表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フォーカスモンスター ~カメラで撮られたら死ぬ~  作者: 七宝正宗
第十章 歪の女優
128/487

消された記憶


 同日4月19日 AM9:00。東京高匡総合病院内。



 まといは、個室のベッドの上でようやく目を覚まし、ゆっくりと上半身を起こしたのだった。

 

 「………………」


 7時間は寝たはずなので睡眠時間は充分足りているはずだが、頭のクラクラがひどかった。

 なんだか、滑り台の真ん中に腰を下ろしているようなそんな違和感があり、吐き気すら覚える。

 上半身を起こしただけでもこれなので、立ち上がったらまた両膝をついてしまいそうだった。


 本当ならここで2度寝と行きたいところだったが、碧の事が気になって仕方がない。


 碧がまといに見せたあの笑顔はかなりの違和感があった。


 不自然なくらいに対称的で、でも、スカスカなのである。そう、例えるならば、穴の開いたボロボロの仮面をあえてつけているような、そんな歪さを感じた。


 また以前のように笑ってくれるのなら、何度だって謝っても構わない。

 彼女の笑顔が大好きだから………。


 「…………………」


 ふと、サイドテーブルに置かれたシルバーのカメラが目についた。

 まといは手を伸ばしてカメラを手に取り、壊れていないかどうかの確認のために、電源ボタンを軽く押した。すると、背面にあった四角い画面がパッと青く点灯したのだった。


 そして、青く光っているその画面の左上の方には、こんな文字が表示されている。



 『4/18 PM17:28 削除済み』



 削除済み……。

 つまり、この日のこの時間に、なにか写真を撮って削除したという事らしいが……。


 記憶にない。

 それにこの日は、写真の依頼は何も入っていなかったはずだ。

 まあ、写真の依頼なんて関係なしに、綺麗な花を見かけたりすれば、撮ったりする事はある。人間以外のモノを撮っても、それが“死んだり”は1度もなかったからだ……。


 「……………………」


 すると看護士が入って来て、遅めの朝食を運んできてくれた。

 7時頃にも持ってきてくれていたみたいだが、肩を叩いても起きなかったので、時間を改めたのだという。


 看護士の話によると、輸血は眠っている間に終わったようなのだが、血液の巡りが安定していないらしく、そのせいで頭がまだクラクラしやすい状態らしい。


 ようは、まだまだ安静が必要だという事。


 

 もしもこんな状態で無断で外へ出かけようものなら、いよいよ碧の頭の中の火山が噴火しそうなので、素直に安静に休むとしよう。


 ベッドの正面に面した壁のところに何気にテレビがあったので、看護士さんにリモコンを持ってきてもらい、電源を入れた。

 でも、この時間帯は4チャンネル以外、どのチャンネルもワイドショーやニュースばかりで、面白そうな番組はやっていなかった。

 

 4チャンネルに関しては、ずっと真っ黒な状態が“なぜか”続いている。

 

 1チャンネルのNNKではニュースがやっていて、ヤマトテレビに大きな雷が落ちた事と、あと、倒壊の恐れがあるため、誰ひとりとして中に入れない状態が続いているとニュースキャスターが言っていた。

 あと、諸見沢勇士が死んだ詳細についても、こうニュースキャスターは述べていた。


 複数名の目撃者がいる事から、倉庫から爆弾を盗んだのは、23時間テレビ制作担当のディレクターだと判明したが、彼はタクシーに乗っている最中に、事故に遭って死んだらしい。

 どうやら、前を走っていたトラックの荷台に積んであった鉄骨の一部が、フロントガラスを突き破って、ディレクターの頭をぐしゃぐしゃにしたのだという。

 運転手の方は幸運にも無傷だそうだ。


 「………………」


 だんだん思い出してきた………ような気がする。

 地下駐車場で大きな爆発をまといは目の当たりにして……そして、23時間テレビの募金の一部が赤佐内建設に流れているのを突き止めるために、あのテレビ局の中に入って……そしてまた、あのディレクターの姿を見かけて………。


 そのディレクターが、よりにもよって同日に“事故”で死んでしまうだなんて……。

 





 これははたして偶然なのか………。




 



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ