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フォーカスモンスター ~カメラで撮られたら死ぬ~  作者: 七宝正宗
第二十五章 The next life without the focus
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サヨナラは言わない


 ちょっとだけ時間を遡って、前日の7月24日のPM23時過ぎ。



 花房聖からの手紙を読み終えた加賀城は、すぐに城士松に電話をしたのだった。



 「もしもし、城士松さん。夜分にすみません」


 『なんだ?』


 「あなたに頼みたい事があるんです」


 『……………………いやな予感しか、しないな』


 「ええ、その通りです。でも、結局これしか方法はないと思うんです」


 『で、なんだ?』


 「たぶん、そう間もないうちにフォーカスモンスターによる大量殺人事件が発生します」


 『なっ、なんだとっ』


 「右田邸であんな形で人が死んだのは、その日のための実験でもあったのだと思います」


 『……………で、これからどんな惨劇が起こると』


 「たいていのスマホには自撮り機能もついてますし、いまはリモートワークも主流になってきていて、その影響でカメラ機能のついたパソコンもより多く出回るようになりました。なので、それ(・・)を利用すれば、遠隔操作でいっせいに人を殺すのも可能なのかもしれません」


 『そっ、そんなの馬鹿げてる………』


 「でも、右田邸ではそのせいであんなにヒトが死にました」


 『……………………』


 「だけど、黒幕がこれから引き起こそうとしている惨劇はそれだけではないのもすでに掴んでます。フォーカスモンスターを信奉する者同士が集うミーティングが近日中にいくつも開催されるのもさきほど穂刈さんという人が教えてくれました」


 『では、そのミーティングを防げばなんとかなると?』


 「しかし、警察を総動員はしない方がいいでしょうね。目立つし、気づかれて終わるのが目に見えてますので」


 『ならどうしたらいい?』


 「私のプロファイリングが正しければ、このミーティングも、私達の目を惹きつけるために用意された囮のひとつにすぎないのかもしれません」


 『まさか、まだあるというのか………』


 「そう…。そしてその場所こそが、黒幕が用意した本当の舞台(・・・・・)というわけです」


 『なるほど……。だからこそあえて、いくつものサークルを同時開催するように仕組んだ……というわけか。目立たせるために』


 「そう。遠隔で人を殺せてしまうわけだから、わざわざサークルに参加しないでも、そこから私達の動向をうかがえばいいというわけです。私達がAの開催場所に近づいているのを察知すれば、黒幕はその場所からAのスイッチを押し、Cの開催場所に近づいている事を察知すれば、Cのスイッチを押せばいい」


 『なら、どうすればいい?』


 「これはあくまでも2年前の復讐のはずです。だから、円城寺サラに対して誹謗中傷のコメントを書き込んだ人達もまとめて殺したいと思うはず。なので私はどうしてもその場所をつきとめたい」


 『つきとめるって?』


 「黒幕が必ず現れる場所に私もあえて出向くんです。あの黒幕はどうしても私を殺したいみたいなので、私がちゃんと死んだかどうか必ず近距離まで近づいてくるはず」


 『なるほどね……。俺のイヤな予感は的中していたってわけか』


 「でも、万が一のために、あなたにはその場所の特定を続けてほしいんです。ヒントはあります。ある特定の場所に大勢の人間を無理やり連れ込むのは、1人では短時間では無理です。最低でも5人の人間に手伝ってもらっているはずです。つまりは、その場所に不審な大型車両が必ず停まっていたはずなんです」


 『…………なら、無理してお前ひとりで、危険な場所に出向く必要はないと思うんだが』


 「いえ、こちらも黒幕側の計画に則って動かないと、今後の動きが予測できないものに変わってしまっては、対応しきれませんので」


 『………………………』


 「もしも………もしも私が生き残れたら、2年前の返事をあなたに言いたいと思ってます」


 『えっ?』


 「2年前にあんな事が起こってしまったので、結婚の話とかうやむやになってしまったじゃないですか」


 『ああ……そういえばそうだな』


 「気にしてはいたんです。そしてなにげにずっと考えてはいた。今の2人の関係性についてとか、私の今の気持ちとか………」


 『…………………………………』


 「昔も今もあなたには心配させてばかりですが、感謝はしているんですよ。だから、さよならは言いません」


 『…………………………………』


 「これからもよろしくね、かずくん(・・・・)



 そして加賀城は電話を切ったのだった。



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