御影テンマの事情4
そして…………。
加賀城は、例の児童養護施設跡前で足を止めた。
もちろん1人で来た。
ちょうど近くに用事があったため、そのついでだった。
3日前、ここである男子高校生が死んだ。
そしてその男子高校生は、フォーカスモンスターの名を口にした。
彼が錯乱状態だった事と、不自然な形であの塀から先端の尖った棒が飛んできた事を合わせると、奇怪な事件と呼んでも確かに不思議ではなかった。
実はこの事件が起きるまでは、フォーカスモンスターは都市伝説の域をまだ出ていなかったのだが、ネットの掲示板では、この話題はいま加熱状態だ。
加賀城は、ここへ来るまでに何人かの近隣住民とすれ違ったのだが、みんなおびえ切った表情をしていた。
テンマの中で渦を巻く不安も、きっとここで起きた事件がきっかけだろうと加賀城は見抜いていた。
しかし、御影テンマは殺されるような事をしていないと加賀城は確信している。
加賀城には視えていたからだ。
御影テンマは、相手の事をきちんと思いやれる人間だ。
まあ世の中には、自分は優しいと思い込んでるタイプの人間も確かにいる。
無神経な発言を無神経だと少しも思わず、自分が絶対に正しいと思い込んでいる人間もまた存在する。
でも、御影テンマはそれにはあてはまらない。
だから、そんな彼女を、わざわざ誰も殺しにはやって来ないだろう。
「………………………」
花束が、門の前にたくさん置かれている。
線香を誰かがここでたくさん焚いたのか、かなり強い匂いも残ってしまっている。
「……………………」
すると、筋肉質の長身の男が花束を持って、加賀城の目の前で足を止めた。
加賀城は、この男の事は知っていた。
花屋ペイズリーで住み込みで働いている頼宏という名の店員だ。
顔は無表情だが、その瞳の奥には、深い悲しみを漂わせている。
「どうも……」と、頼宏は深く加賀城にお辞儀をした。
そして、たくさん置かれた花束の横へと自分が持っていた分を置き、両手を深く合わせたのだった。
そして1分後ー。
「あなたが加賀城さんですよね?」と、頼宏は再び加賀城へと顔を向ける。
「そうですがなにか?」
「俺、もうすぐ御影さんのもとから去ろうと思ってます」
「…………そうですか」
たしか、この頼宏はテンマの厚意で、特別に住み込みで働かせてもらっていると加賀城は聞いている。無口だが繊細で優しい人だともテンマは言っていた。
なにか思う事があって去りたいというのなら、それは他人が口を挟める話ではない。でも………。
「私が解決してあげましょうか?」
「えっ?」
「少々時間はかかると思いますが、これでも、粗探しは得意ですので」
「あら……さがし……?」
頼宏の眉間に深いしわが刻まれる。
「だってあなた、脅されてますよね?」
「なっ!!」
無表情一徹だったはずの頼宏に、動揺が奔った。
なぜなら加賀城の言った事は、すべてその通りだったから……。




