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フォーカスモンスター ~カメラで撮られたら死ぬ~  作者: 七宝正宗
第十一章 薔薇の麗人
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彼女を守るためには


 5月2日。PM18時30分。


 喫茶店CAMELから帰ったまといは、さっそくスマホでネット検索し、碧に対する誹謗中傷がどんな風になっているのかをチェックした。


 とりあえず、家に石を投げられる事にだけはならないはずだ。あのマンションは、住民の許可がないと、エントランスの自動ドアが開いたりはしないからだ。

 だから、容易に放火をしに行ったりもできないはずだ。

 



 ネットの掲示板では、碧の事を擁護する人達のコメントがほとんどだった。

 これは一見喜ばしい事のようにも思えるが、擁護派の言葉遣いも、批判派の人達とたいして差がなく、相手の精神をズタボロにする事に必死といった感じだった。


 かつてのイツキくんのように、人生そのものが壊される事はないとは思うが、だからといって安心はできなかった。

 炭弥には碧の事をよろしく頼むとは言ってあるが……。


  

 「そうだ。福富さんに頼もう」



 なんでもかんでも彼女に頼むのは最初どうかと思ったが、それでも、ほかに選択肢がなかったので、そうせざるを得なかった。


 なので、さっそく彼女に電話して、碧の事を相談してみると、いつもみたいに“私は便利屋じゃない”とは言われなかった。

 そしてこんな事を彼女は言った。



 『あなたには色々としてもらったし、そのお礼よ。それに、こんな胸糞悪い事には、あまり目は瞑りたくないしね』


 「ありがとうございます」


 『……私にはもう大切な人はいないけど、あなたはまだいる。だから、守ってあげないと』


 「でも、どうしたらいいんでしょうか………」


 『幸せな事に、彼女を支持する人達は多い。だから、これをうまく利用するの』


 「というと?」


 『彼らには監視役になってもらう。で、度が過ぎたカキコミ……たとえば、殺害予告を見かけたら、彼らに教えてもらうのよ。そのための報告用掲示板は、私の方で事前に建てておく』


 「なるほど………」

 

 『まあ、さらに事前に私の方で、この掲示板の宣伝をしておかないと意味がないけどね』



 だけど福富神子には影響力がある。

 風椿碧を守るため、かなりのカキコミになると予想される。

 ガセももちろん出てきてしまうかもしれないが。



 福富神子は、さらにこんな事を言った。

 


 『こういった誹謗中傷を楽しんでいる連中って、強気のように見えるけれど、個人情報開示をこちら側がチラつかせると途端に逃げるから、WEBヴァージョンの福神新聞の方で“誹謗中傷防止運動”といった内容のものを載せるの。たとえば、警察や弁護士と協力して、ボランティアで、被害者達のバックアップをするぞって書くの。もちろん、訴えを起こすってちゃんと文面にも付け足す』


 「なるほど……」


 『それに、風椿碧には味方が多い。味方は時に、圧力になる。圧力は時に、警察を動かす事もできる。うまくいけば、SNSに容易に誹謗中傷が書けなくなるよう、罰則が課されるようになるかもしれない』


 「そうなってくれたらうれしいけれど、警察や弁護士にツテはあるんですか?」


 『ボランティアでやってくれそうな弁護士は何人か知ってる。警察からは目の敵にされてるけどね』


 「でも、心強いです」


 『そうね、彼女の件を機に、風向きが少しでも変わってくれたらいいんだけどね。まあ、なにかあったら連絡するわ』


 「ありがとうございます」




 そして、そこで通話は終了した。

 すると、まもなくして聖が帰ってくる。



 「ただいまー。今日は早めに帰れたよー」


 「うん、おかえり」


 

 まといはポケットへとスマホをしまった。



 「まとい。ちょうど19時になったから、レストランのある階まで降りて、なにか食べようよ」


 「うーん、レストランで食べるよりかは、本当は私が作ってあげたいんだけどな。でも、ここじゃ、気軽にスーパーに買い出しにも行けないし」


 「ハハハ。まといはとことん庶民派だよね。だけど、今日はレストランで高級なものを食べよう。私の恋人になったんだから、色々なものに慣れて、それを当たり前にしていこうよ」


 「………うっ、うん、それもそうだね」


 「そうそう。もう家族みたいなもんなんだからさ、私の金を自由に使ってやるって勢いまでにならないとね」


 「さすがにそこまでは………わたし結構無趣味な方だから、買いたい物とかもそんなにないし」


 「でも、今はお城を作ってる途中だよね。ノイシュヴァンシュタイン城だっけ?立派なお城を作るためなら、いくらでも使っていいよ。欲しいものがあったら言って?」


 「今のところは大丈夫かな」


 「そ、ならいいんだけど♪そだ、今日の夕飯はオマールエビにしようか」


 「オマールエビは好きだよ」



 好きだけど、オマールエビを食べていると、むなしい気分になってくる。あまりにも自分に見合っていない食べ物だからだ。オマールエビよりも、カップラーメンを食べていた方が落ち着く。



 いつか慣れる日がくればいいのだが………。




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