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フォーカスモンスター ~カメラで撮られたら死ぬ~  作者: 七宝正宗
第十二章 遅咲きの桜の真ん中で
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カメラの行方


 5月5日 AM6:02



 聖が出て行ってからまといは、洗い物を済ませて部屋に戻った。

 すると、福富神子からのラインの通知が来ていた事に気づいた。


 そのラインのコメントには、何時でもいいので電話で話がしたいとあった。

 昨日は、碧に疫病神と言われてしまったのがあまりにもショックだったので、黙って1人で撮影スタジオから出てきてしまったのだ。福富神子からしたら、かなり失礼な話である。せっかく協力してあげたのに、なんの一言もなしのまま、姿を消されたわけだから。


 まといはさっそく電話をかけた。



 「福富さん、ごめんなさい。昨日は勝手にいなくなって……」


 『………そうね。人として最低よね。一応私も、リスクを負ってあなたに協力したわけだしね』


 「はい、まったくもってその通りです」


 『………また意識がない状態のまま歩き回ってんじゃないかって、心配になった』


 「いいえ、それは違います。あの撮影スタジオからいなくなったのは私の意志です。碧さんにこっぴどく叱られてしまって、へこんでしまったので1人になりたくて……。ほんと、子供ですよね、私って………」


 『じゃあ、あなたの意志じゃないのね?』


 「えっ?なにがですか?」


 『あなたの事を、あの黒いカメラで撮った男、死んだわよ』


 「………えっ………」


 『まあもともと、あのカメラにチカラが宿ってしまったのは、あなたがきっかけなわけだし、ある意味では“必然”なのかもしれないけどね。でも、事態はより複雑になってしまった』


 「というと?」


 『鹿津絵里が、あの男から、ちゃんとカメラを回収できたかどうか』


 「……………」


 『あなたをあのカメラで撮っても殺せないといったケースを、はたして、想定していたかどうかね………』


 「もし想定していたならば、あんな方法で碧さんを殺そうとするのは、リスクがあまりにも高すぎると?」


 『ええ。知らなかったんじゃないかと私は思ってる。ああいうタイプは、どう状況が転ぼうと、自分が得するよう、計画を組み立てるはずだから』


 「………………」


 『だから、あわよくば、あなたが風椿碧をかばって死んでくれたらラッキーと計算していたんでしょうけど、計画が狂ってしまった』


 「警察が遺留品として回収していたとしたら、もうあのカメラで人が殺される事もなくなるかもしれませんね」


 『そうね。たまに、ケチな刑事が、遺留品を横流しして売ったりもするけれど、今はスマホで写真を撮る時代だし、わざわざあのカメラをネコババして、使おうとする人は少ないんじゃないかしら。価値のある一点ものってわけでもないしね』


 「そうですか………」


 『まあ、まだ安心はできないけどね』


 「……………………」


 『アイツとも連絡が取れないし………』


 「あいつ?」


 『いいえ、なんでもないわ。それよりも、警察にカメラが回収されていたとすれば、鹿津絵里の件はもうすぐ解決するかもしれない。私がなんとか手をまわしてみる』


 「………それはうれしいですね。私が蒔いてしまった種なので、自分の手でなんとかしたかったとは思いますけど」



 誰かに頼らないと解決できない事があまりにも多すぎて、情けなくなってくる。

 でも、仕方のない事だった。

 ひとりで意地を張り続けても、状況は悪くなる一方だからだ。


 あとは、警察庁を爆破したとされる犯人の正体を暴くだけだ。でないと、自首する事もできやしない。

 


 『ねえ、蒼野さん。すべてが終わったら……自首するの?』


 「……ええ。罪は罪ですので」


 『警察があなたをフォーカスモンスターと認めるためには、実際に彼らの目の前で、カメラで人を殺さないと無理だと思うの。あなたにそれができるの?』


 「…………でも」


 『人を、カメラを使って殺せるだなんて、頭の固い警察上層部なんかは特に、真に受けないはず。でも、私が心配しているのはそこじゃない』


 「どういうことですか」


 『あなたを捕まえようとしている一部の人達が、最終的に、あなたに対してどういった判断を下すのかどうか………。だって、法の下に裁けないのなら、殺した方が簡単だしね』


 「………………」


 『あなたが殺されたら、悲しむ人がいるはずよね。だから、そう判断を急ごうとしないで』


 「………………わかりました」




 そこでまといは、いったん電話を切った。




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