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フォーカスモンスター ~カメラで撮られたら死ぬ~  作者: 七宝正宗
第五章 狭間の狩人
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石黒奈留の場合4



 はたして、石黒奈留はジャーナリストを目指すべきかどうか。

 人が何かを志す時、最初からご立派な理由がきっかけとは限らない。たとえば漠然とした気持ちに徐々に理由付けをしていって、強い意識へと変えていく事もある。


 でも、現実は甘くはない。

 夢を叶えるにしても、強き立場に嫌われたら潰される可能性はいつの時代も同じで、必ずしも才能のある人間が表舞台に立てるというわけでもない。


 石黒奈留は窓側のテーブル席で海鮮丼をつつきながら、深いため息をついたのだった。



 現在18時30分過ぎ。


 今奈留がいるのは、店の中がそこそこ広めのお蕎麦屋さんである。

 何気にうどんの方がコシがあって人気だが、海鮮丼も地元の人からの評価が高い。

 時間帯もあってか、今はそれなりに店内が賑わっているので、テーブル席と言っても、見知らぬサラリーマンの人と向かい合っての相席中である。

 奈留は相席に対してはそれほど抵抗がない。目の前に座っているサラリーマンも、気にせずうどんをすすっていた。



 ふと、カウンター席に座っていた4人家族の後姿が目についた。母、父、娘、息子の順に座っている。

 娘は中学生ぐらいで、男の子の方は小学校低学年くらいの小さな子だ。

 なんでそんな家族が気になったのかというと…。


 「あっ」


 父親が、何度かこっそりと娘のお尻の方に手を回していたのである。

 娘は気にせず海鮮丼を食べている。


 もしかして、親子同士でじゃれているだけなのか。


 いや、普通に考えたら、それなりに成長した娘に対し、じゃれているだけだなんて考えられなかった。

 娘からしたって、いやだろう。ピンポイントでお尻ばかりさわってくるのだから。


 それでもやめろと声に出して言えないのは、周囲に人がいるせいかもしれないし、養われている立場上、強く出れないせいかもしれない。



 許せない。



 相手の気持ちになって考えたら、お尻を触ったら嫌がるかもしれないなんて、わかりきっているはずなのに……。それなのにあえてその行為をやめないという事は、お尻を触るイコール悪い事ではないと本気で思い込んでいる可能性すらあった。


 強い憤りを感じた。

 だから奈留は、顔が映らない程度にその証拠の写真をスマホで撮り、SNSにアップしたのだった。


 

  

  

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