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フォーカスモンスター ~カメラで撮られたら死ぬ~  作者: 七宝正宗
第十三章 くすんだはずの炎
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扉の外側 真壁サイド



 5月22日の夜。PM19:00



 京王赤橋プラザホテルの最上階の部屋で、マカベはごくりと息を呑んだ。

 ELSAが関わっていた別荘で白骨遺体が出てしまったという事実は、マカベにとって、死の宣告も同じだった。


 本当は、あんな場所から遺体なんて出るわけがなかったのに。

 ELSAや赤佐内建設もろとも窮地に立たされるような場所に、わざわざ埋めようとも思わない。


 ようは、はめられたというわけだ。それも、遺体の本当の隠し場所を知っていた何者かによって。


 そして、“すべてがマカベのしわざ”といったカバーストーリーのもと、責任を、そして罪を押しつけられようとしている。


 こうなってしまった以上は、裏切り者を道連れにして共に逝きたいところではあるが、こう先手を打たれてしまっては、どうしようもなかった。


 

 この部屋の中にいれば、まだ安全ではあるが……。

 防犯カメラは廊下にしっかりとついているので、そう易々とは近づけないだろう。

 誰かがホテルの従業員に変装して近づいてきた場合に備え、ある特定の従業員しかルームサービスに来させないようにはすでにしてあるので、扉越しでの声の確認を、きちんと怠らなければ、大丈夫だろう。

 警察が逮捕状を手に、乗り込んで来さえしなければ、まだ猶予はあった。


 しかし、いったいどうすれば………。


 

 「ん?」



 テーブルのうえに直置きされていたコードレスホンに電話がかかって来る。

 いったい何者なのかと思いながらも、真壁は電話を取った。

 すると、電話越しから、従業員以外の声で、こう聞こえてきたのだった。



 『トモイか城士松に頼れ』


 「なっ、お前は、お前はいったい」


 

 ボイスチェンジャーで加工された声のせいで、この人物がいったい誰なのか、わかりそうになかった。

 

 『15年前、お前はまだまだ下っ端だった。だから、徳川へとつながる証拠を何ひとつ持っていないのはわかってる。だけど、お前も同罪だ。この15年間、ずっと口をつぐんでいたんだからな。でもあの日、戸土間でいったい何が起こったのか、その真実を語るくらいならできるだろう』


 「なっ………」


 『本当なら、お前の額を拳銃でぶち抜いてやりたい。だけど、それはしない』


 「ふん、つまりは、俺の生死を簡単に選べる立場にいるって事か……。たく、俺も堕ちたものだな」


 『だけど、徳川を殺すタイミングは今じゃない。もっとヤツを窮地に立たせてからじゃないと、別の人間がトップとしてすげ変わるだけ』


 「なら、私にどうしろと」


 『さっきも言っただろう?戸土間の真実を語れ。TOUTUBEを使ってでもいい。たとえ証拠がそろっていなくても、多くの人がその動画を見れば、徳川へと疑惑が向けられる事になる』


 「くっ」


 やはり、その方法でしか、道連れにできないという事か。

 


 

 コンコン。



 ノックの音が鳴った。

 真壁は受話器を持ったまま、扉越しの相手に対し、何者だと尋ねた。

 すると、扉の向こう側の相手は、トモイと名乗ったのだった。


 「………………」


 真壁は、トモイの顔は知っていた。

 猿手川殺害の罪を着せた相手の顔くらいは覚えていた。

 だから真壁は、本物かどうか確かめるために、ドアについていた覗き穴で、外に立っている人物の顔を見たのだった。



 



 トモイではなかった。




 

 そして、扉の外側に立っていたその人物は、にやりと口元に笑みを浮かべた。

 その時になって真壁はようやく、してやられたと思ったのだった。

 

 簡単に扉の近くに立ってしまう事が、いかに危ない事なのかを、今になって、ようやく思い出したのである。


 この電話の人物も、おそらくグルだろう。


 「チッ!!」


 真壁はすぐに扉から遠ざかろうとしたが、一直線に飛んでくる弾丸を避け切れる自信なんて、もちろんなかった。

 






 そして………扉の外側で発砲音が5発、聞こえたのだった。






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