956
リーゼルの部屋から戻ってきた俺たちは、出発に向けて最後の確認を行っていた。
そして、その確認作業も終わり、部屋にはいくつかの箱が積まれていて、その中には今朝まで使っていた私物が詰め込まれている。
こういうのは本来なら使用人がやるんだろうが、俺たちの場合は全部自分でやっているし、見落としが無いかも自分でやっているんだ。
「忘れ物は?」
「無いよー。奥もしっかり確認してきたからね」
セリアーナの言葉に、手を上げて答えた。
この部屋も寝室も何度も確認したし、ついでに【隠れ家】も調べてきた。
忘れ物はゼロだ!
……まぁ、そもそも持ってきた物もこちらで買った物も、ほとんどそのまま【隠れ家】に放り込んでいて、この部屋で外に出していた物なんて、着替え位だったもんな。
忘れ物が出るわけもないか。
ともあれ、これで荷造りも完了だな。
「結構。あとは港に着いてから受け取る分だけね。それじゃあ、部屋を移しましょうか」
「ほい」
三週間弱かな?
何だかんだで長く滞在していたが、ほとんどずっとこの部屋にいたよな。
ミュラーさん家の人間になった俺は、今後屋敷を訪れることはあっても、宿泊する事は無いだろう。
なんといっても、目と鼻の先にミュラー家の屋敷があるもんな。
そう考えると少々名残惜しい気もする。
俺は、その積まれた箱を眺めながら感慨に耽っていたのだが……。
「どうしたの? 行くわよ?」
セリアーナは何の感慨も無い様で、さっさと部屋を出て行こうとしていた。
相変わらずドライな事で。
「りょーかい」
返事をして、セリアーナの下に向かうと、彼女は怪訝な顔で俺を見ていた。
「どーかした?」
「お前、そんなにこの部屋を気に入ったの?」
「いや? そこまでは無いかな。でも、もう来る事が無いと思うとね」
「そういうものかしら……」
「そういうもんだよ。よいしょ……っと。おや? ご苦労様」
ドアを開けて廊下に出ると、数名の使用人がドアの前で待機していた。
荷物を運ぶために待っていたんだろう。
セリアーナは、待機している使用人に向き合うと口を開いた。
「ご苦労様。荷物はアレで全部だから、運んでおいて頂戴」
「はい。公爵様が談話室でお待ちです。案内は必要でしょうか?」
「必要ないわ。セラ、行くわよ」
セリアーナはそう言うと、さっさと歩き始めた。
決して大股じゃないのに、スタスタと中々の速度だ。
ボーっとしていると、置いて行かれそうだな。
「ほいほい」
俺も後を追おうとしたが……その前に!
「それじゃーお願いしますね」
彼女たちに向かって【祈り】を発動した。
彼女たちだけじゃなくて、屋敷の使用人全員ともほとんど関わる事は無かったが、滞在中お世話になったんだ。
誰にでもやるようなもんじゃないが、それでも、これくらいはやっても良いだろう。
頭を下げる彼女たちに向かって手を振ると、先を歩くセリアーナに追いつくために、【浮き玉】の速度を上げた。
◇
さて、使用人たちに【祈り】をかけてから、先を行くセリアーナを追いかけた俺はすぐに追いついた。
まぁ、いくら歩くのが速いからといっても、真っ直ぐの廊下を歩いているんだ。
【浮き玉】の方が速いもんな。
そして、そのまま並びあって廊下を進んでいたのだが、廊下の突き当りを曲がったところで、それまで黙っていたセリアーナが口を開いた。
「お前は相変わらず律儀よね」
「ん? さっきの?」
俺が彼女たちに【祈り】をかけているのは見ていなかったが、何かしら気配でも察したのかな?
咎める口調ではないが、なにかマズかったのかな?
「ええ。声をかけるだけならまだしも、大して重くも無い荷物を運ばせるだけなのに、わざわざ加護をかけるなんてね」
「ここにいる間お世話になったしね? 駄目だった?」
そんなにまずいことをしたつもりは無いんだけど……。
どうも、その事を言うのを廊下を曲がるまで待っていたみたいだし、なんかやらかしたかな?
「駄目では無いけれど……。まあ、いいわ。廊下で話す事では無いわね。先に部屋に向かいましょう」
「ふぬ……?」
首を傾げつつセリアーナの隣を進むが、今しがた彼女が口にしたように、この場では教えてくれる気は無いらしい。
まぁ、部屋に着いたら教えてくれるんだし、とりあえずそれを待つかな。
セラ・加護・【隠れ家】+1【祈り】【ミラの祝福】【風の衣】
恩恵品・【浮き玉】+1【影の剣】+1【緋蜂の針】【妖精の瞳】【竜の肺】【琥珀の剣】【ダンレムの糸】【蛇の尾】【足環】【琥珀の盾】【紫の羽】【赤の剣】【猿の腕】・3枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・0枚
エレナ・【】・【緑の牙】【琥珀の剣】・4枚
アレク・【強撃】・【赤の盾】【猛き角笛】・10枚




