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「……セリア様?」
セリアーナは俺に手を向けたまま、今度は目を開き瞬きもせずに固まっている。
何か起きたのか、それともこれから起きるのかわからないが、まぁ……なんかあるんだろう……。
セリアーナが何か言うのをそのまま待ち続けていると、「ふう……」と大きく息を吐いて、こちらを向いた。
「魔物の群れがいるわね」
「……ほぅ?」
魔物……か。
そりゃー、いくら比較的安全なこの辺でも、少し離れれば森や川があるし、夜になれば魔物の群れくらいは出てくるだろう。
だが、この言い方だと……。
「ぶつかりそう?」
「ええ。まだ距離はあるけれど、街道に向かって移動してきているのが見えたわ。大型の魔物はいないし、どれも強さは大した事は無いけれど、馬車を守りながらだと少々面倒なことになりそうね」
具体的な数こそ口にしなかったが、この言い分だと相当な数がいそうだな。
大型の強力な魔物はいなくても、小型の魔物は10数体以上で群れを作ったりもする。
この一行なら、その魔物の群れをただ倒すだけなら、たとえ夜でも容易いことだろうけれど……、馬車を守りながらとなると、むしろ小型の群れの方が面倒かもしれないな。
「セラ」
「ほい!」
セリアーナは勢い良く返事をする俺を見ながら指示を始めた。
「前方の街道北側に小型の魔物の群れが複数。戦闘は確実だから、備えるように。リーゼルにそう伝えてきて頂戴」
「魔物の群れとぶつかるから、備えるように。だね? りょーかい!」
俺なら、さらに詳しい情報を得るための偵察だったり、なんなら討伐だって可能かもしれないが、今は一先ず指示に従おう。
セリアーナの指示を復唱すると、【祈り】を発動して馬車から飛び出した。
「……ぉぉ、結構冷えるな」
諸々の気候の変化に強い【風の衣】があるが、この加護は暑くも寒くも無い季節だと、あんまり防寒効果は発揮してくれない。
この春の2月の夜っていう、微妙な季節だと何とも肌寒い。
上着を着てきたらよかったかもな……。
などと、そんな場合じゃないと分かっていつつも、呑気な事を考えてしまっている。
一応緊急事態なのは間違いないんだが、俺にとっての脅威かどうかっていうとまたちょっと違うんだよな。
ヘビたちも別に警戒態勢に入っていないし、意外と余裕があったりもする。
とはいえ、魔物は魔物だ。
油断はいけないし、気を引き締めておかないとな!
「セラ様!?」
「すぐ戻るから、そのまま走ってて!」
走る馬車からいきなり俺が飛び出してきて、御者の彼は随分驚いた様だ。
上ずったような声で俺の名を叫んだが、申し訳ないが説明はちょっと後にしてもらおう。
ってことで、10メートルほど前を走る、リーゼルが乗った先頭の馬車に向かって【浮き玉】を進めた。
「お」
その馬車のさらにその前に騎乗したオーギュストがいて、馬に乗りながらも俺の接近に気付いたようだ。
こちらを向いているが……彼への説明も申し訳ないが、やっぱり後だ。
先にリーゼルから……と馬車を指すと、その意図はしっかりと伝わったようで、右手を掲げて合図をしてきた。
うむうむ。
察しが良くて助かるな。
それじゃー、馬車に入るか……と、その前に御者に一声かけておかないと……。
「…………っ!? これは、セラ様。どうかされましたか?」
馬車に並走しながら、御者席に顔を見せた俺に気付いた御者は、俺たちが乗っていた方の御者と同じ様な反応を見せた。
まぁ、走っている馬車に宙を飛びながら並走してくる人間がいるなんて、普通は思わないもんな。
俺だって飛んでいる時に横から声をかけられたら、叫んでしまうかもしれないし驚くのも仕方が無いか。
「ちょっと中に用事がね。気にしないでそのまま走らせといて」
「は? はっ……」
中を気にしながらよそ見運転をしていて、事故でも起こされたら大変だもんな。
しっかり釘を刺してから、俺は馬車のドアをノックした。
驚かさないように、念のため声もかけておこうかな……。
「旦那様ー! セラでーす!」
馬車の音に負けずにしっかり中に伝わるように大声でそう言うと、俺がここにいる事に既に気付いていたのか、すぐに中から返事があった。
「鍵は開いているよ。入ってきてくれ」
「はーい!」
リーゼルの声に返事をして、俺は馬車のドアに手をかけた。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




