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フォーカスモンスター ~カメラで撮られたら死ぬ~  作者: 七宝正宗
第二十四章 最後に殺すべきヒト
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追いつめラレ


 7月15日 PM12時過ぎ。



 やっぱり気になったので、ちょっと福神出版に寄る事にした。


 車を近くの駐車場に停め、ビルの中へと入って、福神出版のある階へとエレベーターであがった。

 そして扉の前で足を止め、扉横のブザーを押した。


 「……………………」


 2回ほどブザーを押し、3分ほど待ったが、応答がなかった。


 扉の向こう側からも、物音ひとつすらしなかった。



 普通なら、どんなに居留守を装っても、扉の向こう側から生活音くらいはするはずだ。足音にしろ何にしろ。

 

 ここまでシンと静まり返っているという事は、やはり留守なのだろう。



 

 そんなにいま、忙しいのだろうか。

 だったらなおさら会いたかった。たいした手がかりが掴めていなければ、こんなに家を空けないはずだからだ。


 彼女に会えたらちゃんと言おう。

 一緒に協力して、この一連の事件に終止符を打とうと。



 「ん?」



 遠くの方で、エレベーターが開く音が聞こえた。

 次に聞こえたのは、廊下に響く、靴底の音だった。


 カツーン、カツーン、カツーンと足音を鳴らしながら、その人物はまといの元へとやって来た。



 「……………………」






 加賀城密季だった。



 

 まといは驚きのあまり、心臓を針で突き刺されたような痛みを覚えた。


 それでも、取り乱したら負けだと思い、なるべく表情だけは平静を取り繕ったのである。


 そして加賀城の言葉を待った。



 「…………やっぱり繋がっていましたか。福富神子さんとあなた」


 「……………………」


 「それはつまり、あなたもまた、彼女と協力して徳川達を追っていた、という事にもなります」


 「……………………」


 「でも、戸土間の犠牲者の中に、蒼野なんて名前はありませんでした。なら、別の件であなたは徳川を追っていた事にもなる」


 「……………………」


 「以前、郷田六郎という名の、ゴシップ記事のライターが、とあるオフィスビルの中で不審な死を遂げましてね。爆発物の類がいっさいなかったのに、彼はそこで焼死してしまったんです。そして彼は、鮫山組と繋がっていた。さらにその鮫山組は徳川一派とも繋がっていた」


 「……………………」


 「でもこの郷田は、ある事件とも繋がっていたんです。そう、円城寺サラの事件とね」


 「……………………」


 「彼は円城寺サラの麻薬所持・使用の件に関してデタラメ記事を書いた。あと彼は、児童養護施設の責任者が、彼女の罪を隠蔽しようとしていたとデマも書いてしまった。そのせいで、児童養護施設に対する誹謗中傷もさらにヒートアップしてしまった」


 

 そして、加賀城はあの日、センシビリティ・アタッカーの目を通して、郷田六郎が死んだあのオフィス付近と、あと児童養護施設跡前にて、うねうねとうごめく呪いの念のようなものを確認している。


 さらに、昨日まといは、子供達(・・・)の遺骨を人質にされたと口走っている。


 

 「……………………」

 

 「それにあなた、円城寺サラと同じ高校に通っていましたよね」


 「……………………」


 「そして円城寺サラの冤罪は、徳川一派のせいでもある。動機は充分にあるという事です」


 「……………………」


 「あとあなた昨日、直江美加登の事も殺そうとしませんでしたか?」


 「……………………」


 「たしかにあなたは昨日、カメラもスマホも持ってはいなかった。でも、あの建物の中には、実は樫本さんのスマホが転がっていたんです。まあ、このスマホ、使い物にならないくらいに壊れてましたけど」


 「……………………」


 「おかしいですよね?なんで彼のスマホがあんなところに転がっていたのか。樫本さんは、あの時にはすでに亡くなっていたのに」


 「……………………」


 「あと、このスマホからは、樫本さん以外の指紋が1人分出ています。ここまで言えばもう、充分ですよね?」


 「……………………」


 「あのスマホは銃によって破壊されていた。それはつまり、あなたが、あのウエストポーチにしまっていたモノをわざわざ取り出したからに(ほか)なりませんよね。でないと、スマホだけあんな形で壊されたりはしない」


 「……………………」


 「スマホのカメラ機能を使って殺そうと(・・・・)思わない限りは、あんな緊張下の中で、スマホをウエストポーチから取り出そうとも思わないはず」


 「…………でも、そのスマホだけでは、絶対的な証拠にはなりませんよね?」


 「………まだしらばっくれるつもりですか」


 「それとも、私がそのスマホのシャッターを切った証拠の方は出てきたんですか?樫本さんのスマホ自体は壊れてしまっても、アイクラウドのストレージかグーグルのドライブがスマホと同期していれば、そっちの方にも写真は保存されると思うんですけど、そういった証拠の方は出てきたんでしょうか?」


 「……………………」


 「出てきてないはずですよね。だってあの時誰も、シャッターなんて切っていないのだから」



 たしかに彼女の言う通りだった。

 しかし、彼女はあの時、美加登を殺そうとした。この事に関しては、この状況的証拠から見ても間違いないというのに。




 この証拠ひとつだけでは、自白を引き出すにはいまひとつだったみたいだ。



 「…………………」



 するとまといは、加賀城の横を通り過ぎ、建物の外へと出ていってしまった。

 そして駐車場に停めていた車に乗り、スーパーマーケットへと車を走らせたのだった。



 でも、その時のまといに、心の余裕なんてなかったのである。



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