幕間6
深夜午前1時50分。風椿碧はリビングの電気だけつけたまま、1人、深いため息をついていた。
なぜならまといが帰ってこないからである。
「まさか……私のあの発言にドン引きして行方をくらませたとか?でっ、でもなぁ、仲良くなりたいって言っただけなんだけどな…………」
でも、最近の年頃の子はわからない。
ラインでたまたま長文になっただけでも嫌い認定されるなんて話も聞くので、10代、20代と接する時は、ドライに、浅く、端的にを心掛けた方がいいのだろうか。
だけど碧は、まといの事をまじめな子だと思っている。だから、無断で消えるなんて事だけはしないはずだと確信している。いや、絶対そうだと信じたい。
「うーん、でも気難しいところあるからなぁ。あの程度でもやっぱりドン引きしちゃうこともあるかもしれないし…………ぐぬぬ」
この様子だと、まといが帰って来るまで延々と悩んでいそうだった。
問題のまといが今、どこにいるのかというと……………。
人ひとり分の横幅しかないビルとビルの狭い隙間にて、壁に背を預けた状態のまま、座り込んでいた。
右肩を中心に出血が拡がっていて、左太ももにも、じんわりと血が滲んでいた。
顔色は、真っ青を通り越して真っ白だった。
かろうじて起きてはいるようだが、朦朧としているようで、目は閉じかかっている。
「…………サラ…………ゴメンね………」
いったいまといの閉じかかっている瞳には今、何が映っているのか。
まといは満足そうに笑みを浮かべた。
そして………………。
足音が聞こえる………。
もしかして、さきほどの彼女が追いかけてきたのか。それとも、何の関係もない一般人が、まといの姿に気づいて、表通りの方からわざわざこちらへやって来ているのか。
「……………………………」
別にもう、どちらでもいい。
これが運命だというのなら、受け入れるだけである。