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さてさて、ダンジョンである。
話し合いの翌日、早速アレクがジグハルトに会いに行ったのだが、一体どんな風に話をしたのかわからないが、3人でダンジョンに向かうことになった。
ちなみに彼への参加報酬は今回取得する聖貨だ。
俺が稼ぐことになるんだろうから責任は大きいが、一応発案者だし、自分の弱さには自信があるから何とかなるだろう。
「いるね」
流石に記念祭が終わってから3日も経つと、浅瀬はまだ人が多いが、上層ともなればいつもと変わらなくなっている。
天井近くまで上昇し広間全体を見渡すと、魔物の姿がいくつもある。
都合のいい事に冒険者はいない。
「ジグさん、「渦」をお願い」
俺の言葉に、アレクの方を振り返り確認するジグハルト。
「大丈夫です。お願いします」
「よし」
そう言うなり広間全体に一気にジグハルトの魔力が混ざった魔素が広がった。
相変わらず規模もデカいし、速度も速い。
さらに、その魔素はしばらくの間レーダーの様な役割も果たすそうだ。
先日、ジグハルトが離れた場所にいる俺に気づいたり、魔人と戦った時に、ルバンが魔人を仕留めていない事がわかったのもその為だ。
あくまで位置関係と簡単な形がわかるだけで、俺の様に変な存在は実際に見なければわからないと言っていたが、便利な事には違いない。
「渦よ!」
今回は警戒し、目を閉じていたのだがそれでも強い光を感じる。
ちなみにこの光は傭兵時代に編み出したもので、光自体には特別な効果は無く、精々目くらましになるかどうか程度らしい。
それでも、対人戦では有効で、戦場では自分の存在のアピールになる事から、好んで使っていたそうだ。
「閃光」の二つ名の由来でもあり、冒険者になってからも攻撃前の合図として役に立っている。
…今更ながら俺って世間知らずなんではなかろうか?
「アレクシオ、セラ、呼び寄せた。そろそろ先頭が来るぞ」
この渦という魔法は、冒険者になってから身に着けた魔法で、魔物を引き寄せる効果があるらしい。
おまけにある程度魔物が寄ってくるタイミングやターゲットをコントロールできるそうだ。
人間には効かないものの、魔物相手に1人で戦うことが多いジグハルトは、この魔法を使う事で安定して先手を取ることが出来る。
「セラ、準備はいいか?」
まずは第一陣がやって来たのが見えた。
アレクが受け止めるべく前に踏み出し、上にいる俺に確認をする。
「おう!」
もちろん準備は出来ている。
今回はアレクに集中させるようにコントロールしている。
さらに【赤の盾】の効果も併せて、俺は確実に不意打ちが出来る。
余裕余裕。
◇
「いいよ、アカメ」
魔物の死体の山に、アカメが核を潰しに潜り込んだ。
余裕の勝利だった。
最初は首を刎ねる事に専念していたが、思った以上にアレクが安定していたため、一撃で核を潰す戦い方に切り替える余裕ができ、更には、アカメの為に敢えて核を残す戦い方になった。
アレクは30体近くの攻撃を受け続け、流石に疲弊したのか座って休憩しているが、何だかんだで無傷だ。
こいつはこいつで化け物だと思う。
「妙な気配をしていると思ったら、潜り蛇か。……加護と良い、お前魔王みたいな奴だな」
やっぱそうなんのか。
「ルバンにも言われたね…。セラ様って呼んでいいよ?」
「へっ…ばーか。にしても、最初ん時と随分感じが違うな。本性はこっちか?」
「まぁね。同僚から畏まられるよりいいでしょう?」
「ふんっ、ずいぶん気が早いな。で?今のでこの広間のは全部やっただろう?どうすんだ?」
軽口を叩きながらも、先程から魔素を広げたり消したりと、広間全体の索敵を続けている。
魔素と魔力を混ぜるのは難しいって話なんだけど…どうなってんだ、このおっさん。
「…そうですね。次の広間に移りましょう。そこで今日は終わりです。それと冒険者がいるようなら引き返します」
「おいおい…随分温い探索だな?」
少し呆れた様な声だ。
まぁ、下層まで行くような人には物足りないのかもしれないが…。
「オレが1時間だけって言われてるからね。まぁでも、そんなこと言わないでよ」
そう言って、ジグハルトの方に左手の中にある物を見せびらかす様に、差し出した。
「…⁉」
彼は目を見開き、俺の手にある3枚の聖貨を見ている。
良い反応じゃないか。
セラ・【隠れ家】【祈り】【ミラの祝福】・【浮き玉】【影の剣】【緋蜂の針】【妖精の瞳】・1枚
セリアーナ・【範囲識別】・【】・19枚
エレナ・【】・【緑の牙】・1枚
アレク・【】・【赤の盾】・2枚