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フォーカスモンスター ~カメラで撮られたら死ぬ~  作者: 七宝正宗
第十三章 くすんだはずの炎
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蒼野まといの現在6


 5月6日 23:39


 

 自室にて、福富神子からの電話をとったまといは、鹿津絵里が逮捕されたというニュースを聞いたのだった。

 カメラも一緒に回収はされたらしいが、そのカメラは今年発売されたタイプのもので、ニセモノだった。


 だから、純粋には喜べなかった。

 彼女以外の人間に渡ってしまった時点で、もう探しようがなかった。

 こうなってくると、自首すべきタイミングをいつにすべきか、悩みどころである。

 誰かがあのカメラを使って人殺しをする可能性がまだ残っている限り、その元凶である自分だけが警察に逮捕されに行っても、解決した事にはならないからだ。


 フォーカスモンスターによる殺人が2度と起こらないといった内容の報道が、テレビできちんとなされない限りは、終わる事なんてできない。





 とりあえず、自分の部屋でまといは、趣味の時間に没頭する事にした。

 どうすべきか、考えをまとめたかった。



 まといの部屋に入ってきた聖は、ほぼ完成間近のノイシュヴァンシュタイン城を見て、首をうんうんと頷かせた。


 まといはいま、城の周りに土を敷き、山や段差を作ったりして、背景を整えている途中だ。



 「聖、おかえりなさい。ご飯はもう食べたの?なんだったら今から作るけど?」


 「ううん、食べてきたから大丈夫だよ」


 「そっか……」


 

 まといは深いため息をついた。



 「どうしたのまとい?なにか気がかりな事でもあるの??」


 「……ちょっとね……色々とね」

 


 あのカメラの件もそうだが、碧の件もどうにかしなければならない。

 なんとなく圧に押される形で碧の家政婦としての口契約を結んでしまったけれど、蒼野まといとしてではなく、赤坂(あかさか)(まどか)として向き合わないといけないわけで、つまりこれからも、あのカツラとメガネ、さらにはマスクまでつけ続けないといけない……。

 

 

 「聖。あのさ、人の感情ってさ、思い通りにいかないよね」



 やだって言えば、碧と2度と会わずに済んだというのに、なぜ、その簡単な一言が言えなかったのか。

 すると聖はこんな事を言った。



 「そりゃあそうだよ。よくさ、芸能人の離婚の理由とかで“性格の不一致”があげられるけど、性格なんて、もともと誰1人として一致なんてしてないんだよ。だから、ドラマや漫画のキャラクター達のように、読者の思い通りの展開には動いてくれないし、作者の都合で、簡単に身近な相手とくっついたりもしない。好みや考え方が同じように思えても、微妙にズレは必ず出てくる」


 「微妙な……性格のずれね」


 「育った家庭によっては、常識に対しての考え方も違ったりもするよ。便座のフタは必ず閉めるのが常識だったりね………」


 「つまり、目玉焼きは醤油派か、ソース派か、みたいなもの?」


 「そうそう、そういう事。まあ、私からしたら、イチイチそんな細かい事で論争なんてしないで、各々好き勝手にかけてればいいじゃんって思う」


 「フフッ、たしかにね」

 

 「あと、きのこたけのこ戦争ね。あれって、争う必要あるのって思う」


 「どっちもおいしいよね。たけのこの方は、コーヒーと一緒に食べるのが、わたし的にちょうどいい。きのこの方は、冷凍庫でいったんチョコの部分を固めてから食べるのが好き」


 「へえ、そうなんだ。じゃあ、コアラのやつも、冷やして食べる派?」


 「うん。だいたいね」


 「じゃあ今度、チョコで有名なあのお店に行こうよ。今、季節限定でね、キンキンに冷えたアイスチョコレートを削ったパフェがあるんだよ」


 「えっ、そんなのあるんだ。あとでネットで調べてみるね」



 

 なんだか……、話がすっかり逸れてしまった。

 でも、こういった話で盛り上がるのは結構楽しかったりもする。


 


 「そだ、話は急に変わるけど、一緒に今からお風呂、入ろうよ」


 「えっ!!!!!!!!!」


 

 まといは目を大きく見開かせ、顔一面を真っ赤にさせる。

 


 「ハハハ♪そんなに驚かなくてもいいじゃん」


 「いや……あの……その………」


 「まといの全裸はあの時あのホテルで1度見ちゃったし、別にいいかなって」


 「………その……たしかに見られたりはしたけど……でも、一緒に入るとなると…」


 「ん?じゃあ、高校の修学旅行ではどうしてたの?みんなと一緒に入れなかったりとかした?」


 「……別にそれは、特に気にしないでみんなと入ったけど、でも、恋人同士となると、意識しちゃうというか……」


 「そっか。意識してくれてるんだね♪」


 「…………うん」


 「なら、お風呂はひとりで入るね」


 「うん、ごめんね」


 「いいよ。そのウブな反応、かわいかったから♪」



 そして聖は部屋から出ていった。



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