアタッカーは便利だとは思うけどね」
「そうか、エアタッカーを改造できる知識を持った人間でない限りは、容疑者からは外れると…」
「そういうこと♪」
「さっそく他の捜査員にも動いてもらいますね」
「で、結局この人誰なわけ?免許証は持ってなかったの?」
「持ってはいましたよ。あとこの男性、昨日の夜に、とある女性に対し、殴る蹴るといった暴行行為に及んでまして………」
「ふうん……つまり、犯罪者が犯罪者に殺されちゃったわけと………」
トモイは少しだけニヤリと笑みを浮かべた。
そんなトモイに対し、捜査1課の刑事はこんな事を言った。
「もしかして……フォーカスモンスターの代弁者がまた現れたと?」
「かもしれないし、そうじゃないかもしれない。まあなんていうか、自粛ウォーカーなんてしゃらくせえもんまで出て来ちゃってるわけだから、たまたまその暴行行為を見ていた誰かが、制裁を加えちゃった可能性もあるかもしれないね」
「正義面した他人……による犯行ですか。まあ、なんというか………」
「しゃらくせえよなぁ、まったく」
と言いつつ、トモイは見抜いていた。
この男性を殺した犯人は、フォーカスモンスターの代弁者なんかでも自粛ウォーカーでもなく、それとはまったく別の、得体のしれないナニカだという事に。