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「セラ」
「はいはい」
セリアーナの合図に合わせて、俺は彼女の前に浮くと【風の衣】を張り直した。
「うん……いいよ」
セリアーナは、俺の返事に何も返さずに、代わりに【妖精の瞳】を発動してから目を閉じた。
また、周囲の索敵に取り掛かるんだろう。
ちなみに、セリアーナが今日初めて発動してから、既に三度同じことを繰り返している。
大体1時間に一度の頻度で、セリアーナは広範囲の索敵を行っていて、これで四度目だな。
流石にもう何度も繰り返してきたし、目玉が目の前に浮いているっていう、グロイ光景にも慣れてきたな。
「なんかいそう?」
「どうかしらね……」
慣れてきたのは俺だけじゃなく、セリアーナも短い間隔で何度も繰り返しているからか、【妖精の瞳】を使っての広範囲索敵に慣れてきたようだ。
簡単な言葉にはなっているが、お喋りをする余裕も持てている。
んで、そのセリアーナに、索敵の妨げにならない程度に成果を訊ねているが、特に異常は起きていないようだ。
この辺は街道沿いに森も川も無く、魔物が集まりにくいってのもあるかもしれないが、つい1時間ほど前に索敵した時は、小規模な魔物の群れを発見していた。
こちらの人数の方がずっと多いし、戦闘にはならないだろうからって、兵たちに知らせたりはしなかったが、比較的安全な王都圏でも魔物はやっぱり出てくるんだろう。
もっとも、こちらの数が多ければ、それだけである程度安全が確保出来ることもわかったし、とりあえず俺たちは魔物の不安はなさそうだ。
ただ、それよりも賊連中はどうなっているのか。
その事を訊ねることにした。
「距離は縮まってる?」
「少し近付いてはいるけれど……相変わらず距離はあるわね」
「ほぅほぅ。何回か停車したりしたもんね。仕方ないか……」
どうやら賊連中との距離が徐々にだが縮まっている様だ。
何度か移動中に停止することがあったもんな……。
理由はどれも一緒で、平民と一緒になって移動している貴族とすれ違ったからだ。
俺たちの今日の目的地であるグラードの街と王都間は、普通に移動するとほぼ半日かかる距離にあって、そっちから出発した者たちとはまだ会わないし、道中にある村とかに住んだり滞在している者たちなんだろう。
身分だけで考えたら、わざわざリーゼルが足を止めてまで挨拶を聞く必要は無いんだろうが……律儀なもんだ。
まぁ、偉そうにふんぞり返っているよりはずっといいとは思うが、その律義さがちょっとマイナスに働いているかもしれないな。
「旦那様とか団長に伝える? 到着予定は結構遅い時間だよね?」
窓の外を見るとまだまだ日は出ている。
だが、まだ春の2月だし、冬ほどではないが、日が暮れる時間もそこそこ早い。
俺たちが街に到着する前に、日が落ちてすっかり暗くなっているだろう。
後ろから来ている賊連中が、どれくらいのペースで詰めてきているのかまでは分からないし、追いつかれるとも思わないが、それでも気を付けるに越した事は無いと思う。
今は人目があるから移動速度を抑えているだけかもしれないし、そうだったら、暗くなってからはどうなるかわからないもんな。
暗くなったら魔物に襲われる可能性が増えるから、そうなる前に目的地に着くってのが、この世界の外を移動する際の常識だが、しっかり護衛を用意できる俺たちはもちろん、賊連中だって腕は相当なもんだしそこら辺の事情はお構いなしだ。
賊連中が後ろから追って来る事は想定していたけれど、こう何度も足止めを食らうってのは、少なくとも俺は想定していなかったし、一応リーゼルたちに伝えておいた方がいい様な気はするんだが、どうだろう?
「……いえ。まだ必要ないわ」
セリアーナは数秒だけ考えこんだが、すぐにそう言った。
「いいの?」
「ええ」
やたら自信たっぷりに即答しているが……。
「……セリア様ってどれくらいの範囲を見えてるの?」
どれくらい離れているのかとかは、セリアーナしか把握出来ていないんだよな。
彼女の加護の事は、その気になれば王都やリアーナの領都全体を範囲に収めることが出来るのは知っているが、それが限界ってわけじゃ無いのかもしれない。
よくよく考えてみると、賊連中を捉えたのも、俺が想定する距離より離れているよな……。
「範囲ね……。ここからだと王都は見えないわね」
「……ここからって、じゃぁ、どこまでなら見えてたの?」
あえて王都って言葉を出しているし、もしかして、見えてたのかな……?
「前回索敵した際には、なんとか見えたわ。まあ、流石に負担が大き過ぎるから、そこまで広げようとは思わないけれど、お前が思うよりは見えているわ」
「……へぇ」
セリアーナの返事を聞いて、なんとかその一言だけは絞り出したが……どんだけ高性能なレーダーなんだろう。
このねーちゃんは……。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




