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フォーカスモンスター ~カメラで撮られたら死ぬ~  作者: 七宝正宗
第十二章 遅咲きの桜の真ん中で
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せめて、自分にできること



 5月5日 11時過ぎ。



 福神出版にて、福富神子が昨日の殺害予告の件について記事を書いていると、またまといが、アポなしでやってきた。

 まといとは、朝、話をしたばかりである。

 いいかげん、アポなしについては怒るのも飽きてきた。



 「なあに、蒼野さん。手伝いでもしに来たの?」


 「手伝う事があるのなら喜んで手伝いますけど、違います」


 「じゃあなに?」


 「カツラ持ってませんか?ウィッグともいいますけど」


 「は?もしかして円形脱毛症になったとか?」


 「違います。変装がしたいんです」


 「なら、私が前にあげたウィッグをつければいいじゃない」


 「それじゃあダメです。あの髪型はもう碧さんにバレてしまっているので使えないんです」


 「……………ねえ、なにするつもり?」


 「家政婦です。碧さんは今、まともに食事もとっていないみたいなので心配で」


 「ふうん。なるほどね」


 「だから、新しいカツラ……じゃなかった、ウィッグを被ってマスクすればバレないんじゃないかなって……」


 「………わかった。じゃあ、これあげる。赤毛で、少しウェーブがかったロングヘア。ヘアゴムで2つ分けとかにして髪形を変えれば、家事してる最中でも邪魔にはならないでしょ」


 「わぁ、助かります。あっ、手伝ってほしい事があれば手伝いますよ」


 「ううん、いまは大丈夫」


 「そうですか。じゃあ行きますね」



 そしてまといは部屋から出て行った。



 「……………」


 福富神子は、コーヒーをマグカップに注ぎ、一息ついた。


 「このままだと………バッドエンドになる………」


 まといが手に入れてくれたあのUSBを使って、ELSAについて調べていたら、とんでもない事がわかった。

 かつてのELSA銀行と、今はなきBECKという名の会員制ナイトクラブとの関係。

 このBECKでは、脳みそまで腐りきった政財界の要人達が、借金苦で奴隷と果てた女達を使って、毎日のように“胸糞悪い遊び”をおこなっていたのだ。

 この被害者達の何人かには、ある共通点があった。

 そう、彼女達を奴隷へと仕向けた人物との共通点である。

 そしてその人物は、罪から逃れるために、円城寺サラに何もかも押しつけ、彼女を死に追いやった。

 

 本当ならこの事をまといに言うべきである。冤罪を裏付ける証拠としては弱いかもしれないが、まといを復讐の鬼へと追いやった元凶のひとりでもあるから…。


 でもわからない。言うべきか、口をつぐむべきか。


 人を散々殺してきた彼女にこんな同情、本当は不要なのかもしれないが、それでも、告げた後の事を考えると、こんなの、あまりにもむごすぎだった。

 


 「……私も、一歩間違ってたら、あんな風になってたのかもしれないわね」



 でも、まだ踏みとどまってる。

 もしも、この件がすべて終わったなら、彼女のような人間をなるべく出さないための、そういった運動をしようと思った。



 

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