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フォーカスモンスター ~カメラで撮られたら死ぬ~  作者: 七宝正宗
第十章 歪の女優
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協力者の正体


 同日4月19日。 

 

 PM20:00をもって、その“福神砲”第1弾は打ち上げとなった。

 そしてその福神砲は一気にSNS上に拡散され、各テレビ局でもその内容が報じられた。



 ヤマトテレビの旧本社ビルでは、いまだに社員の統率すらとれていない最中だったので、これはいったいどういう事なのかといった暴動まで、会社内で起こる始末だった。

 それも当然かもしれない。手抜き工事のせいで、社員の3分の1は自宅待機状態。もちろん、その分の給料もなし。一応、少しずつテレワークを導入していく予定らしいが、WIFIの環境が整っていないと電波障害などのデメリットもあり、逆に効率が悪かった。

 それに、テレワークの導入にばかりお金をかける余裕もない。あの建物を建て直すつもりならなおさらの事だ。

 以上の理由で、いつからテレワークを始めるのかという具体的な時期は、依然としてぼやけたまま。


 そして、この場を収めるべきCEOは今何をやっているのかというと、適当な理由をつけて、ホテルの最上階で待機中。面倒事は下々のモノにまかせるといった態度が見え見えだった。

 





 

 一方その頃。





 加賀城は、テレビのニュースでその事を知り、福神出版のウェブ新聞をアイパッドで開いて、記事をじっくりと読んだ。


 「……………………」


 その記事には、赤佐内建設が下請け業者に、無理やり資材の割引を強要させていたといった所業まで事細かに書かれてあった。

 下請け業者は、うえからの契約を打ち切られただけでも大きな痛手となってしまうので、赤字ぎりぎりになったとしても食いつなぐために、割引をせざるを得ない選択肢しか残されていない事もある。


 とにかく、ここまでの内容の記事が出てしまった以上は赤佐内建設は終わりだが、問題はそこじゃなかった。


 加賀城はアラキに頼んで車いすを押してもらい、福神出版へと向かった。


 

 出入り口のそばにあるチャイムをアラキに押してもらうと、1分もしないうちに福富神子が中から顔を出したのだった。



 「あら?この前は2本足で立っていたはずの人間が、なんで車いすなんて使っているのかしら?」


 「ぷっ」


 アラキは、福富神子の皮肉に、思わず噴き出してしまった。

 とりあえず、窓際のソファの近くへと車いすを寄せた。

 福富神子は3人分のコーヒーを入れようとしたが、加賀城は「結構です」と言ってその動作を中断させた。


 「ふふふ、ずいぶんな態度ね。毒なんて入れないわよ。まああなたは、私の事をサイコパスだと思っているみたいだから、こんな事言っても信用はしないんでしょうけど」


 「あなたは昨日、ヤマトテレビの中にいましたよね?」


 「…………なんでそう思うのかしら?」


 「下請け業者が告発のためにあなたに情報を提供したからこそ、あそこまでの記事が書けた……という考え方もできなくもないですが、昨日の今日でこの内容。あまりにもタイミング的にできすぎています」


 「………………………」


 「チャンスがあるとすれば昨日です。昨日、ヤマトテレビはごたごたしてましたからね。でもあなたは顔が他方に知られすぎている。つまり、協力者を使った」


 「………………………」


 「そして、諸見沢勇士を殺したとされるディレクターまでもが、亡くなっています。あくまで事故でですが」


 「……………………」


 「もしもこれがフォーカスモンスターの仕業なら、彼の死を目の当たりにした人間が1番怪しいんです」


 「…………………………」


 「そして、このディレクターが犯人だと確信できる位置にいた人物………」


 「フフフっ、ディレクターが大道具倉庫をうろついていたところを複数名が目撃しているらしいから、彼らじゃないの?」


 「それもどうでしょうね。私は、彼らの可能性は低いと思っています」


 「どうして?」


 「時間の融通が利かないからです」


 「……………………」


 「フォーカスモンスターが殺したとされる人達は、わりと日中に死んでいる場合が多いです。つまり、働いてはいるが、長時間の勤務時間に縛られていない人間の可能性が高い」


 「………言っておくけど、私は違うわよ。たしかにあの日はあのテレビ局にいたけど、そんなに上の階まで行ってない」


 「………なら、やっぱり協力者が………」


 「あなたたしか、鹿津絵里を追ってたわよね。だったら、あの日テレビ局の中にいた人達に、彼女がいたかどうか聞いてみなさいよ。そしたらわかるんじゃない。私は彼女と繋がってない」


 「……………鹿津絵里は危険な人物です。今のうちに白状しておいた方がいいですよ」


 「おあいにく様。私はそれでも、彼女とは繋がってないから。どうやら、警視庁きっての名探偵もたいした頭は持っていなかったようね」


 「……………わかりました。今日のところは引き上げます。ですが、調べればすぐにわかる事なんですよ?」


 「構わないわ。証拠を見つける事ができたら、喜んでお縄にでもなんでもついてあげる。まあ、無理でしょうけど」


 


 加賀城はアラキと共に福神出版を出て行った。



 福富神子はコーヒーをマグカップに入れ一息つき、椅子へと深く腰を下ろした。



 「なるほど………あの子の持っていたカメラがシルバーのカメラに変わってた理由がようやくわかったわ」



 それにしてもあぶなかった。

 でも慌てる必要なんてなかったのだ。

 だって、ヤマトテレビがあんな事になろうがそうでなかろうが、結局はあの日、蒼野まといを使って忍び込ませる予定だった。

 諸見沢勇士の死なんて関係なくだ………。


 「……………………」


 いや、違う。これはすべて仕組まれた事である。


 あの謎の電話の人物がもたらした情報があったからこそ、あの日、福富神子はヤマトテレビに向かったのだ。


 もちろん福富神子の事を、確実な形として動かすためである。

 昨日、福富神子がヤマトテレビへ行かなければ、地下駐車場で諸見沢勇士の最後の言葉を遮る事もなかった。

 でもそのあと、まといはどうなっていただろうか。




 「もしかして………蒼野まといを……死なせないため??」





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