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フォーカスモンスター ~カメラで撮られたら死ぬ~  作者: 七宝正宗
第七章 蜃気楼のような人
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正解のない選択肢



 4月1日、同日。



 派遣の仕事にもタイプは存在するが、まといがやっているのは即日タイプの、工場内での仕事がほとんどである。

 だからもちろん、時には重たいものを持ったりもする。

 それでもまといは女性という事もあり、優先して軽作業に回される事がほとんどなので、腕力のない男性よりかは恵まれている方だった。

 

 だけど、微熱がまだ続いている。


 その事が原因で、碧とケンカしてしまった。

 悪いのは全部自分である。

 カメラをあの鹿津絵里に渡してしまった罪悪感がストレスとなってまた体調に現れてしまったのだ。

 生活習慣を改善してきたはずなのにこのザマである。

 担当医が、心療内科での診察を勧めてきたのも、こういう事を予想していたからなのだろう。

 

 自分はどうしようもなく心の弱い人間である。


 だって、気になって仕方がないのだ。

 こうしている間も、あのカメラのせいで誰か死んでいるかもしれない。そう思うと胸がチクチク痛んで息が苦しくなる。


 でも、だったらあの時、あの女の子の命を犠牲にしてまでカメラを渡さない方がよかったかどうか問われたら、それもまた正解だとは思えないのである。

 

 だって、あの子に罪なんてないのである。

 そう、あの正解のない究極の2択の運命を引き寄せてしまったのは自分自身。



 「……………………」



 そのうえ、碧にあんな事まで言ってしまって………。

 彼女は何も悪くない。

 いつまでもまといが落ち込んだままだったから、苦肉の策であんな事を言っただけ。

 元気を出してもらいたかっただけなのに……。


 

 謝りたい。



 でも、ただ謝るだけではだめである。

 今のままだと、改善の余地をこちらが示さない限りは、結局はただの堂々巡り。

 ならどうすればいいか……………。



 「…………やっぱりカメラか」



 おんなじタイプのカメラでなくてもいいが、やはりカメラは必要だった。

 カメラがあれば、写真の仕事がまた継続してできる。スマホはもう家に届いたので、これからはよりスムーズに打ち合わせだってできるだろう。

 軌道に乗れば、今の派遣の仕事と同等、いや、少しぐらいは多く稼げるはずである。

 

 とはいえ、画素が荒すぎる安いカメラはだめだ。写真をマンガ用に加工する際、より多くの手直しが必要になってしまう。漫画家サイドは、そういったよけいな時間を省きたいから、いままでまといに依頼をしてきたわけだから。

 

 お金ならある。お墓用に貯めたお金だが。


 100万のカメラだって買える。でも、お墓はひとつ建てるのにも安くても15万するのもあるので、できればカメラにかけるお金は30万以下に留めておきたい。


 明日は休みを入れてあるので、お店を回るにしても明日だろう。



 碧は最近はいそがしいので、いつの間にか深夜に帰って来て、朝にはいなくなってる事が多くなった。



 早く謝りたい。




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