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フォーカスモンスター ~カメラで撮られたら死ぬ~  作者: 七宝正宗
第二十三章 デウス・エクス・マキナ
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不穏の拡大 RE2


 7月11日。



 相変わらず今日も、朝っぱらからTOUTUBERの男女数名が、赤橋署周辺をうろついていた。

 

 もちろん彼らの狙いは加賀城を追い掛け回す事。

 コロッケ希望潰しをいまだに根に持っている人達がいるというわけである。


 7月5日に、TOUTUBERのひとりがわざと彼女の体を突き飛ばし、頭にケガまでさせた事件まで起こっているが、それでもネットでは『言葉狩りをおこなった天罰』という意見が思いのほか多かった。


 みんながみんな加賀城に敵意を向けているというわけではないが、たとえ少数だったとしても、こうして警察署周辺をうろつかれると、迷惑このうえなかった。

 

 この前加賀城にケガを負わせたあのTOUTUBERも逮捕はされたが、『わざとじゃない』『たまたまぶつかっちゃっただけ』『たいしたケガでもないくせに騒ぐな』と開き直っていた。



 また同じような事件が起こる可能性もあるため、出入り口前に立っている制服警官はとてもピリピリしていた。


 そんな中、加賀城は何食わぬ顔で赤橋署の建物の中へと入った。もちろんセンシビリティ・アタッカーを使って、気配を消したうえでだ。

 いまだに頭の傷は癒えないが、トンカチで叩かれたようなあの頭痛もすっかり治まったのでもう大丈夫だ。

 

 「……………………」


 そして加賀城は精神科警課のフロアに到着した。


 最近は城士松に精神科警課の仕事を任せっきりだったが、気になる事ができたので、デスクのうえにあったパソコンの電源を入れ、最近の事件についての詳細が見れるデータベースにアクセスした。


 「…………………」


 加賀城のデスクのうえに、コーヒーの入ったマグカップが置かれた。

 いつもの女子3人組の1人が気を使って淹れてくれたのだ。


 「課長、なにか気になる事でもあるんですか?もしかして昨日の事件についてですか?」

 

 「…………ええ、恐れていた事態が、案外早くやって来てしまったようです」


 「…………やっぱりそうなんですね。なんとなく察してはいたけれど、信じたくはなかった」


 

 信じなければ、安心していられるからである。

 

 だけど、目を背けてはいけない。

 警察組織に身を置いている以上は、ちゃんと向き合わないと。



 加賀城はデータベースに載っている事件の詳細を読み上げた。



 「21時30分過ぎに、建設現場で倒壊事故が発生。その事故のせいで高校生男女数名が巻き込まれ、死亡」


 「昨日起きた事件ですね。手抜き工事のせいだって騒いでた人もいたけれど、あんな夜の時間帯に、たまたま彼女達が通りかかったタイミングでの倒壊。偶然にしては出来過ぎてますしね」


 「それに、7月9日にてもう1つ、タイミングよく案内標識が落ちてきてしまったがために、その標識が車に直撃。ホストが即死しています。そのせいで車は車線を大きくはみ出し暴走。巻き添えを喰らって重態に陥った者も複数名」


 「偶然がこうも立て続けに発生してしまっている……。やっぱり意図的な感じがしますね」


 「なので、この事件のほかにも似たような事件がないか調べに来たというわけです」

 

 「なるほど」


 「私の考えが正しければ、コロッケ希望というワードに代わる新しい手段がもうすでに生まれているはずです。それを見つけ、対策を考えないといけません」


 「じゃあまずは、そのワードが何なのかをつき止めないとですね」


 「そんなに時間はかからないと思います。この事故に巻き込まれた被害者に対し、強い恨みを抱いている人物を何人かピックアップし、彼らのSNSにそれらしいワードが書き込まれていないか探し出せばいい」

 

 「わかりました。じゃあ、私も手伝います。二野前さんが連れてきてくれた特別捜査官のおかげで、時間に余裕がありますので」


 「助かります」



 という事で、さっそく2人で作業に取り掛かった。





 そして数時間後のPM15時40分過ぎ。




 コロッケ希望に代わるワードがいったい何なのか、2人は思ったよりも早くつきとめる事ができた。でも2人は、ほぼ同時に深いため息をついた。そして頭を抱えた。

 

 2人とも、がっかりとした表情をしている。



 「……課長、どうします?これってどうしようもないですよね?だって絵文字ですよ?」


 

 絵文字。

 ポップで黄色い丸い顔の絵文字のほかに、食べ物、犬猫、ハートマーク、注射器のマークなど多種多様に存在する。



 コロッケ希望に代わるワードとは、この絵文字を使っての、骸骨マークとカメラマークを横に2つ繋げたものだった。


 なぜ2人が頭を抱えているのかというと、さすがに絵文字を使われてしまうと、嘱託(しょくたく)殺人(さつじん)であるという証明が難しくなってしまうからである。


 文章のデコレーション目的で適当に絵文字を使っているだけの人もいるので、どれが悪意のある書き込みなのか特定するのは100%不可能というわけだ。

 それに体調が悪い時のわかりやすい表現としても、骸骨マークを使う人もいる。


 これはただのデコレーションだと言い訳されてしまえばそこでおしまい。



 「課長、どうしましょうか?」


 「たとえば、SNS上でコロッケ希望=骸骨+カメラとほのめかしている文章があれば、またLIVE会見を開いて、骸骨とカメラの絵文字を使わないように呼び掛ける事は可能かもしれませんが………」


 「でも、みんながみんなそれに従うとは限らないし、規制をかけるとしても時間がかかりますね。」


 「そうですね。絵文字にも著作権がありますし、難しいですね」


 

 フォーカスモンスターを1人残らず逮捕してしまえば、どんなに骸骨とカメラマークが浸透しようが、被害者はでなくなる。



 問題なのは、もう1人のフォーカスモンスターがいったい誰なのかという事。



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