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フォーカスモンスター ~カメラで撮られたら死ぬ~  作者: 七宝正宗
第三章 風椿碧と蒼野まとい
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蒼野まといサイド3

 



 6月の下旬。



 排気ガスで真っ白な空の下を、まといは1人、歩いていた。

 疲労のせいか、陽の光が眼球をじわじわと刺激してきて不快だった。

 気を抜いてしまったらきっと、すぐに倒れてしまうだろう。

 今、なんとかこうして生きていられるのは、復讐心がいまだに(たぎ)っているからだった。

  

 でも………。


 別に好き好んで人殺しをしているわけではない。

 できれば、彼らが自主的に反省して罪を償ってくれていたらどんなによかったか…。


 だけど、いままで殺してきた人達は、結局言い訳ばかりしかしなかった。

 誹謗中傷をエスカレートさせた原因は認めても、イツキくんが殺人にまで手を出したのは、あくまで彼が個人的に選択した事だと言い張った。

 イツキくんを精神的に追い詰めたのは確実に彼らである。彼らが騒ぎさえしなければ、大学の合格の件も、取り下げられたりはしなかったのだ。

 

 奴らは人殺しだ。絶対に許さない。

 

 

 「ねえ、フォーカスモンスターって知ってる?」



 中学生くらいの男女が、楽しそうにそんな話題で盛り上がっていた。

 最近やたらと事故死が多いので、全部フォーカスモンスターのせいにして話のタネにしているというわけである。



 ふと、スマホの着信音が鳴った。

 まといがいま所持しているスマホは、こちらの位置情報がバレないように蕪山がカスタマイズしてくれたアンドロイドタイプのものだ。



 スピーカーの音をオンにすると、いったんそこからジジジ…とノイズが奔り、次にそこから、厳格そうな低い男の声が発せられた。




 『…………もしもし……私が川藤秀治だ』



 「こんにちわ、川藤秀治さん…………」



 『ふん、わたしのスマホにハッキングしてあんなものを送ってくるくらいだから男だと思っていたが、女だとはな。まあいい。ひとつわかってほしいのは、私もそんなに、大手を振っては歩けない身分なんだ。奴らとはあくまで対等な関係として横で繋がってはいるが、実はそうじゃない。私は切り捨てられる側の人間だ。つまり、奴らについては知らない。奴ら、いつもとっかえひっかえ連絡役を変えては、こちらに正体を悟られないようにしているからな』



 「……じゃあ、細貝さんの死の隠蔽については?」



 『……………それは鮫山組の仕業だ。細貝は鮫山組の駒の1人だった。そして、鮫山組には公安の人間がマークについていた。だから、細貝の死があかるみになると、鮫山組の壊滅の危険があった。だから彼らはその事件を隠蔽した。黒幕はいっさい関係ない』



 「そんな………………」



 『お前が追っている黒幕はバカじゃない。そう、例えるなら蜘蛛の巣だ。鮫山組から何かそれらしい証拠が出てきたとしても、第2、第3の捨て駒にしかたどり着けない。それほどまでに、私達の関係は複雑化しているんだよ』



 「………………………」




 めまいがした。せっかくの賭けに出たというのに、結局は黒幕にカスリすらしなかったというわけだ。

 不甲斐ないとはまさにこの事を言うのだろう。

 あのカメラも今は手元にない。




 『君は殺し屋か?』



 「えっ?」



 『このカメラに写っている連中はもれなく、青い雲のようなモヤが、体の部位のどこかにかかっている。たとえばこの女性、新聞では、うえから落ちてきた鉄骨が当たって死んだと載っていた』



 「そ…………それは…………」



 『正直殺し屋には関わり合いたくはないが、いまの状況にも疲れてはいる。金のためにやってきた事とはいえ、常に命を握られているようなものだからな。だから、私がお前に機会を作ってやる』



 「えっ……」



 『政治家や官僚を直接当たれ。政治家がよく談合などに使っている料亭を教えてやる。そしてそこで働けるよう、手配もしてやろう。あとはお前が勝手に調べろ。殺したければ勝手に殺せ』



 「いいんですか?」



 『あえてもう1度言うがヤツラはバカじゃない。愛人にでもなる覚悟で探らなければ無理だろうな。それと、1ヶ月や2ヶ月で突き止められると思うな』



 「…………覚悟はできてます。それと、例の土地の権利書についてですが……」



 『それは……すべてが片付いてからでいい。下手にそんなもの手にしたら、すぐに感づかれるからな』




 そして川藤はそこで通話を終了させた。



 



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