ミチルとワカコ1
ねえ、フォーカスモンスターって知ってる?
そのモンスターにもし写真を撮られてしまったら…………。
絶対に死ぬんだって…………。
1
ミチルが小学2年生の頃は、まだそんな噂など存在してはいなかった。
来栖ミチル。
ミチルは比較的誰にでもハキハキと喋れる女の子で、いじめとは無縁の、みんなに好かれる存在だった。
ミチルが音楽に興味を持ったのは小学2年生の頃だった。
ミチルの気に入ってる芸能人達がかなりの確率でアムロちゃん好きだった事から、どんな歌を歌うのか気になったのがきっかけだった。
そしてミチルは、アムロちゃんの曲を聞き、衝撃を受けた。
意識がまるごとその歌に持っていかれる激しい感覚を、初めて覚えたのだった。
これが、圧倒的歌唱力というやつだとミチルは思った。
さらに、アムロちゃんの歌を聞き終わった後の高揚感がなんとも心地が良かった。
そしてミチルはこう決意した。
自分もこういう世界で大勢の人達を感動させたい。
でも歌手の道は考えてなかった。
どんなに背伸びしても自分の歌唱力は並の並でしかないと自覚していたからだ。
だからミチルは、小学2年生から作詞&作曲家の勉強を始めたのである。
2
ミチルがワカコとはじめて出会ったのは小学4年生の2学期の頃だ。
ワカコは転入生としてミチルの住む町へ引っ越してきたのである。
そして2人はクラスメイトになった。
ワカコの容姿を簡単に説明すると、サラサラの黒髪ロングが似合う、顔の整った女の子である。
でも性格は内気だった。というより、対人恐怖症といっても間違いないほどに、人との会話に恐怖を感じているようでもあった。
これがもしマンガの中のお話だったら、内気な彼女に陽気なクラスメイトが話しかけ、打ち解けるなんて展開もあったかもしれないが、現実はそう甘くはない。
ワカコが過去にどんな事情を抱えていようとも、今いるクラスメイト達に『一緒にいても楽しくはなさそうだな』と判断された時点でおしまいなのだ。
だから結局は、ワカコはそのクラスで孤立してしまった。
それでも、イジメようとする者がいなかった事だけが、ワカコにとっての救いだった。
3
そしてミチルは、ふたたび衝撃を受ける事になる。
そう、あれは合唱コンクールの練習の時である。
みんなの声に重なるようにしてわずかに聞こえたワカコのかすれた声に、ミチルは意識を持っていかれたのだった。
でも、他のクラスメイト達は気づいてはいないようだった。
まあ、それも当然かもしれない。普通はただのかすれた声にしか聞こえない。
でも、ミチルは気づいた。
ワカコには天性の才能がある。
だからミチルはワカコに話しかけた。
「ねえ、私と組まない?」
「えっ?」
ワカコは当然困惑した。
今まで話した事もない女の子が、突然そんなことを言ってきたのである。
二つ返事で『喜んで』とは言うわけもなかった。
それでもミチルは何度も何度もワカコを誘い続け………。
そして…………、8年の月日が流れる。
ミチルとワカコは高校3年生になった。