幕間8
4月6日。
今日も碧は朝早く家を出て行ってしまった。
寂しくないといえばうそになるが、昨日と違って、心の軽さがあった。
派遣の仕事は、今日は行かない事にした。すでに断りの電話も済ませてある。
頭に傷があるうえにほっぺも紫の状態なので、雇う側もびっくりしないわけがなかった。それに、けがをしている人間をそのまま働かせると、今のご時世、すぐに問題になる。
まだまだ頭がズキズキして痛い。骨には異常はないとの事だが、それでもやはり、痛みはそれなりに伴うというもの。
大怪我をしたから休みますだなんて嘘くさい理由と思われてしまうかもしれないが、無理に出勤して追い返されるよりかはいいだろうとまといは思った。
「………………………」
やっぱり、60万出してでもカメラを買おう。その分、お墓を買う時期が遅れるので宗政の方で、もっと長く遺骨を預かってもらう事になるが、もうこうなってしまった以上、しかたがなかった。
するとインターホンのベルの音がなった。
インターホンのスピーカーの音をオンにすると、宅急便の人が、お届け物があるとまといに言った。
まといはすぐに1階へと降り、エントランスにて荷物を受け取った。
段ボールに貼られた受取人伝票にはカメラと書いてあった。
まといは自宅へと戻り、段ボールを開けて中を開けると、埃をかぶったカメラの入った箱が出てきた。
その箱のうえには四角いピンクのメモが貼られており、こう書いてあった。
『10億円のキスのお礼』