幕間4
加賀城は再び、児童養護施設跡前に来ていた。ちょうど近くに用事があったからだ。
フォーカスモンスターを殺す云々については、本気で取り掛かるつもりはない。
フォーカスモンスターが人かどうかはまだわからないが、もし本当に人だった場合は、これはとんでもない話になってくる。
だって、あのタイミングで警察庁の方々も動き出したわけである。陰謀があるのは確かだった。
だから、もしもこの話に乗っかってしまうと、だいぶまずい立場に立たされるのは目に見えていた。
まあ、鮫山組を潰すなんて行為さえしなければ、人殺しを頼まれる事もなかったかもしれないが…………。
とりあえずは様子見である。あくまで加賀城は精神科警課の人間だ。人殺しなんかよりも、1人でも多くの人を、自殺という未来から救いたかった。
「……………………………」
でも、可哀想だとは思ってる。
ここで亡くなった27人の人達は、無理心中で亡くなったようなものだからだ。
そういえば、気になる事を、さっき、駐在所の警察官から聞いた。
例の、ここで亡くなった男子高校生の友達と思われる数名の男子が、行方不明なのだそうだ。
もともとその男子高校生達はまじめなタイプではなかった。だから、2・3日もすれば帰ってくると両親達は思っていたらしい。だが、もう1週間も経過している。
1週間…………。
たいしたお小遣いももらっていない高校生だったら、1週間、家にも帰らずに遊べるなんてなかなかできない。ホテル代だってバカにはならないからだ。だったら、素直に家で夜を明かした方がいい。
いや、もう考えるのはやめよう。
精神科警課の仕事に集中しないと、本気で城士松和麿に怒られそうだった。
すると、さきほどの駐在所の警察官がやって来る。
「加賀城警視。ご苦労であります」
「いえ、別に行方不明について捜査しているわけではないのですが………」
「ですが、警視は探し物のプロですよね。精神科警課の仕事のついでに調べてはもらえないでしょうか」
「…………そうしたいのはやまやまなんですが…………」
もし、その行方不明の男子高校生達がすでに他界していたとかなら、加賀城の能力で居場所を特定するのは困難だった。まあ、いつ死んだかにもよるが………。
実は、死者の残留思念を感じ取る事もできるが、生きている人間が発する感情を感じ取るのとは勝手が違う分、かなりの近距離で力を使わないと、どの残留思念が誰のかはわからない。
「………………………」
加賀城は眉間に深いしわを刻んだ。お線香の匂いが、きつすぎるぐらい漂っていたからだった。
それについては駐在所の警察官はこう答えた。
「まだ、近隣住民の人達が怖がってますので、たびたび直江寺から住職がやって来ています。そのせいかと」
「なるほど……………」
加賀城は深いため息をついた。
あの時見えた呪いの念までかき消されてしまっている。これでは、ここから手がかりを掴む事は不可能だった。