フォーカスモンスターの影
現在時刻:AM5時30分。
相変わらず今日も、空はどこまでも排気ガス色だ。
夜は賑わっているこの繁華街も、今は人の姿はポツリポツリと少なく、コンビニの灯りだけしかなくて薄暗い。
そんな中、やたらと威圧感のあるスーツ姿の男が2名、ビルとビルの狭い隙間へと入っていった。
片方はキツネ目の男で、もう片方はやたらと眼光の鋭いオールバックの男である。
ビルとビルが2つ並んでできたこの隙間の道は、人ひとり分しか幅がなく、壁も汚れているので、好んで通ろうとする者はいない。
そのせいか、風に飛ばされて入り込んだだろうゴミがいくつかあり、ポテトチップスの空の包装紙まであった。
キツネ目とオールバックの男は、その道をある程度奥まで進んでいったのち、ふと立ち止まった。
「ここか?」
「ああ、ここだな」
汚れだらけの壁のはずなのに、ある一部分だけ不自然に洗い流された跡があったのだ。そのせいか、ここだけツルツルと輝いている。
「鑑識の調べによると、微量だが、ここの部分から、血液を洗い流す際に使われたとされる溶液が検出された。つまり、ここには負傷した誰かが寄りかかっていたという事になる」
「城士松さんの読み通りだな」
「でも、血を流した人間の目撃情報はいっさい出なかった」
「フォーカスモンスターはカメラには映らないどころか、密季嬢があのチカラを使ってじゃないと姿は見えないらしい」
「……やっかいだね。にわかには信じがたい話だが」
「だが現実さ。唯一の救いは、密季嬢の弾丸が確実にヤツにダメージとして通った事。今度こそ確実に息の根さえ止めれば、犠牲者を減らせる」
「まあ、その頼みの綱の密季嬢は、まだ目を覚ましてはいないけど」
「どちらにせよ、密季嬢がここまでしてしまった以上、警察庁の連中は動き出すだろう。連中にとって、密季嬢は脅威でもあるから」
「気になるのはフォーカスモンスターが今どこにいるかだけどね………」
ここの周辺の防犯カメラには、手がかりになるようなものは映ってはいなかった。
だから2人は新たな手がかりを得るために別の場所へと移動したのだった。