95
「お疲れさまでした。よろしければこの後食事でもどうですか?」
「いや…悪いが遠慮させてもらう。それと返事は少し待ってくれ」
「そうですか…、ではお待ちしています」
「おう…じゃあな……」
アレクの誘いを断り、ジグハルトが扉の方へと歩いて行く。
何やらふらついているように見えるのは気のせいだろうか?
「閃光」様に皆道を空けてくれているが、馬車にでも撥ねられるんじゃ…?
あの後空いた場所が見つからず帰還したが、その道中でも2枚手に入れた。
結局1時間足らずで5枚。
彼にしてみたら色々衝撃的だったんだろう。
「さて、どうなると思う?」
ギルドから出て行くのを見送ってから、アレクが話しかけてきた。
「大丈夫じゃない?断るなら返事は伸ばさないでしょ」
断る事を苦にしない人みたいだし、これならきっと大丈夫だ。
「そうだな…。俺は残るがお前はどうする?」
「寄りたいところあるし、帰るよ」
「一人で大丈夫か?」
「だいじょーぶだいじょーぶ。んじゃ、お疲れさん」
「おう」
そう言い、アレクは遺物の換金へ向かった。
いやぁ~…申し訳ねぇ。
◇
「あれ?早いね」
ダンジョンから戻り、例によってセリアーナの部屋でゴロゴロしていると、ノックも無しにドアが開いた。
何事かと思ったが、セリアーナとエレナだ。
「もう少ししたら戻るけれど、あと数日は学院は午前中だけよ。今日は偶々予定が入ってなかったの」
そういえば記念祭の前後は人と会う機会が増えるとか言ってたな。
学院もそれ用のスケジュールなんだろう。
「それで、お前はどうだったの?」
「う~ん……返事は後にするとか言っていたけど、いけそうな気はするよ。聖貨も5枚出たしね」
「あら?凄いじゃない。まあ、上手くいかなくても誘いを受けたというだけでも十分だわ」
俺の対面に座り成果を聞いてきたが、中々上機嫌な様子。
貴族と関わろうとしないことで有名な「閃光」を直属の冒険者が探索に誘い、彼がそれに乗ったっていう事だけでも、彼女にとっては満足する結果だったらしい。
意外と欲が無い…。
「そういえば【妖精の瞳】の検証は上手くいったのかな?先日潜った時は魔物とあまり戦えなかったと言っていたよね?」
荷物を片付けてきたエレナが聞いて来た。
「うん。赤は魔力だけど、緑はちょっと違ったよ。生命力というよりも身体能力全部って感じかな?疲れてたアレクを見ても変わっていなかったから、最大値が見えてるのかも。後は、魔法の発動前の魔素が見える位かな?」
「そう…相手の強さの目安になるのは便利ね。魔法に備える事が出来るのも悪くないし、私の加護と合わせたらまず間違いは起こらないわね」
確かに。
「お嬢様かエレナが使う?あるなら便利だけど、無いなら無いでオレは困らないよ?」
ダンジョンの魔物で魔法使ってくるのはいないし、俺にはアカメがいるし、どっちかって言うと、エレナが持った方がいいんじゃなかろうか?
「嫌よ」
一言で断られた。
「お前、そんな不気味な物を浮かせている人間に近づきたいと思うの?」
「あぁ…そりゃそうか…」
【妖精の瞳】は発動させなければ、ただのアクセサリーだけれど…目玉だからね。
それも、血管の様に見えるのって薄っすら光ってるんだよ。
脈打つように赤で。
……どういうセンスなんだろうか?
「でもそうね…セラ、寄こしなさい」
「へ?」
どの神様がデザインしているんだろうと考えていると、セリアーナが、寄こせと手を伸ばしている。
使うのか?
「…はい」
外した【妖精の瞳】を渡すと、躊躇うことなく右耳に付けた。
不気味とか言う割には思い切りがいい。
「どう?」
「よくお似合いです」
「当然ね。さて……」
エレナに褒められ満足したのか、セリアーナが【妖精の瞳】を発動する。
「……うわぁ」
いきなり現れるのではなく、上から徐々に形作っている。
ズズズって効果音が似合いそうだ。
「ふん。こう見えるのね」
大きさこそそれ程でもないが、薄っすら光っているから、とにかく目立つ。
これはキモイ。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚